「善と悪」流浪の月 Miyuさんの映画レビュー(感想・評価)
善と悪
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居場所のない2人が出会い、惹かれあう。しかしこの2人には一緒になってはいけない決定的な理由があった。それは年齢。
こういった禁断のラブストーリーだと思って見ていた。そんな自分の読みの甘さに愕然とした。
文は小児性愛、いわゆるロリコンとして世間からバッシングを受けるが、居場所のない更紗にとっては唯一心を開くことのできる"愛すべき"存在。
そして男性として"ハズレ"である文にとって、肉体関係を排して自分を愛してくれる更紗は"愛すべき"存在。
この2人の間にある"愛"は、もちろん肉体関係でもなければ、恋愛感情でもない。
ただたまらなく相手を愛おしいと思い、相手のためならどんなことでもできる、そういう"愛情"なんだと気づくことができたのは、この映画を見終わって少し経った後だった。
亮くんは、恋愛感情と孤独からくる支配欲を取り違え、
文の恋人は、肉体関係がないことを愛がないことだと誤って結びつけ、
世間は、男女が2人でいることを恋愛や肉体関係と取り違えている。
そういう区画整理された感情を、まだ知らない子どもたちは、自分の意思を尊重してくれる相手を、純粋に"好き"と感じる。
この2人が穏やかに暮らせる場所は、いまの日本にはまだないのだと、自分自身ラブストーリーとして見ようとしていたことを通して、気付かされた。
「怒り」同様、情景描写は美しく、登場人物たちの生々しい表情は残酷に、この対比の映像演出が素晴らしい。
俳優たちの演技も圧巻で、更紗にだけ心を開く文を演じる松坂桃李さん、ほんとうの自分自身を抑えて周囲と接する大人になった更紗を演じる広瀬すずさん、おふたりの表情や台詞の機微が素晴らしい。
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