「余りにも前作と違い過ぎるので要注意!セルビア産『レオン』とでも呼ぶべき血塗れの家族ドラマ」ドント・ブリーズ2 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
余りにも前作と違い過ぎるので要注意!セルビア産『レオン』とでも呼ぶべき血塗れの家族ドラマ
黒い犬に追われ森の中を駆け抜ける少女フェニックス。逃げ延びた先の背後に無言で立つ男は8年前のあの惨劇を起こした盲目の老人だった。老人を父と慕うフェニックスは郊外の屋敷で二人きりで暮らしているが、学校にも通わせてもらえず街に遊びにいくこともままならない不自由な生活に辟易していた。そんな折二人の家に武装した謎の男達が近づいてくる。愛犬シャドーの様子がおかしいと気づいた老人が表に出た隙に一人の男がフェニックスの部屋に侵入するが・・・
予告にもしっかり滲んでた通り前作との繋がりが曖昧なイントロですが、老人がフェニックスに叫ぶ一言で同じ主人公による全く異なる物語であることが示されます。男達が二人を襲う理由はイントロでさりげなく匂わされますが、よりによってなぜ二人が?という疑問に対する答えが痛烈で、楳図かずおかよ!と思わず口走りそうになりました。前作が『ホーム・アローン』なら本作は『ダイ・ハード2』と『ターミネーター2』と『レオン』を足して30で割ったような全く異質の作品。もはやホラー映画ですらないので戸惑った観客も多かったと思いますし、実際トマトメーターもきっちり50%と賛否両論真っ二つ。
本作を監督したのは前作の監督フェデ・アルバレスの盟友ロド・サヤゲス。二人でキャッキャと楽しみながら書いたであろう脚本は凄惨で血塗れなのにハートフル。血も涙もない乾いたシャレに盛大に血糊を塗すラテンテイストに若干ヌメっとした不快な触感が感じられるのは恐らく本作がほぼセルビアのベオグラードで撮影されたからと推測。終始廃屋の中で繰り広げられる鈍器とナイフメインの殺し合いが醸す不気味さは、その土地に滲んだ風土そのものが映り込んだものと思われます。前作のロケ地であり最近のB級映画の製作拠点として存在感が確立されたハンガリーとは異質の魔界を垣間見ることが出来て興奮しました。しかしサム・ライミによって見出されたウルグアイの仲良しコンビがベオグラードで映画を撮る、これこそがダイバーシティだと思いました。ちなみにロド・サヤゲス監督はサウンドトラックでギターも弾いていますので間違いなくナイスガイです。
ちなみに本作を鑑賞していたのはほぼ全員シニアの約10名。うち半数がエンドロールの最中に席を立ちました。エンドロールはそもそも色んな情報が詰まっているのを知らない人間が多すぎるのも問題ですが、本作が尻尾の先までネタが詰まっていることが想像出来なかったわけですからご愁傷様としか言いようがないです。作品の出来不出来に関わらずトイレは映画鑑賞直前に済ませておくべきです。