「憧れのヤクザ映画をオシャレに作りました、みたいなダメ映画」JOINT 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)
憧れのヤクザ映画をオシャレに作りました、みたいなダメ映画
新藤兼人賞の銀賞を受賞されたというニュースを知り、劇場公開真っ最中なのでとりあえず観ようと思いました
が、結論から言うと別に観なくてよかったなと
まず、オープニングからナレーション・モノローグを多用して全部説明してきたので、完全にダメな映画の典型だなと呆れました
テロップで名簿屋とかルーターとか別に知らなくてもよい細かい情報の説明も要らないし、登場人物が増える度に名前と肩書きをテロップで説明するのも要らないです
そういう情報や人物の関係性は芝居やセリフ回しで説明には見えないようにさらっと説明してください
ヤクザ映画あるあるなので、名前と肩書きテロップは多少は許せますが、それにしても多すぎです
そもそも登場人物が多すぎるけど、ほとんどが要らないキャラクターですし
途中で退出しようかと思いましたが、とりあえず我慢して最後まで観ましたけど、物語の面白さで何か取り返すということは一切無かったですね
むしろさらにイラついたのがテンポ良い編集にそれっぽい音楽つけたシーンもかなり多いことです
テンポ良い編集してそれっぽい音楽つけてれば、そりゃカッコイイですよね
カッコイイだけで、まったく話の中身が無いシーンだけど、カッコよければいいでしょ?
そんな監督と編集マンの薄っぺらい会話が聞こえてくるようでした
走る車体にゴープロ貼り付けて撮ったホイールの画とかも多用されてましたけど
本当、そういうのをかっこいいと思っていそうなのがマジでダサいです
裏を返せば、意味のあるセリフは1つも無いからこのシークエンスは全部デカい音楽で誤魔化しちゃえってだけのことですからね
変化や新しい情報が無いんだったら編集でバッサリ切ればよいシーンなのに
そんな脂肪だらけのシーンがどんだけあるのかと……
それにプラスしてナレーション・モノローグの多用……
もう完全にチケット代だけでなく時間も無駄にしました
役者は味のある外見をした人が多くてそれは良かったんですが、いかんせんみんな芝居が下手すぎます
ボンボンの不動産屋ぐらいかな、なんとか芝居が見てられる役者さんは……
監督もアングルやルックや色味だけにこだわらないで、役者がうまく見える演出を覚えたほうがいいですよ
MV出身監督はホントみんなオシャレ画だけで芝居が撮れませんよね
画がカッコよく撮れればそれだけで良い映画みたいな風潮は完全にクソですよ
ファッションやインテリアじゃないんだから、映画にはオシャレであってはいけない場面も確実に存在するのに、オシャレであればよい、オシャレなら客が来る、MV出身者に監督させよう、みたいな風潮は一体誰が発信してるんでしょうか?
話が逸れましたが、脚本はホント下手くそな部類でした
監督ではない人が脚本のようでしたが、ダメな脚本のダメさに気づけていない時点で監督も実力不足です
ダメポイントはナレーション・モノローグ多用に限りません
犯罪映画で「名簿屋」という切り口は新しいと思いましたが、結局ありがちなヤクザ映画の、弟分がやられたから復讐するとか、展開がありがちすぎます
チンピラに、ヤクザに、敵対するヤクザに、在日の犯罪者に、外国人犯罪組織に…
キャラクターが多すぎるのに全部同じようなチンピラに見えるのは、全員セリフ回しが感情的でしゃべりすぎだからです
大物なら逆にしゃべらないほうが怖い
しゃべるよりも先に手が出るヤツも怖い
吠える犬は噛まないので怖くない
そういう描き分けが全く出来てない
だから、多すぎるキャラクターがみんな同じにみえるし、同レベルに見えてしまう
どのキャラも大した変化をもたらさないから物語も平板なままなんですよ
で平板な物語を変化させたいから新たに不要なキャラが増えるの繰り返しでこんなキャラクター祭りになってるんだなと感じました
それに、そもそも主人公の目的が分からないのが、ストーリーを楽しむ上で一番の問題でした
刑務所から出所して土方で金貯めて、その金で名簿屋始めて詐欺グループ作って、でもクリーンになりたいから投資家始めて、だから飛ばし携帯屋は裏切って、でも弟分が殺されたから復讐とか、クリーンになろうとしていたんだから裏社会のいざこざはもう関係なくない?と思いましたけど
クリーンになるどころか殺人罪になるほうに首を突っ込むのは何故?と疑問が頭から離れませんでした
というか、飛ばし携帯屋の在日も昔からの仲間なのに、それは自ら裏切ってるけど?
同じ仲間をさっき裏切ってるのに、同じ仲間が殺されたら復讐?
何言ってんだ、この主人公は? バカなのか? とこっちは完全に白けましたけど
これ、監督もスタッフも俳優部も誰も脚本の矛盾、支離滅裂なのを疑問に思わなかったんですかね?
といった感じで、主人公のみならずキャラクターみんな目的が分からなくて、飛ばし携帯屋の在日もいつの間にか仲良しに戻ってるし、なんなら主人公を殺しに来てもいいのに、そんな展開もそんな感情も描かれていないし、ご都合で裏切ったり、急に仲間に戻ったりして、それが白けるから全く感情移入できませんでした
これで新藤兼人賞って、邦画には大した新人がいないのか、選考委員の見る目が腐ってるのか、どちらにしても不安になる映画でした
ノミネート作品をすべて見てないのですが、由宇子の天秤とか、猿楽町で会いましょうとか、口が裂けてもベストとは言えないけど、少なくともこれよりは確実にマシだった映画もありますけどね