「作者の言いたかった(と思われる)コトはなんですか。」アリスとテレスのまぼろし工場 赤福餅さんの映画レビュー(感想・評価)
作者の言いたかった(と思われる)コトはなんですか。
『生きる事への選択と自己肯定への賛美』
今作の舞台は、現実と仮想空間のパラレルワールドの二極化ではなく、『生の世界』『死の世界』そして主人公たちのいる『狭間の世界』の三分割ではないかと思いました。
そこではつねに生と死の選択を迫られている。
現実の世界(映画内ではなく)で「今すぐこの世界から消えてしまいたい」と思っている人達はとても多いことと思います。そういった人達は皆『狭間の世界』の住人なのではないでしょうか。そういった人達に「行動を起こして先へ進もうよ、そして生の世界へ行こうよ」というのがテーマかなと思いました。
何か行動を起こすとその世界から消されてしまう。
どうも肯定的には動く気がしない。
だからなにもしない。
自分でなにか積極的に決めた人は狭間に飲み込まれるか、神機狼に喰われてしまう。でもこれらの消された人達はそろって「マイナス思考」で考えていたためであり、成仏させられた(死の世界へ誘い)のかなと思いました。
ラスト、正宗と睦実が結ばれることにより、空間は大きくひび割れ、行き場を失った五実に対して世界は強制的に『生』と『死』の選択を迫リます。選択できる時間は残りわずかとなります。
睦実は五実の母親?であるので愛娘を『生の世界』へと、しっかりと生きるように送り届けます。残された正宗と睦実が消えてしまったかどうかはわかりませんが、無事であったことを願います。二人一緒に…
今回の映画の内容については、中島みゆきさんの楽曲とパンフレットにすべて書かれています。是非とも両方ご覧になることをオススメいたします。
ラストは号泣してしまいました。周りはひいていたと思います。
切なさの中にも優しさにあふれる映画でした。
おわり
追記:
思い付いたことですが、今作では主人公が三人いたのではないでしょうか?
・菊入正宗 ・佐上睦実 ・五実 の三人です。
この三人が入れ替わり立ち替わりマウントを取りに来るので、ストーリーがバラけて見えたり、誰にも感情移入ができなかったりするのではと思います。三人入り乱れてもストーリーは粛々と進んでいっているのが凄いと思いました。おそらくラストシーンがすべての回収になっているのでしょう。
特に睦実の行動が読めないのは、『正宗の立場』で展開を見ているからかも…