アリスとテレスのまぼろし工場のレビュー・感想・評価
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アリスとテレスとは?
設定はとても面白かったけど、難しかった。
思春期の揺らぐ気持ちの描き方は上手だなと思ったけど、結局どうなったのかのラストでの答え合わせが足りなくて疑問点が何個も残り、そればかり気になった。
シナリオには疑問点
試写会で一度観ただけなのでまだ理解しきれていないがこれほど感想を書きたいと思った作品も他にない。好きか嫌いかで言えば星4以上にしたいが批評家を気取り星3.5。
まず映画の世界観、作画、美術、演技は最高レベルだったと思う。特に美術は圧倒的で空と花火は純粋に感動した。作画は常に丁寧で躍動感とリアリティがあった。これほど自然体な演技も珍しい。私は蟲師のような演技が好きなので。ただそれらが革新とまで呼べるかは疑問が残る。キャラクターに関しては睦実が好きだった。ミステリアスで近づくと煙に巻かれる感覚は唯一無二。主人公をこうやってからかうヒロインを待っていた。しかし脚本に関しては疑問点が残る。映像美等についての良さは明白なので以下はシナリオについての感想。
・「アリスとテレスのまぼろし工場」というタイトルの回収がされていない。千と千尋の神隠しみたいにキャッチーな響きにしたかっただけに思う。哲学からインスピレーションを受けたのはわかるが。
・神の正体については殆ど言及がされていなので考察のしようがない。数年間も登場人物たちが神の正体について誰も深く知ろうしたり抵抗しなかったのには違和感がある。真実に迫ろうとして過去に消えた人がいるとか説得力を持たせて欲しい。煙が龍の見た目をしている意味も特にない。佐上は煙の見た目を狼ではなく龍だと訂正しながら「神機狼」と命名していたりよく分からない。
・そもそも主人公の住む町と外の世界が隔絶されている時点でエネルギーや食糧危機問題が起こるはず。時間が止まっていて痛みも感じない世界なら空腹も感じない設定にした方が自然では。
・「成長という変化が許されない世界で変化を望む若者」というストーリーを恋愛を通して描いているが結局のところ変化の本質が成長だったのか結末を見てもいまいちわからない。成長というより元から我慢していた欲望を解放しただけにも見える。
・肉体的な痛みを感じない事と時間が止まっている事との因果関係がわからない。登場人物の変化の象徴が心に恋の痛みを感じる事として度々描かれているが睦実が最後に生きる実感を得たのは心の痛みではなく額からの流血による痛みだった。そこは精神的な痛みと肉体的な痛みの繋がりをもっと巧みに描けなかったのか。五実は終始心の痛みを描いていたので最後はシンクロして欲しかったかも。
・時間や季節が止まっているとはいいつつも作中では10年間ほど製鉄所を人の手で動かしていないから動かないかもというような発言をしていたり時間が止まっているのか動いているのかよくわからない。
・登場人物の内面は思春期の心の機微で描かれているが彼らが起こす行動は突飛で乱暴な物も多く結果として繊細に見えない。不器用というより癇癪や奇行に見える事も多い。
・変化を拒み若者を押さえつける大人の象徴として佐上を描いたのだろうが、彼が変化を拒む理由やきっかけが明記されていない。過去に神の真実に迫ろうとしたり抵抗したことで佐上の友人や仲間が消されたので彼は変化を拒むようになったとか説得力を持たせて欲しい。
・ラジオのパーソナリティーになりたがっていた主人公の友人が消える演出がやや唐突。
・主人公の母と叔父の関係性が描ききれてない。母にもう少し名ゼリフや活躍する場面を与えても良かったのでは。
・五実が現実世界から消えたきっかけが種明かしにしては弱い。ただ夏祭りで親に駄々をこねて放置された結果だった。
・後半で登場する夏祭りのおもちゃはキーアイテムっぽく出てくるがもう少し役割があって欲しかった。映画のラストカットで成長した五実が握りしめていたりとか物語の前半で彼女がそれに似たアイテムに何故か興味を示しその事を正宗が不思議に思うとか。何か夏祭りを示唆する伏線が前半からあっても良かったのでは。
