「実写邦画の最高峰。やはり監督と役者が良ければ日本は戦える!」沈黙のパレード 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)
実写邦画の最高峰。やはり監督と役者が良ければ日本は戦える!
開始一秒から引き込まれるこの感じ・・・もう名作だと俺の嗅覚が疼いた。観客全員が冒頭すぐに女の子の親になってしまうほどガッッッツリと心を持っていくオープニング。こんな感情移入のさせ方はズルいよぉ~ズルい!!!
そうして冒頭では意外とガリレオっぽくない映像が続き、悲劇までが描かれて一気に観客をどん底に突き落としてからこの物語は始まる。
『おいおい、俺はあのコミカルな予告編だった福山雅治と柴咲コウのガリレオを見に来たんだよな?なんか女子高生が主人公の映画じゃないよな?』
なんて一瞬思ってしまうほど冒頭からクライマックスレベルに感動させられて、『なんだこの構成!?この後どうこれを超えてくんねん~😭』ともう満足感に包まれる不思議な感覚を味わえた。冒頭からウルッとさせられる設計に、まずは驚かされた。
本作は人間模様にミステリ要素、湯川らお馴染みのキャラクター達は勿論のこと、何より役者さん方の”圧倒的な演技力”を特筆すべきだろう。とにかく役者さん方の演技力が”素晴らしいの一言”で本当に切実で重大で悲しい事件を取り扱っているんだなと、他人事じゃない迫力を味わうことになる。
”今”間違いなく日本最高峰の実写邦画だと言えるかもしれない。
実はガリレオはそんなに見たことが無かったので、福山雅治がもっと女性向けのサービスしたキャラなのかな~と思っていたら全然”そういう不快感”は無かったのでそこもまず良かった。ジャニーズだとこの辺がね・・・。
さてさて、そもそも公開前の予告編では『湯川らお馴染みのキャラクターであのガリレオが帰ってくる!』みたいな触れ込みで若干コミカルな雰囲気だったので、”それが功を奏していて”本編の内容と良い意味でギャップになっていたと思う。
内容にも殆ど触れられていなかったので、本編最初ののど自慢大会が始まると観客たちは『なんだ?なんだ?』と引き込まれ、そこからの順風満帆な展開からの落差に一気に物語の住人へと堕とされたハズだ。
『こんな垢抜けない女子高生を殺したのは一体誰なんだ? 動機は? そもそも何が有った!?』
なんて思っているとすぐに姿を表す犯人疑惑の掛かっている蓮沼なる男。この男がまた最悪のクソ野郎で悪びれもせずに喧嘩を売ってくるまさに外道。でもそんな男の極端な行動に『これは裏が有るパターンでは?』とも思わされたりしつつ、殆どの観客たちは『湯川先生ェ!!!!早く来てくれェェェ!!!』という心境だっただろう。
もうこの蓮沼役を演じられている村上さんの演技も最高(笑)で、女性はマジで鳥肌立つんじゃないかというレベルだった。ヤバい男感が120%表現されていたね。
で、なんやかんや有って真犯人は”やっぱり蓮沼でした”というまさかのオチが待っている。。。。。。。。
あの、本当に道中は素晴らしくて俳優さん方の演技も素晴らしいし文句の付けようが無い作品なのはまず断っておきたい。五つ星です。ほぼ満点の4.9です。
それでも、それでも!終盤にて明かされる種明かしで一気に何か梯子を外されてしまったような、そんな奇怪な印象のままこの作品は幕を閉じる。
一応整理すると、そもそも蓮沼なる男は今回の事件以前に小さい女の子を殺害しているのがほぼ確定していて、少なくとも2回も子供に手をかけているクズ野郎。つまり、順当に蓮沼が犯人でクソ野郎でしたというオチなのだ。
被害者家族は本当にただの被害者であるし、道中の新倉夫婦の件は全部冤罪みたいなもんだった。檀れいは殺してなくて、椎名桔平は騎士だった。そして女子高生の生前に何か問題が有っただとか脅されていただとかそういう訳でもなく、一時の痴話喧嘩による事故が全ての発端だった。
そして結局犯人は当初我々が憎悪し『この野郎ぉぉ』と飯尾と一緒に憎んだ蓮沼こそがやっぱり真犯人だったという、一周回ってきたオチなのだ。最近のサスペンスではこれが主流なのだろうか・・・?
この作品、このオチだけは非常に残念なところだと思う。
これはYouTubeなどで批評している方々も言及していて、何かポッカリと穴が空く。それを知った街のみんなの反応は?パレードで豪快にやった意味は?といった風に、至極当たり前な疑問を放ったらかして終わるのだ。
そしてテーマもイマイチ見えてこない。法律という矛盾した存在への抵抗からの私刑話なのか、女子高生の家出等に視点を置いた女子高生に寄った話だったのか(家出じゃないが捜査の過程で)、グルになって襲いかかる街の人間達の恐ろしさなのか。或いは家族ぐるみとはいえやはり金儲けも関わってくる音楽プロデューサーの闇なのか。
本作を見終わった後の謎の違和感は、最終的にこのどれとも違う謎の話を見せられた感にさせられるからだろう。タイトルの沈黙と掛けているというレビューも散見されるが、普通にベラベラ喋っているのでなんとも。まあ、こんな細かいことをグチグチ言ってる僕みたいな人間だけかもしれないが(笑)。
だから確かに良い映画を観たんだけども、『えっと。。だからやっぱり蓮沼が。。。ってあれその事を知った飯尾家族の反応は見たっけ?』という風に、スッキリしない気持ちにさせられた。
つまるところ、物語当初の構図から変わっていないのだ。檀れいは冤罪だったし、椎名桔平だけが罪を償って、でも椎名桔平は女子高生を殺した犯人ではない。だから結局蓮沼が殺していて、ならあの居酒屋に顔出せる態度と根拠は何だったんだと(笑)。モヤモヤ感。
あれほど顔も晒して堂々と来るのだから、何かを訴えに来ていた犯人ではない人物だと思うはずで、だからこそあの時の悪役っぷりが後々に効いてくるカタルシスをみんな期待していたと思うのだ。
だから結局犯人だと分かると尚更序盤のあのシーンの威勢は何だったんだ?という疑問が再燃して、再燃したまま幕を閉じる。檀れいに訴えかけるも何も殺してるのはお前じゃねえかと。アホかと。
このように疑問が蒸し返された状態で終わるので、ちょっとお後がよろしくない。
それでも、本当に無駄なシーンが一つも無いくらいに圧倒的なテンポと役者さんの演技力には魅せられました。ワンカットワンカット全て作り込まれていて安っぽい絵面も一つも無い。邪魔なキャラも余計な要素も無くて全てに引き込まれる。
久しぶりに実写邦画で凄かった・・・。散々言いましたが普通に名作です。観ましょう(圧