「複雑ね」流浪の月 kame-pukupukuさんの映画レビュー(感想・評価)
複雑ね
映画館で鑑賞しました。
上映開始から1か月が経過しているのに、映画館の席が6割以上が埋まっていてビックリしました。
とても率直な感想としては、面白かったかと問われると、何と答えらいいか分からない、といったところです。なにかがスッキリと終わったわけでもないので、明確な結末を求める方にとっては、面白くはない、とは思います。
ただ、鑑賞中は色々なことを考えさせられましたし、出演している俳優さん達の演技も素晴らしく、2時間30分という時間を長くは感じませんでした。
鑑賞している際に思ったことは以下のことです。
①文はロリコンだったのか。
文は自分のことをロリコンと認識しているが、ロリコンを小児性愛者と読み替えれば、更紗らに性的欲求をぶつけなかった文を小児性愛者というのか。文は能力的に「繋がれない」としても、繋がる以外の行動で性的な行動を表現することはできると思うが、少なくとも映画の中ではそういった描写はないし、更紗も「なにもされなかった」と言っている。このことから、一般的に想像する小児性愛者とは違う気もするが、ケチャップを拭うシーンもあり、更紗に対して恋愛感情は持っていた、とは思われる。
ここまで細かく考えましたが、結局は「普通ではない」「性的に大人になれない」と自分を卑下していて、成人女性に対してコンプレックスを抱いている男性、という表現が出きれば正確にロリコンかどうかはどうでもいい話だとも思います。
②更紗が従兄の行為を告白できなかった
文が警察に逮捕された後、更紗が従兄の行為を警察に言えなかったのは、更紗の中にもいろんな葛藤があったのかもしれません。言うと、従兄の立場が危うくなるかもしれない、そもそも自分の発言が認められず叔母の家での自分の立場がなくなるかもしれない等。
事件後の家での描写がなかったので分からないところですが・・・。
③多様性ってなんだろう
以前に比べ様々な多様性に対する寛容さが求められている世の中で、「ロリコン」という自分の力では変え難い嗜好は認められないのか。性的欲求に従い行動を起こせば、罰せられるのは当然ですが。
「大人の女性しか好きになってはいけない」というのも固定概念なのでは、とも思ってしまいました。犯罪となる行為を行わなければ、人の趣味・嗜好なんてどうでもいいだろ、と個人的に常々思っている自分としては、そう思ってしまいました。
(未成年に対する性的行為を含めた犯罪行為を容認するつもりがないことは、念のため記載しておきます。)
④アンティークショップのおじさん
細かい話ですが、あの人の存在は必要だったのか。必要だったとして、柄本さんでなくてよかったのではないか。柄本さんという俳優を使ったからこそ、アンティークショップのおじさんが際立ってしまった。
文も更紗も、複雑な背景を抱えており、本当の自分を見て認めてくれる存在を求めていた。しかし、状況しか見ていない、切り取られた情報しか知らない世間は、2人の関係性を認めない。辛いですね。
様々なことを考えさせてもらえた良い映画だったと思います。