「ペネロープが主役のスピンオフ。でも本編も見たくなった。」日本語劇場版 サンダーバード55 GOGO 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)
ペネロープが主役のスピンオフ。でも本編も見たくなった。
40代の女性です。世代でもファンでもない私にとっては「古い懐かしの番組」の範疇です。しかし作り手の情熱に感動し、映画館に行きました。その結果とても楽しい気持ちで映画館を後にしました。
映画はこんな流れです。
1.メイキング
2.サンダーバード登場(ペネロープ入隊)
3.雪男の恐怖
4.大豪邸、襲撃
5.ネビュラ75
先に書いておきますと、今回の主人公はペネロープで兄弟たちはほぼ脇役です。彼らの見せ場はしっかりありますが、「兄弟達の大救出劇」を期待している人は物足りないかもしれません。LPレコードの音声ドラマを元にしているので、スピンオフ気味なストーリーになるのは仕方ないと思います。
「サンダーバード登場」はペネロープが正式メンバーになるエピソードです。彼女に施設やメンバーを紹介するていで、基本的な知識を得られます。親子連れのお子さんの入門編としては完璧です。でも既に概要を知ってる人にとっては「そんなことより救出劇が見たいよー」となるかもしれません。私も同じで「あー、そうですかー」という気持ちで少々退屈でした。
しかしその後の「雪男の恐怖」と「大豪邸、襲撃」は面白かったです。雪や爆発がリアルで迫力があります。引き込まれたし、童心に戻り手に汗握ってしまいました。LPレコードを聞いていた当時の子どもたちは、メカの説明を聞いて豊かな想像をめぐらしていたのでしょう。映像化されないかわりに、普段は補佐的なペネロープが主人公なので新鮮だったと思います。
再現度は素晴らしいと思います。話の合間に過去作からの引用シーンらしきものがあるのですが、セットも人形も過去作と新作の区別がつきません。こだわりが怖いくらいです。オリジナルの俳優(声優)で当時と全く同じ新作映像が見られる。それがこの映画の奇跡ですね。
ただ日本人にとってはその価値も半減なのは否めません。NHKの放映当時から吹替だったのですから。せめて字幕版の上映があったらなぁと思わずにはいられません。でも吹替声優さんはよい仕事をなさっています。満島ひかりさんが棒読みだったら嫌だな…と思っていたのですが、プロの声優さんに引けを取らない演技力でした。満島ひかりさんへの批判がちょこちょこ見受けられますが、いささか過去作にとらわれすぎではないかと思います。満島さんが落第だったらほかのどんな声優さんでもだめでしょう。
確かに吊り糸は見えていますが、それでいいんです。昔だって見えてたんだし。動きもとても人間らしいです。ペネロープのリップやチークはとても自然でかわいいし、パーカーが汗をかくところもリアルです。時折本当の人間に見える瞬間があります。
男性はあまり興味ないかもしれませんが、ペネロープのファッションは必見です。彼女は着道楽のファッショニスタでもあるんですね。私は「雪男の恐怖」で捕らえられた時に着ていたブラウスがめちゃくちゃかわいいと思いました。サンダーバードに興味ない女性も、服好きな人だったら楽しいと思うんですけどね。多分60年代ファッションを元に新しくデザインされたものでしょう。
「家族経営」「サンダーバードが何号かある」「世界のどこでも救助に駆けつける」程度は覚えていたのですが、実は様々な用途のマシンがたくさんあることも知りました。確かに状況に合わせた想定をしなければなりませんよね。架空のマシンですが、「こんなのが実際にあって人を救えたらいいなぁ」という当時の作り手を思うとジーンとしました。
これも映画館の看板で知ったのですが、国際救助隊は「救助」に特化した組織で武器は搭載していないようですね。一応拳銃っぽいものはありますが、催眠銃(麻酔銃?)です。犯人は基本生け捕りにして警察に渡すようですね。(この作品しかちゃんと見てないけど)日本のロボットアニメや特撮にそんな発想を感じたことがなくそこも感動しました。50年も前の英国の作品が命の尊さを説いていたとは…。
今回はペネロープの冒険でしたが、本編のエピソードも見たくなりました。完全に21世紀に書かれた脚本のサンダーバードも作られたらいいのにと思います。もしこの映画が大ヒットしたら作られるかもしれないです。その場合は俳優(声優)は一新されることでしょうが。
ネヴュラ75は、サンダーバードには無関係のお話みたいですが、面白そうでした。
感想を書いていたら、少ない私のサンダーバードの思い出もよみがえってきました。初めてサンダーバードを見たのは、児童館の上映会です。多分第一話だったと思いますが、小学生だったのであらすじなどは何も覚えていません。その代わりオープニングにブレインズが登場した時、会場が爆笑の渦に包まれたことは覚えています。大きなメガネが子どもにはたまらなくおかしかったんですよ。あとは高校の入学式のとき、新入生入場の曲がなぜかサンダーバードでした。心の中であっけにとられながら行進しました。