アリスとテレスのまぼろし工場のレビュー・感想・評価
全87件中、81~87件目を表示
心音
ありがたい事に試写会にご招待いただいて先行して鑑賞しました。横長のポストカードも貰いました。
岡田麿里監督の作家性がこれでもかと爆発しており、一般ウケはしない、刺さる人に深く突き刺さる、そんな作品になっていました。自分にはブッ刺さりました。映画館を出た後の感覚がザワザワなのは初めてでした。
鉄工所の爆発により、町からも出れなくなり時間まで止まってしまった見伏町、成長できないまま歳を取れないまま時間だけ過ぎてく事にモヤモヤを抱える菊入正宗と同級生たち、そんな正宗が嫌う佐上睦美に誘われついていくと睦美とそっくりな少女がいた…という無骨な雰囲気を序盤では醸し出していました。
少年少女が抱える好きかも…好きだな…みたいな感情が世界を突き動かすという設定として物語の世界観を形作っていたのがとても良かったです。
虚構の世界から抜け出せないがために、好きという気持ちを口に出してしまったり、夢を語ってしまったり、未来への希望を持ってしまったら煙に飲み込まれてしまうという残酷なシーンもありました。ちょっと気になるなーと思ってしまっても飲み込まれるというのはある種思春期ならではの恐怖との葛藤に近いものなのかなとは思いました。
今作のキスシーン、エロさ全開のアニメではなく、少年少女が躍動する映画でここまで生々しいキスシーンは初めて見ました。2人は見た目中学生でも中身は立派な大人、それを踏まえるとこの生々しさにも納得のいくものになっていました。MAPPAこういうシーンも描けるとか無敵すぎないか…?榎木さんと上田さんの息遣いにもドキドキさせられました。
五実を現実世界へ戻すためにカーチェイスをしつつ、現実へ向かう列車に五実を乗せて、正宗と睦美は虚構の世界でも生きていることを実感する、心臓の昂り、頭から流れる血、笑いあう声、何もかもに生きてるってことを感じてる正宗たちの姿はとても美しく微笑ましかったです。大きく包みながら身近で大切なものに気づくラストはとても好みでした。
MAPPAが手がけるアニメーションはやはり美しく、壊れかけた工場の荒っぷり、夜空に浮かぶ花火のカラフルさ、虚構から見た現実の夏のギラギラさ、登場人物の表情の豊かさなどなど、このアニメーションを堪能するだけでも今作を観る価値は間違いなくあると思います。
声優陣はほとんどが本職なので、本当に安心して尚且つ激しい声合戦を堪能することができました。
上田麗奈さんの喜怒哀楽の表現っぷりがもう最高で、一気にギアを上げてキレるシーンは鳥肌物でした。榎木淳弥さんはやはり少年声が本当に似合います。等身大で悩む中学生がこれでもかと表現されていました。
久野美咲さんの言葉を喋れない五実から、徐々に言葉を覚えてきた五実の僅かな変化を声に宿しているのが凄く良かったです。
瀬戸康史さんと林遣都さんはまぁ可もなく不可もなくって感じでした。下手ではないんですが、周りのレベルが高すぎたのでちょっと浮いてしまっていたかなとは思いました。
中島みゆきさんがアニメ映画の主題歌を務めるというのは意外でしたが、これがまた映画にドンピシャで合っていて、壮大な音楽がこれでもかと作品が辿ってきた道のりを振り返らせてくれます。歌詞を見ていくと映画の情景が自然に湧き上がってきます。
賛否両論間違いなし、好きな人にはとことん刺さり、嫌いな人は拒絶反応も間違いなく出ると思います。
それでも岡田麿里節全開の怪作、今作に出会えて本当に良かったです。唯一無二の世界観、これからもずっとずっと築いていってほしいです。
「痛いってのは君といたいこと、生きるとは君と息をすること」なんでもない日々を大切に生きる少年少女のこれからに幸あれ!
鑑賞日 8/31
鑑賞時間 18:30〜20:20
座席 C-9
俺たちはどう生きるか。 アリスちゃんとテレスくんが大活躍してた…っけ?
