「変化することへの正解と不正解」アリスとテレスのまぼろし工場 こけさんの映画レビュー(感想・評価)
変化することへの正解と不正解
変化を望む子供たちとそれを拒む大人を思春期特有の恋心を上手く交えて描かれた岡田麿里監督の記念すべき第2作品目。
鑑賞後、彼らが選択したことは果たして正しかったのだろうか?という気持ちの良い違和感が芽生えた。結末の良し悪しは顕著に観客の感想が別れるところなので他の意見も気になるところ…。
舞台は小さな町の製鉄所。そこに住んでいる(閉じ込められている)不思議な力を持っている少女を介してファンタジックに物語は進んでいく。この町では変化を望むと神機狼と呼ばれる煙に飲まれてしまう為、変化を望むことを悪とする。岡田監督らしい細やかな人物、感情描写に心を惹かれ、ぽーっとしながら観ていたら物語は見る見るうちに壮大になっていき、ファンタジー要素を存分に含みながら物語は進んでいく。この作品は「変わりたい気持ちは凄く素敵!!」的な面でのズームもあるが、「変わらないこと」へのズームも多くあり、変わりたいという子供たちの気持ちと変わらないことこそ真理という大人の感情の対比が上手く描かれていた。
感情を空で表現し、その変化を「空が割れる」と描いていたのは印象的で良かった。
我々人間の心は空の様に広大であるが、喜怒哀楽激しく、正に空(心)が割れる状況になることもある。その気持ちを誤魔化す為に心に煙をまとわす事もあるだろう。その煙こそ今回の作中で出て来る神機狼である。蜃気楼を文字っているのだと思われるが、まぼろしのメタファーでよく使われることがあるので作品のタイトルと繋がっていた。
着目点として中学生という思春期真っ只中の彼ら、彼女らの恋模様、製鉄所という何でもない舞台で描かれる神機狼というファンタジックな存在、子供たちには芽生えていない大人の意地汚さを是非とも観て欲しい。