「陰湿で邪悪な作品」ダーク・アンド・ウィケッド Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
陰湿で邪悪な作品
今まで色々なホラーを観てきたが、本作は滅多に出会うことの無いタイプの作品だった。
起承転結の無い映画ではないが、冒頭からラストカットまでずっと同じ波長で進んで行くのである。終始薄暗く、陰気臭い牧場での一日が描かれ、曜日が進むにつれ不穏な空気が濃くなっていく。ショッキングなシーンに関しては特にパンチが効いているという訳ではなく、至って普通の表現だが、終始立ち込める不穏な空気の中で描かれるそれが非常に際立って見えるのである。登場人物は少ないが、印象に残るキャラクターが多く、雰囲気作りが非常に上手い。
色々考慮するとどちらかと言えばJホラー寄りの作品だが、本作は独特で独立したジャンル、言わば新ジャンルと言っても良いのでは無いかとも思う。近年ヒット作を生み出しているA-24製作の作品群と近い印象も感じる。
本作は基本的に、恐怖の対象を明確に明かす事はなく、ただただ着実に近づいてくる「それ」に怯えるのである。ここら辺は登場人物と同じ心境になれる部分だろう。先程も取り上げたが、冒頭からラストカットまで同じ雰囲気で進み、常に不気味で悪い事ばかりが起こるのだが、正直気持ちよく劇場を後にできる作品では無いだろう。たがここら辺も登場人物らが立たされている境遇とシンクロするのだろう。
全てが闇に覆われたような作品であり、夜に一人で観ると気が沈むが、ホラーファンであれば一度は本作のなんとも言えぬ空気感をぜひ体験して欲しい。
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