「相変わらず濃い李監督作品」流浪の月 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
相変わらず濃い李監督作品
相変わらず濃い李監督。その濃さは実はあまり好きではない。俳優のみならず脚本監督も気合が入りまくって過度な劇的構造の、言ってみれば昔ながらの日本映画な感じがいつもする。こういうのが好きな人は好きなのだろう。
前半見てる際には「シベールの日曜日」的作品かと思いきや、やはり原作はさすが本屋大賞、病的な要素を持つ主人公たちの運命的な再会と世間の邪魔、大きな障壁を持った幸せになることのできない男女のロマンス、とも言えないロマンス。なのでいい物語だな、と思うのだけど、いかんせん濃すぎる。常にみんな思い詰めてるみたいで確かに葛藤こそドラマとは言うけれど、みんな思い込みが激しくて感動からは遠ざかる。
現在進行形に過去回想が入る作りではあるけど、回想の分量とタイミングがそこでよかったのか微妙。「誘拐」と世間でみられたその時間は実はかけがえのない心の拠り所となる幸せの時間だった、という一連は、実は芯になる結びつきのシーンが見えなかった。心の傷を負ったふたりが公園で出会う。そして歩み寄る。打ち解ける。となるはずなのだけど、逮捕のシーンのところで、もっと盛り上がりたかった。前半でその掴みがないのでいまいち盛り上がれず。ただ、カメラは目新しい。パラサイトの人なんですね。とてもシャープな絵ながら陽光のハイコントラスト、夜景手前の日没後の雲が見える空、「月」とタイトルにあるからか、とても丁寧に撮られていて新鮮でした。
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