外界から隔絶し、時間からも切り離された寂れた地方都市を舞台に、鬱屈した毎日を送る少年少女たちの恋愛と選択を描いたセカイ系アニメーション。
主人公・菊入正宗の父親にして街に鎮座する製鉄所の従業員、菊入昭宗を演じるのは『ミックス。』『人間失格 太宰治と3人の女たち』の瀬戸康史。
正宗の叔父にして製鉄所の従業員、菊入時宗を演じるのは『悪の教典』『コーヒーが冷めないうちに』の林遣都。
試写会に当選したため、一足早く鑑賞!MOVIXさん、ムービーウォーカーさん、ありがとうございます♪
さてさて、この映画の監督/脚本は岡田麿里。
『ルパン三世』フリークの自分は、彼女がシリーズ構成/脚本を手がけた『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(2012)を鑑賞した際、「なんじゃこのクソアニメ!?岡田麿里ぃ、名前覚えたからなぁ〜💢金輪際コイツの作品は鑑賞せんぞ!!」なんて思ったものだが(今にして思えば、革新的な作品を作ろうという意欲が見られた分、その後に作られた『PART5』や『PART6』よりは見どころはあったわけだが…)、なんの因果か再び岡田麿里作品に向き合うことになってしまった。
映画の内容としては、少女の運命と世界の命運が直結しており、かつその中で少年少女の恋愛が発展してゆくという、「キミとボク」的な至極純粋なセカイ系アニメ。
この手の作品を観ると「世界がヤバいことになってるってのーに、乳繰り合っとる場合かーっ!!」と一喝したくなるものだが、そこにツッコミを入れるというのも野暮っちゃ野暮か。
それに、いざ世界が終わるとなったらリビドーと性的衝動に突き動かされるのが自然なのかも。それならそれで、もっと山本直樹的なグズグズした性を描くべきなのでは、なんて思ったりもするが、まぁそれは置いておこう。
同じ日常が延々と続く、という設定は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)を思い起こさせるが、作り出された昭和(正確には平成だけど)に閉じ込められるという点は、TVゲーム「十三機兵防衛圏」(2019)からの引用か。
また、モヤの烟る隔絶された過疎地という舞台設定はTVゲーム「ペルソナ4」(2008)やTVアニメ『SSSS.GRIDMAN』(2018)からの影響を強く感じさせる。特に煙を吹き出す謎の工場が街に鎮座している様にはどうしても『フリクリ』(2000-2001)を連想してしまうが、これは本作の副監督を務める平松禎史が『フリクリ』の設定を担当していたことと関係しているのかもしれない。
徐々に滅びてゆく世界とそれを受け入れる人々という図式は小川洋子女史の小説「密やかな結晶」(1994)や村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」(1985)から頂戴したんだろう。
そして、フォトリアルな美術や寂寥感のある人物造形からは新海誠監督のエッセンスを感じずにはいられない。
色々と下敷きにした作品が見え隠れするが、なんやかんや言って一番影響を受けているのは『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-1996)でしょう。主人公の性格や年齢設定など、もうこれほとんど『エヴァ』。
永遠に続く冬という世界設定も、『エヴァ』の常夏という設定を上手くパク…もといオマージュしている。最後で季節が変わるというオチも、それ漫画版「エヴァ」で見ましたよ。
キャラや設定だけならまだしも、執拗なまでに線路を描くという徹底ぶり。そこまでしなくても別にいいんじゃない…😅
平松さんは『エヴァ』シリーズにもメインスタッフとして関わっているし、そこら辺が本作のエヴァっぽさに拍車をかけているのかも知れない。
とまぁ事程左様に、めちゃくちゃ既視感のある設定と物語である。
驚いたのは本作が宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』(2023)にも近似していたこと。公開時期的に考えてもこれは偶然の一致なのだとは思うが、間が悪いというかなんというか…。
とにかく、日本のアニメやゲームはセカイ系が大好き。40年近く、手を替え品を替え描かれ続けてきたセカイ系であるが、さすがにもう出尽くした感が強い。出涸らしとも言えるセカイ系というジャンルで、なかなか目を見張るようなセンス・オブ・ワンダーを生み出すのは難しいのかも知れない。
少なくとも、本作においてはそういった驚きを見ることはできなかった。
話運びの鈍重さやドラマの退屈さなど問題はいくつか見られるが、一番気になるのはクライマックス。
現実から幻の世界に迷い込んだ少女・五実。彼女を現実世界に返すと世界は崩壊してしまう。世界か、それとも少女か?この選択こそが本作のキモである。うーんザ・セカイ系。
…ここがキモの筈なんだけど、結局五実を現実に返しても世界は大丈夫でした!…えっ!?
じゃあそれまでのすったもんだは、五実の失われた10年は一体なんだったのよ💦
いずれ世界は終わるけど、それは今じゃない!って、聞こえはいいけどそりゃ欺瞞に満ちてるよ。世界か少女かを選択しなきゃならないなら、選ばれなかった方の末路はちゃんと描くべき。
大体このクライマックス、登場人物それぞれの思惑があっちやこっちやに散らばりすぎていてとても飲み込みづらい。善人と悪人にきっちり分けろとは言わないけど、もう少し五実解放チームと世界崩壊阻止チームの組分けははっきりさせておいた方が良いのでは?