・前半の正宗はいまいち世界に馴染めていない雰囲気に見えるけど友人たちと痛みを感じる遊びで生きる実感を得ていたり寂しさの描き方がぼんやりしている。彼は親にも頼らない性格だからクラスメイトとも距離があった方が自然だったのでは。
・改善策として製鉄所の爆発事故が起きる前の日常をもう少し冒頭や中盤の映像で描くべきだった。そうする事で主人公の家族と叔父、睦実、クラスメイトなども掘り下げれたのでは。
・これらの欠点が美麗な美術、壮大な音楽、後半の展開の勢いで解決しているように見えるが振り返ると粗が目立つ。
散々脚本については指摘したが個人的にはとても好きな映画でありこの作品が劣っていようとも代わりがいないのは明白。わからない事が心地よい自分には終始笑みが止まらない作品だった。奥ゆかしい難解さと説明不足による難解さは混在していたように思えたが。この世界観と睦実というヒロインに出会えた事が何より嬉しい。地獄を見た人間に見透かしたような態度を取れる女に出会ってみたいと常思っていた。十代の恋愛模様とは常未熟で恋愛の域を出ず深くなりにくい題材。それを繰り返される14歳の冬という設定により複雑化させたというのが何よりの功績。
岡田麿里作品の集大成
2023年8月31日 新潟県長岡市 Tジョイ長岡にて
特別試写会に当選し、一足先に鑑賞させて頂きました。
MAPPAと言えば、誰しもが認める「この世界の片隅に」を筆頭に「呪術廻戦」、「進撃の巨人 The Final Season」、「チェンソーマン」等、数々の名作を生み出してきたアニメ制作会社。
そんなMAPPAが初のオリジナル劇場アニメを制作するとなったら期待しかない。
しかも私も大好きな監督・脚本が岡田麿里。
私的に岡田麿里先生の作品では「花咲くいろは」と「鉄血のオルフェンズ」がお気に入り。
タイトルはアリストテレスの名前の由来でもある「最高の目的」ですが、見終わった後、「なるほど!」と呻ってしまいました。
以下、本作の良かった点を記載。
○文句なしの映像美
近年、過酷な現場にも関わらず多くのアニメ制作会社がクオリティの高い作品を提供してくれている。
MAPPAも例外なく舞台となる街並みの背景の作り込みが素晴らしい。
退廃的な製鉄所を始め、登場人物達の部屋や学校等、細かい部分まで描かれている。
○嘘偽りの無い登場人物
流石は岡田麿里とも言うべき、複雑な内面を持つ登場人物達の棲み分けが見事。
アニメは文学的表現の融和性が高い故に現実で聞き慣れない・考え無いであろう台詞の応酬に違和感が無い。
しかも上手い事に舞台は10年間、時間が停止している為、主人公達は中学生のまま。
本来は肉体的成長と精神的成長はイコールだが、肉体が置き去りのまま、精神のみが成長しているので登場人物達の複雑な言動に整合性がある。
特に睦実の内面描写は岡田麿里先生ならでは。
五実や正宗への距離感に悩み、その場面場面で発せられる言葉に心が抉られます。
○生々しい精神
岡田麿里と言えば女性ならではの生々しい性的な言動。
誰しもが持ちうるフェチズムの描写に説得力があり、登場人物達に親近感が湧く。
悪友の笹倉の下ネタだったり、正宗に対する園部の心境だったりとリアリティがある。
特に前記した睦実が岡田麿里先生を投影したような人物描写であり、心がざわつきながら観ていました。
「結局、オスかよ!」とブチ切れて迫る描写や「キスしたくらいでいい気になるな!」とやるせない気持ちで正宗に毒を吐く描写等、かなりインパクトあります。
○舞台設定のバランスが絶妙
複雑な設定に見えるが、そこまで深く考えなくともよい世界観。
超常現象(神様)によって時間が停止した閉鎖空間だけと思えば充分。
この手の作品は神の存在は、都合の良い舞台設定と考えれば良いと思います。
又、食料やエネルギー資源も時間同様に無限に生成されているのも良くある設定なので難しい考えなくても大丈夫です。
この現象の発生原因が、自然(神様)への敬意を欠いた人類社会へのアンチテーゼ...と言うメッセージ性は無いとは思いますが、観客に対して分かり易い表現だった。
○恋と愛と...
