「変化することが正しいという結末でなかったことがこの作品の優しさであ...」アリスとテレスのまぼろし工場 DENICKさんの映画レビュー(感想・評価)
変化することが正しいという結末でなかったことがこの作品の優しさであ...
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変化することが正しいという結末でなかったことがこの作品の優しさであると感じる。
登場人物の生々しさはやはり岡田節が効いていた。つい恥ずかしさに目を背けたくなるものもあるが、そこがまたリアル。中学生ならではの行動(原ちゃんの車のシーン)がまさにそれだ。見ているこっちが恥ずかしくなるところがたまらない。あと園部さんたまりません。セツナレンサ。
成長、変化、進化、を止めた町が舞台なわけだが、登場人物からも見てとれる。特にイツミの幼児のような振る舞いが印象的。人間は学ばなければ人間ではないかのような演出。少しやりすぎな気もするが、あの背格好であの口調だからこそ可愛さもあり不気味さもある。どこへも行けない運転免許の件も好き。
まぼろしの世界が消えるかと思ったが、あえて残したことに優しさが詰まっている。
前に進むためには、自分1人で進むしかない(ムツミ)厳しさを電車の描写で表していた。変化を望むということは現状からの脱却を意味する。未来を掴むためには1人で立ち向かって行かなければならない現実を叩きつける。
しかし、あのまぼろしの世界が消えなかったことで、前に進むことが正しいとは限らないと優しく諭してくれている。止まることもいいんだよと肯定してくれている。最後にムツミが故郷に立ち戻ることでも、たまには戻ってきてもいいと許しをくれる。しかし、まぼろしはまぼろし。いつかは忘れられて消えていく。見ている側が投げかられる大きな問い。
進むための厳しさと、止まることへの許しを与えてくれるそんな作品だ。
個人的には「俺はいいオカンのままでいさせる気はないね」というセリフが一番人間ぽくて好きだった。
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