「【”国家絡みの医療汚職、腐敗した医療組織、不正医薬品の数々、飛び交う賄賂、政治的圧力・・”の真相に迫るドキュメンタリー映画。最も恐ろしかったのは、腐敗した政治組織が事件後の選挙で圧勝した事実である。】」コレクティブ 国家の嘘 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”国家絡みの医療汚職、腐敗した医療組織、不正医薬品の数々、飛び交う賄賂、政治的圧力・・”の真相に迫るドキュメンタリー映画。最も恐ろしかったのは、腐敗した政治組織が事件後の選挙で圧勝した事実である。】
ー 2015年、ルーマニア・ブカレストのナイトクラブ「コレクティブ・クラブ」で起きた火災を軸に、徐々に露わになっていく、国家絡みの代々続く医療汚職、賄賂、政権と医療組織との癒着・・。ー
◆感想
<Caution! 内容に触れています。未鑑賞の方は、ここまででお願いします。>
◇冒頭のナイトクラブの映像が、恐ろしい・・。メタルバンドの演奏中に、ボーカルが発火に気付き、あっと言う間に炎が燃え広がる様子。
一つしかない出口に殺到する観客。
ー 良く、この映像が残っていたモノだ。そして、この映像が流れた後に、観る側は更に恐ろしいモノを見せつけられるのいである。ー
・この火災事件は、記憶にはあったが、まさかルーマニアの医療体制の酷さにより、助かるべき人々が死んでいったとは・・。火災による焼死者が多かったとばかり思っていた。
・成分表とは違う、1/10以上に薄められた消毒液など医薬品が、長年に亘り、平然と使われていた事。
それにより、搬送先の病院で感染症に罹患し、亡くなった方が多かった事。
・その製薬会社社長の謎の死。
ー 妻の言葉”あの人は自殺する人ではない。人を殺す人だ・・、がなんともシニカルである。ー
・ルーマニア自体の医療体制が脆弱で、緊急時には隣国に患者を搬送していた事。
ー 自国で、肺移植が行えない国って・・。
国として、国民を守る義務を放棄している事と、同義ではないか・・。ー
・製薬会社から任命されていた保健相が、アッサリ辞任し、新たに保健相になったヴラドは、過去の真相を探るべく、上位役職や、院長、理事長に恫喝された女性医師達に、ヒヤリングしたり、賄賂について調査を進めるが、逆にルーマニアが過去抱えて来た、見えなかった負の事実に気付いて行く。
ー 新たに、保健相に任命されたブラドのルーマニアで長年、育っていないからこその、奮闘する姿に応援しつつも、一方で病院理事長とは思えない男の恫喝の声”俺が、トップなんだ!”ー
<随所で描かれる、全身に火傷を負い、片手の機能を失った女性が、自らの身体を”アート”として表現する姿。
だが、今作のラストはほろ苦い。
あれだけ腐敗し切った社会民主党が、若年層の投票率の異様な低さもあって、過去最高の得票数で政権第一党の座を守った事に対し、新任保健相ブラドの父が彼に言った言葉。
”この国は、駄目だ。あと、30年は変わらない・・”
腐敗した国家、それに目を瞑る民が多数いる国に、明るい未来は無い。
いつか、大きなツケが来る・・、と思った作品。
他人事ではない・・。>