本作の重要な行動原理である「恋の衝動」ですが、他の映像作品とは一味違う描写に思えました。
前記したように肉体と精神は共に成長するからこそ人間性が育まれるもの。
しかし舞台は10年も時間が停止している。
主人公の正宗達は、肉体はそのままである。
なので時間が10年経過していようとも周りの大人達からは子供のレッテルが貼られたままである。
そんなアンバランスな精神構造が織り成す恋愛模様は、よくある甘酸っぱいものとは違う。
スイートペインとは、なかなかに言い得て妙である。
○キャラデザが最高
五実や睦実の女性キャラの造形は可愛いし、正宗達男性キャラの造形も嫌悪感が全く感じない。
○分岐された世界
製鉄所の爆発を基点とし現実と幻の2つの世界に分かたれた。
しかし幻の世界は、他作品にあるような分岐した世界線ではなく、蜃気楼のような消える運命の世界。
つまり本作のジャンルとして終末を向かえるセカイ系の側面がある。
終わりを迎える中で様々な人物達の行動に胸を打たれる。
五実の正体を知り、彼女を現実の世界に戻す為に行動する正宗達。
大好きな新田と一緒に居たい為、五実を戻したくない原。
コミュ障ながらも一番人間臭い佐上。
終わりゆく世界だからこそ垣間見える描写が素晴らしい。
○五実と睦実
ラストの列車の上での会話シーンが最高でした。
母と娘による喧嘩、そして深い愛。
五実の「大嫌い!」が深く胸に突き刺さりました。
○幻と世界の行方
最後、あの世界は消えてしまったのか?
それは観客の想像に委ねられるでしょう。
ただ大人になった五実が製鉄所に訪れるラストシーンに涙が止まりませんでした。
殴り書きとも見える拙い文章でしたが、伝えたい事は一つ。
「是非、劇場で観て欲しい!」です。
この作品は紛れもなく岡田麿里先生の集大成。
世の中には岡田麿里先生のように人間関係や自身の内面に悩む人は多い。
そんな人達に一筋の光になる作品です。
オリジナル作品にしては楽しめた
1991年の日本の田舎が舞台。
もう少し設定がわかるような描写が欲しかったかなぁ。
ラストもやっつけ感がすごくてモヤモヤが少し残る感じ。
初めてのMAPPAオリジナル作品なら仕方ないかな、という感じ。
絵はとても綺麗でした。
アリスとテレスは出てきませんが、変わることのできない町に閉じ込められてる点は『アリス』を連想させてるのでは?と思います。テレスは何?って感じですが。
色欲に負けた人々。
試写会で鑑賞。
中盤まで盛り上がるシーンはいくつかあったけど、
全体を通してモゾモゾとした恋愛模様に萎えること多数…
10年⁇行方不明だった娘が成長して尚且つウェディング姿で現れたら…両親発狂とかのレベルじゃないだろww
叔父さんも、同級生のハラちゃんも…
幻世界の均衡崩してでも自分の欲求貫き通そうとする“我”がゾワゾワした。
純愛を描きたかったのか、未来はどうとでもなるって言いたかったのかもしれないけど
何を見せたいのかフワッフワしてるから共感もできず終わった。
音楽と描写の巧さはすごかった!
試写会にてあの日の花火を思う
長いタイトルが好きな人。という印象の岡田麿里さん。劇的に刺さってきたわけではないが、「約束の花を〜」が好き。「〜猫をかぶる」「あの日見た〜」はそれなりに。なので、抜群に大好き!では無いのですが、常に気になる人。「空の青さを〜」の評判がココでえらく良いので、いつか観てみたいな。
媒体の異なるいくつかの物語を思い出しながらの鑑賞でしたが、中々に泣かされました。そういう機微を描くのが得意な方なんでしょうね。そこにステージが嵌まればバッチリ。そんな感じでしょうか。岡田麿里作品を観てきた人には避けて通れない一品でした(秩父だし笑)。
鑑賞後かなり疲れた!!
前半は映画に中々入り込めず眠くなりました。主人公に共感できませんでした。ネタバレと幼女を列車に乗せる為に奮闘するシーンがやりたかったのだと思いますが、前半はもっと明るく楽しくして工場探検と爆発事故までをやり、後半は何かが違う日常といったメリハリがあれば良かったと思います。工場の描写に本作の為にかなりデッサンを重ねたとか、拘りは特に感じませんでした。終始重苦しく、鑑賞後はかなり疲れました。タイトルのアリスとテレスとは作中に出ませんが何だったのでしょうか。幼女の言う「好き」は家族に対するものではなく、主人公に対する恋愛感情になってしまい、ヒロインと女のバトルになるのは違和感がありました。宗教ジジイも、ミストやドラゴンヘッド(漫画の方)等と比べると求心力がなく、取り巻きもいなくてショボいです。主人公たちが何故この姿なのか等、考察を読む気にはなりませんでした。試写会にとりあえず応募しておけ勢の人たちに、打撃を与えた事だけは間違い無いと思います。
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