「オトナに刺さる映画」今はちょっと、ついてないだけ コバヤシ・モユさんの映画レビュー(感想・評価)
オトナに刺さる映画
他の方のレビューを見ると、可もなく不可もなくという評価が多かったですが、私には刺さりました。タイムスリップ、サイコパス、二重人格、超能力、ギフテッド、殺人、暴力、淡い恋愛、ドロドロの恋愛、復讐などなど、いわゆる「エンタメ」って感じの要素は何もないです。
若い頃には、いいオトナが、どうしてそんな事件を起こしてしまうんだろう、どうしてそんな借金を作ってしまうんだろう、どうして離婚するんだろう、どうしてせっかく入った大企業を辞めるんだろう、とか正直思ってました。
みんなバカなんだな、くらいで片付けてました。
でも、今は少しわかる。
すべては、それ単体の話ではない。その前に何かあり、さらにその前に何かあり、さらにその前に何かある。すべてに因果があります。
「だったらそうなる前、さらにその前の段階で、何か手を打つべきじゃないのか?お前」若い私なら、言うかもです。でも、それぞれの段階で最善を尽くしても、悪いことに辿り着いてしまうことも、ときにはあるんです。
時代に翻弄された会社、会社に翻弄される仕事、絶頂の自分、落ちた自分、巻き返すには残り少ない時間、老いた親への贖罪。そして「人生の底」で、あがいた末に偶然差し込む一筋の光。
こんなことってなさそうだけどあるよね、って思えるのはオジサン、オバサン以上でしょ。
地味だけにリアル。若い人には、共感できないと思いますわ、未来の話だしね。
これを読んでいるあなたが30歳以下なら、親御さんに「ねぇ、人生の底って、どんな感じ? その時どうした?」って聞いてみてください。いい親子の会話ができるかもですよ。
禍福は糾える縄の如し。。という台詞に、作者の言いたいこと、すべてがこもっていたと感じます。人生の機微を感じる、いい映画です。