「偶然の可能性を前向きに考えたくなる作品」嘘喰い 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)
偶然の可能性を前向きに考えたくなる作品
嘘を見破れなければ、即死。史上最恐の騙し合いゲーム、開宴。このキャッチコピーからは残酷さしか感じない。しかも、序盤はキャラクターに入り込めない時間があった。ところが時間が経つと、そんな世界観も見慣れていく。
「嘘喰い」という題名から入り組んだ展開を覚悟していたが、意外にも本作はわかりやすく、単純に面白かった。
究極の騙し合いのはずが、人の感情や熱意を捨てきれないエピソードを含んでいる点は、(命懸けの)他の映画とは違っていたことに少し安堵した。
ルールの難しい賭け事ではなく、わかりやすいゲームだった点も好印象。ただ、予想し難い仕掛けはしっかり潜んでいる。頭脳戦という面でもどんどん先に期待するような作り。人が駒のようでありながらも、実はそうでもないところなど細い繋がりで証明してくれているように感じた。
本作は、主人公「斑目貘(まだらめばく)」の「航空機制圧バトル」から始まる。その後、秀でた直感力により短期間での巻き返しが面白さの一つ。死をも恐れず運命に任せるような空気を漂わせつつ、横浜流星のキレのあるアクションと沈着冷静な頭脳が光っていて常に先を読んでいるかのような謎めいた言動も、主人公の魅力。
本作では、主役の脇を固める俳優陣は相対的に薄い存在になっている面があるが、作中で詳しくは描かれていないものの、一人一人のエピソードや背景のようなものが主人公を通して自然と伝わってもくる。
特に主人公の権利を奪った切間創一(櫻井海音)の存在感は只ならぬ雰囲気が出ていた。一方、台詞がほとんどなく未だ得体の知れない存在だ。
含みがあるような終わり方で、表と裏の全体をより把握したいため続編があるのなら期待したい。