今はちょっと、ついてないだけのレビュー・感想・評価
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表現方法が…
冒頭、主人公立花の栄光と工場工員の今、そして女性… という素材の散りばめがある。
主人公は写真が好きだが、みんなが当たり前に持っているもの、家族、子供、家…を持っていないし、借金の返済に追われてそういうものが持てなかったことと、すべてを借金返済の所為にして生きてきたことが、最後に語られる。
つまりこの作品は、そこに気づき、「見たことのない風景を見て、それを誰かに伝えたい」という自分の本心にようやくたどり着く物語。
「見たことのない風景は、日常の中にある」
それは風景ではなく、もしかしたら人々の本心が顔に現れた瞬間なのかもしれない。
人という「絶景」なのかもしれない。そこはよかった。
誰もが何かしらの特技を持っている。自分でもわかっていないこともある。
主人公の母の施設内の友達から写真を撮って欲しいと依頼されたことがきっかけで、宮川と出会い瀬戸と出会い会田と出会いながら、シェアハウスで写真関係の仕事を始める。
やがて立花の因縁の相手牧島の登場で、立花の心は激しく揺さぶられる。
しかし牧島からの仕事の提案に同意、仕事が軌道に乗り始める。
「今ちょっとついてないだけ」という母の言葉は、停滞している自分の人生に新しい流れを呼び込むための魔法の言葉だ。
主人公の気づきもいい。
しかし、構成上主人公の栄光からどんな出来事があって今に至っているのか?
時系列に従って表現した方がいいと思った。
主人公の現在には相応の理由があるのは感じるが、最後に出されても微妙な捉え方になってしまう。
急に登場する占い師の素性も、理解するまで時間がかかるうえ、占い師が瀬戸を全面的に肯定しても、構成上この下りの必要性の有無を感じてしまう。
テーマ性もあり普遍性もあり、新しさもあった。しかし、構成に修正部分があるように思う。
☆☆★★★ 原作読了済み。簡単に。 原作は7編の連作短篇集によって...
☆☆★★★
原作読了済み。簡単に。
原作は7編の連作短篇集によって構成されている。
・今はちょっと、ついてないだけ(立花浩樹)
・朝日が当たる場所(宮川良和)
・薔薇色の伝言(瀬戸寛子)
・甘い果実(佐山智美)
・ボーイズ・トーク(岡野健一)
・テイク・フォー(会田健)
・羽化の夢(立花浩樹&巻島雅人)
の7編が主な内容。
ところでこの映画、原作をよんでいる此方は内容を把握出来てはいたのだが。原作未読の人から観て、果たしてしっかりと内容を把握出来たのだろうか?
観ていて心配になるくらいに、「原作読んでいて当たり前」…と思うくらいに不親切な作りだった様にしか見えなかったのですけど…
何故そう思ったかと言うと。
作品中に1度だけ登場する《佐山智美》のキャラクター。彼女は「甘い果実」での主人公に当たる。
智美の名前は、原作の前半にて名前だけちょこちょこっと登場し。この「甘い果実」の回では、たった1人だけ海外でのリゾラバ話の主人公になる。
智美は、深川麻衣演じる《瀬戸寛子》が《ナカメシェアハウス》の事情を独白し主人公となる「薔薇色の伝言」だけ他の登場人物達と絡むので、原作未読の人から観て、「あれ?あの人なんだったの?」感が物凄く強い。
もう1人「ボーイズ・トーク」の主人公となる《岡野健一》は、団長安田が主人公となる「テイク・フォー」の時にほんの少しだけ登場するだけで。やはり「あの人誰?」感が漂うし。最後の「羽化の夢」で登場する高橋和也演じる《巻島雅人》も、最初から全体的な主人公である《立花浩樹》に対して、大きな影響を与えた人物として最初の「今はちょっと、ついてないだけ」から、殆どの話には間接的に登場するだけに。作品中に登場するや、原作を読んでいる人には「やっと出て来たか」感がするのだが。原作未読の人にとっては、「この人誰?」感がやはり強い。
映画本編は、「朝日が当たる場所」と「羽化の夢」を中心にして構成されていたと思う。但し、原作・映画共に題名として使われている「今はちょっと、ついてないだけ」は、最初の話の最後に登場する台詞から取られているだけに。本編が始まり、ほんの数分で終わらせていた「今はちょっと、ついてないだけ」の話を、「羽化の夢」の内容と絡ませていたのはちょっとだけ「嗚呼!考えたなあ〜」とは思った。
