「DV夫に悩まされているマディソン(アナベル・ウォーリス)。 何度目...」マリグナント 狂暴な悪夢 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
DV夫に悩まされているマディソン(アナベル・ウォーリス)。 何度目...
DV夫に悩まされているマディソン(アナベル・ウォーリス)。
何度目かの妊娠も夫の暴力の後、流産してしまう。
そんなある夜、DV夫が自宅で殺されてしまう。
マディソンは、その殺人の様子を悪夢として観るのだが、それはまるで現場にいたかのような生々しいものだった。
それを機会に、マディソンは同じような悪夢を観るようになるのだが、その殺人は現実の世界でも起きていた・・・
といったところからはじまる物語で、巻頭にどこかの病院での惨劇と手術シーンが短く描かれていて、そこも伏線。
いや、伏線といえば、映画の前半は伏線だらけで、終盤、それが見事に回収されている。
と先に褒めておくのだけれど、前半描かれる連続殺人の展開は、非常にまだるっこしく、これは評判倒れのヒドイ作品にあたったかなぁ、と後悔しました。
その後、事件の経過とともに調査が進み、「ガブリエル」なる謎の人物の名前が登場するのだが・・・
ここまで進んでくると、70~80年代にかけてホラー映画を観まくった身としては、おおよその見当がつく。
ははぁん、フランク・ヘネンロッター監督のあの作品か、ブライアン・デ・パルマ監督のマーゴット・キダー主演のあの作品か、はたまた、ジョン・カーペンター脚本、アーヴィン・カーシュナー監督の『アイズ』か・・・
ま、それよりも先に思い出したのは、手塚治虫の漫画『ブラックジャック』の中のエピソード、「ピノコ」と「瞳の中の訪問者」。
いずれも、あたらずとも遠からず、な結果なのですが、後半は、一気に別の映画になります。
「ガブリエル」の正体がわかってからは血まみれアクション映画の様相。
とにかく、「ガブリエル」の動きがすごい。
どこをどうやって動かしているのかがわからないぐらいの動きで、ジェームズ・ワンのインタビューを読んだところ、演じているのはアクロバティックなダンサーだそう。
逆回転的な素早い動きは、クリストファー・ノーラン監督『TENET テネット』に似ているが、こちらの方が凄まじい。
ホラー映画畑のジェームズ・ワン監督がダークヒーロー(もしくは究極のヴィラン)を描くと、こうなるのか!という驚きもありました。
(そういえば『ヴェノム』も思い出しますね)
最後は、意志の力で「ガブリエル」を倒す(?)ことになるのだけれど、このシーンでは、ケン・ラッセル監督『アルタード・ステーツ 未知への挑戦』を思い出しました。
続編の予感も感じさせるエンディングだけれど、続編はちょっと難しいでしょうね。
まんま『ヴェノム』になりそうだもんね。
良い子のみなさんにはお薦めはできない、R18+のレイティングでした。
追記>
そのほか思い出した作品としては、デイヴィッド・クローネンバーグ監督『戦慄の絆』『ザ・ブルード 怒りのメタファー』、ダリオ・アルジェント監督やルチオ・フルチ監督のイタリアンホラーの血みどろ感があります。
なお、「マリグナント」とは「悪性の」という意味だそうです。なるほど。