「沙紀と五美の神隠し」アリスとテレスのまぼろし工場 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
沙紀と五美の神隠し
基礎設定には惹かれたのですが、不明瞭な部分が多い。
停止した季節や身体に対し、昼夜はあり、天候も気持ちも変化し、行動の影響も残る。ループでもないので食糧などの補充についても不明だが、その辺はまぁ“舞台装置”と割り切れる。
が、時間経過については“変化”に直結する。
「高炉に火を入れるのは10年ぶり」で、五実の成長も凡そ同程度だが、正宗と睦実が子をなすまでの期間がある。現実の2人は40前後に見えたし、時間の流れがズレているのか、五実は遅れて来たのか…
変わらぬことを是とし、心が肉体に引っ張られているとしても、みんな精神年齢が留まりすぎとも感じる。また、最低10年以上も情動を殺し、特に思春期の正宗たちに暴力あるいは性的な暴走が起きないものか。
否定的なことを先に書いたが、作画、とりわけ大きく崩さず心情を伝える表情芝居は見事。
声は俳優起用含めて違和感はないが、MVPは久野ちゃん。
『メイドインアビス』のファプタで突き抜けた感があったが、人外でなくともその力は健在。替えのきかない、独自の立ち位置を築いたと思う。
正直キャラの心情、特に睦実の情緒へは共感どころか理解できない部分が多い。しかし、五実の正体を知っていたと分かると見え方が変わる面もあり、そこは面白い。
別れ際の言葉も、半分は本音だがもう半分は現実に帰すために露悪的になったのだろう。
「“私”は自分を優先するが、“母”である睦実(と正宗)はあなたを無条件に愛するハズだ」と取れる。
何度も「別の存在だ」と言ってきたことが繋がり、エゴと優しさの混在した複雑さに唸った。
続く五実の「大嫌いだから一緒に行かない」には涙。
予告ではほぼ3人の話に終始すると思ってたので、予想外の群像劇に戸惑いもあった。
あの世界で夢を見つけた仙波は真実を知り何を思い、「友達」の言葉に強く反応した佐上の過去に何があったのか。爆発事故以前と、何が変わって何が変わらなかったのか…
刹那でも最高の幸福を求める者と永続的な平穏を優先する者、という単純な2極でもなく、各々に想いがあった。
2クール使っても十分成立するだけのキャラやアイデアが111分に詰め込まれてしまったのは、勿体ないと思う。
ただ、前回のP.A.WORKS同様に「100%の岡田麿里」を制作会社が求めるほどの魅力は確かにある。頭と心をここまで掻き乱す脚本家は他にいない。
いっそのこと、各制作会社でそれぞれの100%を発揮してみてほしいとすら思った。
コメント、共感ありがとうございました!
睦実さんの一連の行動、態度についつい感情的になってしまい、まともなレビューにならないのは、「弱きもの(特に幼児)への配慮のなさ愛情の欠如」が人生経験上、どうにもこうにも許せないという個人的な信条?があるからです。冷静になれば本当、おっしゃる通りなのですけど。
こんばんは。
本作もマリーが濃くて×2、、、
仰る様な不明瞭な部分、きっかけとか動機などの描写が不足していた様に感じました。爆発前後の世界の変化についても理解出来なかったし、五実登場以前だって衝動を抑えられないんじゃ?とも思ったし、変化を望み行動する者がいてもおかしくなかったはず。。
などなど考えましたが、マリーに、睦実に、嘲笑われているようで、蕁麻疹が出そうで、思考ストップしてしまい、物語に巻き込まれていました。
ほんと、やめたくてもやめられない中毒性のあるマリー作品でございました。負け確、ひれ伏すばかりでした。
コメント・共感ありがとうございます。個人的にも尺足らずは感じていました。或いは100分の前後半構成でも良かったかも知れませんが、やはり予算と採算の都合や、2時間弱1本制作でイッパイイッパイだったのかなと思われます。
コメントありがとうございます! uzさんのもすばらしい感想で共感いたしました。まあ睦実も五実に何某かの愛着があるからこそ、最終的に正宗を連れて行ったんでしょうけど、その決断までに何年もかかってるわけで、やっぱりヒロインとしてのヤバ度はかなり高い気が(笑)。別のどなたかの感想で、監督自身の生い立ち(片親、引きこもり)が反映されているとあって、自己肯定とともに、いろいろあったお母さんのことも肯定したかったのかもなあ、とか思いました。