映画のポスターやチラシ等には主に4人が映っている。
《立花浩樹》
《宮川良和》
《瀬戸寛子》
《会田健》の4人。
映画にも登場する《ナカメシュアハウス》で仲良く暮らす。
(厳密に言うと、団長安田演じる《会田健》は、しょっちゅう遊びに来るイメージか)
どことなく、大人版少年ジャンプ感が漂う4人と言ったところだろうか。
この《ナカメシュアハウス》だけれど。映画では立ち退き話が有った筈なのだが、最後はうやむや的に何事も無かったかの様になり、映画は終わる。
この辺りも、原作読了済みの者としては、観ていて「なんだろうなあ〜、この原作読んでいて当たり前感は?」…と思ってしまった。
帰宅して、この監督の前作が『パーフェクトワールド 君といる奇跡』と知り、ちょっとだけ腑に落ちる。
いやいやいや!誰か「これじゃあ、原作未読の人が観に来た時に理解出来ないんじゃない?」…って、助言する人は居なかったのかい?としか、、、
2022年5月3日 シネマ・ロサ2
深川麻衣さん
映画館らしい作品
バブル期の部分はいっそカットするかもっと違う描き様があったと思う。語り口も上手いとは言えない(ハッキリ下手だと言うと可哀想なので)。ただ、優しい映画なのでいっそ私が手直しして上げたいと思ったくらい。
振り出しに戻ってやり直そうか、どこか朝日のあたるところから。
イマイチ
観る者の年齢によって、感じ取るものの違い
若いときの「栄光」から遠のく頃、自分の家族との不和とか、介護を要するようになる親への申し訳なさ・悔悟の思いとか、中年男性の多くが直面する事態 私もそういった年齢にある男性であるが、本作でも母親を施設任せにしている申し訳なさを「マザコン」などと妻から罵られたら、何十年も一緒に暮らしてきた「家族」「夫婦」は一瞬にして壊れてしまう 一番近くにいる「家族」「夫婦」を失いかねない爆弾を抱えて、社会の中に自分の居場所をみつけたい、という本作の「男たち」には年齢的にも共感をするものでした
皆さんがおっしゃる通り過去と現在の描かれ方がわかりにくかったですが、シェアハウスに住む各々が「栄光」を失った各々の現在の「弱さ」がよく描かれていたと思います 年齢を重ねていくと友人が少なくなって孤独が近づいていきますが、こういう場面で新しい友人や絆ができるかもしれない、特に中高年男性にとっては一つの希望とも思えます
原作の伊吹さんが著した「ミッドナイトバス」は5年前、ネプチューンの原田泰造さん主演で映画化されました 妻と分かれ、離婚して育て上げた2人の子どもからも距離を置かれた夜行バス運転手の話ですが、中年男性のどんよりとした行き場のない姿でした 本作は過去の「栄光」を失った男を描いていますが、希望が持てる分前向きになったラストでした 他の俳優さんは演じていますが、団長安田さんについては本業のお笑いよりも自転車や体力系にシフトをしていますからよりリアルに感じます でもそのもがいているリアルな団長安田さん(同じ事務所の森脇健児さんも似ていますが)、同年代男性として大好きです (4月14日 MOVIX京都 にて鑑賞)
先にストーリー見てから鑑賞した方がいい
こだわりやプライドを捨てて自由に生きる
味わいのある群像劇だ。玉山鉄二演じる主人公立花浩樹を取り巻く登場人物それぞれにエピソードがある。どれも煮詰められて短く纏まっていて、なかなかいい。
音尾琢真の宮川良和は、バブル期の売り手市場でテレビ局に就職できた平凡な男で、努力もせずにぼんやりとバブルに乗っかって生きてきた。そしてバブル後に不景気の波が来たときに左遷されてしまうのだが、クズ嫁に人格を全否定されてしまって、生きる意味を失ってしまう。音尾琢真はとても上手い。
立花浩樹が借金を完済後に住んだシェアハウスの住人セトッチこと深川麻衣が演じた瀬戸寛子は、美容師の資格を持ちながら、皮膚が弱いことで美容院勤めが出来ない。そのことで美容師を目指してきたこれまでの人生が否定されているように感じている。