それにしても、世界崩壊阻止チームの層の薄さよ…。バン一台くらいだったような気がする。敵側がその戦力でクライマックスが盛り上がる訳ないだろ…🌀
本作で描かれる恋愛模様も気持ち悪すぎっ🤮
義理の姉に向かって「良いお母さんで終わらせるつもりはないからキリッ」って、それ倫理的にどうなのよ。
実の娘に向かって「正宗の心は私のものなのよ〜ん」って、それもなんか気持ち悪いし、最後に「わたしの初めての失恋だった…」と五実に呟かせるのも気持ち悪い。
この全編にわたって漂う近親相姦的な匂いは一体…?もう少し竹を割ったような少年少女の純愛劇でよかったんじゃない?
さすが新進気鋭のアニメスタジオ「MAPPA」制作なだけあって、作画のクオリティは素晴らしい。
これだけの素晴らしい技術力を用いて作るのがこんな映画じゃ、スタッフが勿体無いよ。
かなり辛口になった気がするけど、正直これはウーンな作品だと思いますよ😢
…あっ!
そういえばこの映画のタイトルにある「アリス」と「テレス」。
当然この2人が主役なんだと思っていたんだけど…。どっかに登場してたっけ?ボーッとしてる間に見逃したのかしらん?
別に製鉄所が幻を生み出していた訳じゃないし、なんかタイトルズレてるよねこれ。
シナリオには疑問点
試写会で一度観ただけなのでまだ理解しきれていないがこれほど感想を書きたいと思った作品も他にない。好きか嫌いかで言えば星4以上にしたいが批評家を気取り星3.5。
まず映画の世界観、作画、美術、演技は最高レベルだったと思う。特に美術は圧倒的で空と花火は純粋に感動した。作画は常に丁寧で躍動感とリアリティがあった。これほど自然体な演技も珍しい。私は蟲師のような演技が好きなので。ただそれらが革新とまで呼べるかは疑問が残る。キャラクターに関しては睦実が好きだった。ミステリアスで近づくと煙に巻かれる感覚は唯一無二。主人公をこうやってからかうヒロインを待っていた。しかし脚本に関しては疑問点が残る。映像美等についての良さは明白なので以下はシナリオについての感想。
・「アリスとテレスのまぼろし工場」というタイトルの回収がされていない。千と千尋の神隠しみたいにキャッチーな響きにしたかっただけに思う。哲学からインスピレーションを受けたのはわかるが。
・神の正体については殆ど言及がされていなので考察のしようがない。数年間も登場人物たちが神の正体について誰も深く知ろうしたり抵抗しなかったのには違和感がある。真実に迫ろうとして過去に消えた人がいるとか説得力を持たせて欲しい。煙が龍の見た目をしている意味も特にない。佐上は煙の見た目を狼ではなく龍だと訂正しながら「神機狼」と命名していたりよく分からない。
・そもそも主人公の住む町と外の世界が隔絶されている時点でエネルギーや食糧危機問題が起こるはず。時間が止まっていて痛みも感じない世界なら空腹も感じない設定にした方が自然では。
・「成長という変化が許されない世界で変化を望む若者」というストーリーを恋愛を通して描いているが結局のところ変化の本質が成長だったのか結末を見てもいまいちわからない。成長というより元から我慢していた欲望を解放しただけにも見える。
・肉体的な痛みを感じない事と時間が止まっている事との因果関係がわからない。登場人物の変化の象徴が心に恋の痛みを感じる事として度々描かれているが睦実が最後に生きる実感を得たのは心の痛みではなく額からの流血による痛みだった。そこは精神的な痛みと肉体的な痛みの繋がりをもっと巧みに描けなかったのか。五実は終始心の痛みを描いていたので最後はシンクロして欲しかったかも。
・時間や季節が止まっているとはいいつつも作中では10年間ほど製鉄所を人の手で動かしていないから動かないかもというような発言をしていたり時間が止まっているのか動いているのかよくわからない。
・登場人物の内面は思春期の心の機微で描かれているが彼らが起こす行動は突飛で乱暴な物も多く結果として繊細に見えない。不器用というより癇癪や奇行に見える事も多い。
・変化を拒み若者を押さえつける大人の象徴として佐上を描いたのだろうが、彼が変化を拒む理由やきっかけが明記されていない。過去に神の真実に迫ろうとしたり抵抗したことで佐上の友人や仲間が消されたので彼は変化を拒むようになったとか説得力を持たせて欲しい。
・ラジオのパーソナリティーになりたがっていた主人公の友人が消える演出がやや唐突。
・主人公の母と叔父の関係性が描ききれてない。母にもう少し名ゼリフや活躍する場面を与えても良かったのでは。
