劇場公開日 2021年10月2日

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「深く濃い緑が語りかけてくるもの」カナルタ 螺旋状の夢 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5深く濃い緑が語りかけてくるもの

2021年10月24日
PCから投稿

英国の大学院で映像人類学を専攻する監督が、卒業制作のため一人でアマゾンの奥地へ踏み入り、現地で生活しながら記録されていった映像群である。まず度肝を抜かれるのは、冒頭、一人の女性が口内で混ぜ合わせた液体を勢いよく鍋の中へ噴射するところ。この儀式的な場面を経て、我々は通常の日本人的な常識とは異なる文化や習わしがあることを知る。そこでは何かと発酵した白濁の液体が重宝され、なおかつメインの男性は森の中を徘徊しながら薬草を探し、鬱蒼とした草木をナタで切り開き、そこに手作りの住居を築き上げたりもする。彼らにとっては何気ない日常でも、我々にとっては発見の連続。ちょっとした言動に価値観を揺さぶられ、場面を重ねることでふと言い様のない親近感や愛おしさが湧き起こってくる。世界はとてつもなく広く、文化や価値観は多彩ーーー当たり前のことではあるが、自由な世界旅行もままならない今、この映画がその普遍を教えてくれた。

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牛津厚信