「1作目の映画がミスリードになる面白い作品」沈黙のパレード Tamaさんの映画レビュー(感想・評価)
1作目の映画がミスリードになる面白い作品
この映画はガリレオ3作目の映画であり、1作目の「容疑者Xの献身」が見事にミスリードになっていて最後まで真相がかき乱された。
容疑者Xの献身は、犯人の男が無垢な親子を守ろうとした為に、最後まで徹底して悪魔を演じるという作品だったが為に、今回も最初からクズ全開の蓮沼にも「裏」があるのでは、と心のどこかで最後の最後まで疑って掛かってしまい、見事に疑心暗鬼を利用された、という感じでした。正義や人情など欠けらも無い、クズはどこまでいってもクズ、を貫いていて、しかしガリレオはそんな犯人でさえも伏線ひとつで見事にその構図をひっくり返してくれるので最後まで油断できない作品です。しかし今回は、まさかの1作目の教訓が湯川先生の中に刻まれており、「私は同じ過ちを繰り返したくない」と言ってくれて、同じ轍を踏むことはなく、途中からは「湯川先生なら大丈夫」という気持ちにさせてくれました。(結局、最後は当事者に真実を伝えて本人の良心に任せる、という流れで「同じじゃん先生…」と思わなくもなかったですが。別の真相を伝えたかったのだから仕方ないか)同じシリーズでも作品の繋がりがないことはよくあるので、こんなにも1作目の後悔を繋いでくれる作品って珍しい。賑やかで暖かいパレードとの対比で、誰も彼もが他の誰かの沈黙に続いて口を閉ざして死の行進をする。犯行に手を染めた人たちが何事もなく普通の生活に戻れている姿は、若干のご都合主義が垣間見えましたが、ガリレオってそこまでリアル突き詰めて気分悪く観たい作品ではないし良かったのかも。湯川先生を見ていると、いつも「こんな大人になりたいな」と趣味の幅を広げてくれるので大好きです。(水炊きに頬を弛めたり、堅物なのに地元のパレードを本当に楽しそうに見物したり、コーヒーの趣味に目覚めたりいちいち渋いです……)