・五実が現実世界から消えたきっかけが種明かしにしては弱い。ただ夏祭りで親に駄々をこねて放置された結果だった。
・後半で登場する夏祭りのおもちゃはキーアイテムっぽく出てくるがもう少し役割があって欲しかった。映画のラストカットで成長した五実が握りしめていたりとか物語の前半で彼女がそれに似たアイテムに何故か興味を示しその事を正宗が不思議に思うとか。何か夏祭りを示唆する伏線が前半からあっても良かったのでは。
・前半の正宗はいまいち世界に馴染めていない雰囲気に見えるけど友人たちと痛みを感じる遊びで生きる実感を得ていたり寂しさの描き方がぼんやりしている。彼は親にも頼らない性格だからクラスメイトとも距離があった方が自然だったのでは。
・改善策として製鉄所の爆発事故が起きる前の日常をもう少し冒頭や中盤の映像で描くべきだった。そうする事で主人公の家族と叔父、睦実、クラスメイトなども掘り下げれたのでは。
・これらの欠点が美麗な美術、壮大な音楽、後半の展開の勢いで解決しているように見えるが振り返ると粗が目立つ。
散々脚本については指摘したが個人的にはとても好きな映画でありこの作品が劣っていようとも代わりがいないのは明白。わからない事が心地よい自分には終始笑みが止まらない作品だった。奥ゆかしい難解さと説明不足による難解さは混在していたように思えたが。この世界観と睦実というヒロインに出会えた事が何より嬉しい。地獄を見た人間に見透かしたような態度を取れる女に出会ってみたいと常思っていた。十代の恋愛模様とは常未熟で恋愛の域を出ず深くなりにくい題材。それを繰り返される14歳の冬という設定により複雑化させたというのが何よりの功績。
岡田麿里作品の集大成
2023年8月31日 新潟県長岡市 Tジョイ長岡にて
特別試写会に当選し、一足先に鑑賞させて頂きました。
MAPPAと言えば、誰しもが認める「この世界の片隅に」を筆頭に「呪術廻戦」、「進撃の巨人 The Final Season」、「チェンソーマン」等、数々の名作を生み出してきたアニメ制作会社。
そんなMAPPAが初のオリジナル劇場アニメを制作するとなったら期待しかない。
しかも私も大好きな監督・脚本が岡田麿里。
私的に岡田麿里先生の作品では「花咲くいろは」と「鉄血のオルフェンズ」がお気に入り。
タイトルはアリストテレスの名前の由来でもある「最高の目的」ですが、見終わった後、「なるほど!」と呻ってしまいました。
以下、本作の良かった点を記載。
○文句なしの映像美
近年、過酷な現場にも関わらず多くのアニメ制作会社がクオリティの高い作品を提供してくれている。
MAPPAも例外なく舞台となる街並みの背景の作り込みが素晴らしい。
退廃的な製鉄所を始め、登場人物達の部屋や学校等、細かい部分まで描かれている。
○嘘偽りの無い登場人物
流石は岡田麿里とも言うべき、複雑な内面を持つ登場人物達の棲み分けが見事。
アニメは文学的表現の融和性が高い故に現実で聞き慣れない・考え無いであろう台詞の応酬に違和感が無い。
しかも上手い事に舞台は10年間、時間が停止している為、主人公達は中学生のまま。
本来は肉体的成長と精神的成長はイコールだが、肉体が置き去りのまま、精神のみが成長しているので登場人物達の複雑な言動に整合性がある。
特に睦実の内面描写は岡田麿里先生ならでは。
五実や正宗への距離感に悩み、その場面場面で発せられる言葉に心が抉られます。
○生々しい精神
岡田麿里と言えば女性ならではの生々しい性的な言動。
誰しもが持ちうるフェチズムの描写に説得力があり、登場人物達に親近感が湧く。
悪友の笹倉の下ネタだったり、正宗に対する園部の心境だったりとリアリティがある。
特に前記した睦実が岡田麿里先生を投影したような人物描写であり、心がざわつきながら観ていました。
「結局、オスかよ!」とブチ切れて迫る描写や「キスしたくらいでいい気になるな!」とやるせない気持ちで正宗に毒を吐く描写等、かなりインパクトあります。
○舞台設定のバランスが絶妙
複雑な設定に見えるが、そこまで深く考えなくともよい世界観。
超常現象(神様)によって時間が停止した閉鎖空間だけと思えば充分。
この手の作品は神の存在は、都合の良い舞台設定と考えれば良いと思います。
又、食料やエネルギー資源も時間同様に無限に生成されているのも良くある設定なので難しい考えなくても大丈夫です。
この現象の発生原因が、自然(神様)への敬意を欠いた人類社会へのアンチテーゼ...と言うメッセージ性は無いとは思いますが、観客に対して分かり易い表現だった。
○恋と愛と...