それにしても深川麻衣は、2021年の映画「おもいで写真」では表情に乏しい演技で作品全体を台なしにしていたのに、本作品では伸び伸びと表情豊かにセトッチを演じていた。
監督の演出の差なのか、監督との相性なのか、「おもいで写真」は主演で肩に力が入っていたのか、それとも女優としての急激な成長なのか、当方には分からないが、本作品ではセトッチの人間的な魅力が十分に感じられた。
背負った借金を個人で返済するのは大変だ。少ない収入から必要最低限の金額を除いて、残りの全額を返済に当てたとしても高がしれている。だから完済には長い年月を要することになる。
幸運な人は銀行や資産家から借金をして事業を始めることができる。事業収入は個人の収入とは桁が違うから、返済に時間はかからない。しかしそういう人は稀で、大抵は一生懸命に返済するか、自己破産をしてしまうかのどちらかだ。
死語かもしれないが、個人から借りた借金を踏み倒すことを「不義理」といって、不義理の相手の家には行きづらいことを「敷居が高い」といっていた。敷居が高い状態には、誰もなりたくないものである。その分だけ精神の自由が狭まるからだ。
借金には保証人や連帯保証人を求められることがあって、連帯保証人となると、借主と一体と見做される。借主が自己破産などでお手上げしたら、自動的に返済義務が生じる。
立花浩樹が自分で借金したのか、それとも連帯保証人だったのかは定かではないが、話の流れからすると連帯保証人だったように思える。事務所の社長に一杯食わされたのだ。15年かかっても、完済したのは立派である。世間を狭くしないで済んだ。それからは自由に生きられるのだ。
本作品のテーマはまさにそこにあって、宮川もセトッチも立花も、背負った重荷を気にするあまり狭量な考えになってしまっていたが、何かをきっかけにして、つまらないこだわりやプライドを捨ててしまって自由に生きられるようになった。立花にとっては母親の「今はちょっと、ついてないだけ」という言葉がきっかけになった。根拠のない励ましであることはわかっているが、応援してくれる母の気持ちが立花の心を解きほぐす。いいタイトルだ。
難しい...
人生100年時代を考える。
玉鉄、久しぶりに観た。キャストも奥山佳恵にひょうきんアナ、かとうかず子などなどバブル期を思い出させる人達がメイン。
主人公の立花はスチールカメラマンだけど、バブル期に人気テレビ番組に出演していた、元有名人。ある事情で表舞台を去り、カメラマンもやめて、オッサンになっていた。同時期に番組制作をしていた宮川は、仕事を辞めたのがきっかけで家族と別れていた。この2人が親をきっかけに出会い、再スタートを始めるお話。タレントの会田は所属事務所に契約解除されたばかりで、自分で再スタートする為に2人と組む事にする。
メインの2人が暮らす事になったシェアハウスに住んでいる若い女子、瀬戸ちゃんも、いろいろあって凹んでる状態。
人生は経験も大切だけど、もっと大切なのは今を生きる事。何かを始めるのに遅すぎるって事はないよってか。
元々、才能のある人達の話なので、一般的なオッサンの境遇とは違うよね。映画の中では成功っぽい流れだけど、現実的には技術や流行など、現場を離れているとついていけない事だらけのはず。なので若い奴らとチームを組んでトライして欲しかったな。
禍福は糾える縄の如し
バブル崩壊から15年、燻る人達の再起の話。
当時TV番組等も持ち脚光を浴びていたものの借金を返済する人生を歩いたカメラマンを軸に、下品なTV番組を作っていた元製作会社の男、メイクアップアーティストの夢を諦めた美容部員、決めていた退き際を前に契約を解除されたお笑い芸人等が絡む群像劇。
偶然の出会いが人を掬い、そして自分も掬われる。
とても良い話ではあるのだけれど、事務所社長との件はちょっと解り難く回りくどさも感じたし、家族のこととか投げっぱなし、ある意味ショートストーリーの積み重ねとはいえ時系列弄りまくって面倒臭い。
とはいえ、自信を無くした人が自分を見つめ直し、やって来たことや出来ることに意義をみつけていく様子は、優しく温かかった。
もうちょっとすんなり繫げてくれたら、かなり面白そうだったかな。
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