本作の重要な行動原理である「恋の衝動」ですが、他の映像作品とは一味違う描写に思えました。
前記したように肉体と精神は共に成長するからこそ人間性が育まれるもの。
しかし舞台は10年も時間が停止している。
主人公の正宗達は、肉体はそのままである。
なので時間が10年経過していようとも周りの大人達からは子供のレッテルが貼られたままである。
そんなアンバランスな精神構造が織り成す恋愛模様は、よくある甘酸っぱいものとは違う。
スイートペインとは、なかなかに言い得て妙である。
○キャラデザが最高
五実や睦実の女性キャラの造形は可愛いし、正宗達男性キャラの造形も嫌悪感が全く感じない。
○分岐された世界
製鉄所の爆発を基点とし現実と幻の2つの世界に分かたれた。
しかし幻の世界は、他作品にあるような分岐した世界線ではなく、蜃気楼のような消える運命の世界。
つまり本作のジャンルとして終末を向かえるセカイ系の側面がある。
終わりを迎える中で様々な人物達の行動に胸を打たれる。
五実の正体を知り、彼女を現実の世界に戻す為に行動する正宗達。
大好きな新田と一緒に居たい為、五実を戻したくない原。
コミュ障ながらも一番人間臭い佐上。
終わりゆく世界だからこそ垣間見える描写が素晴らしい。
○五実と睦実
ラストの列車の上での会話シーンが最高でした。
母と娘による喧嘩、そして深い愛。
五実の「大嫌い!」が深く胸に突き刺さりました。
○幻と世界の行方
最後、あの世界は消えてしまったのか?
それは観客の想像に委ねられるでしょう。
ただ大人になった五実が製鉄所に訪れるラストシーンに涙が止まりませんでした。
殴り書きとも見える拙い文章でしたが、伝えたい事は一つ。
「是非、劇場で観て欲しい!」です。
この作品は紛れもなく岡田麿里先生の集大成。
世の中には岡田麿里先生のように人間関係や自身の内面に悩む人は多い。
そんな人達に一筋の光になる作品です。
色欲に負けた人々。
試写会で鑑賞。
中盤まで盛り上がるシーンはいくつかあったけど、
全体を通してモゾモゾとした恋愛模様に萎えること多数…
10年⁇行方不明だった娘が成長して尚且つウェディング姿で現れたら…両親発狂とかのレベルじゃないだろww
叔父さんも、同級生のハラちゃんも…
幻世界の均衡崩してでも自分の欲求貫き通そうとする“我”がゾワゾワした。
純愛を描きたかったのか、未来はどうとでもなるって言いたかったのかもしれないけど
何を見せたいのかフワッフワしてるから共感もできず終わった。
音楽と描写の巧さはすごかった!
鑑賞後かなり疲れた!!
前半は映画に中々入り込めず眠くなりました。主人公に共感できませんでした。ネタバレと幼女を列車に乗せる為に奮闘するシーンがやりたかったのだと思いますが、前半はもっと明るく楽しくして工場探検と爆発事故までをやり、後半は何かが違う日常といったメリハリがあれば良かったと思います。工場の描写に本作の為にかなりデッサンを重ねたとか、拘りは特に感じませんでした。終始重苦しく、鑑賞後はかなり疲れました。タイトルのアリスとテレスとは作中に出ませんが何だったのでしょうか。幼女の言う「好き」は家族に対するものではなく、主人公に対する恋愛感情になってしまい、ヒロインと女のバトルになるのは違和感がありました。宗教ジジイも、ミストやドラゴンヘッド(漫画の方)等と比べると求心力がなく、取り巻きもいなくてショボいです。主人公たちが何故この姿なのか等、考察を読む気にはなりませんでした。試写会にとりあえず応募しておけ勢の人たちに、打撃を与えた事だけは間違い無いと思います。
全87件中、81~87件目を表示