アリスとテレスのまぼろし工場のレビュー・感想・評価
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変化しないために努力する町
時間が止まった街を舞台にしていることに、社会に対する批評性が宿る。この作品世界で時が止まったのは、1991年の1月。バブル崩壊の二ヶ月前だ。作中のおじいさんのセリフで言うところの「一番良かった時代」に時が止まったので、この街の人々はその後の平成不況を知らない。
その一番良い時代をなんとか維持しようと、この街では変化・成長することを禁じている。定期的に「自分確認票」を提出させ、変化していないことを確認させる。この町の人々は、変化するために努力するのではなく、「変化しないため」の努力を強いられている。
日本が一番良かった時代で止まってくれていればと思っている年長世代は実際にたくさんいるだろう。しかし、そんなふうに維持する努力をしても、この町のように、徐々にどこかに無理が出てきて、いつかは崩壊することが目に見えている。そんなことに若い世代を巻き込んでいいのかと、この映画は問いかける。
唯一、肉体が変化する五実を元の世界に戻すために、中学生たちが奔走する。大人たちはそれを止めようとする。大人たちの都合で変化を止めている日本社会への痛烈な批判精神が宿る映画だ。
変化を禁じられた世界だけでも面白い設定だが、それを大きく越えた世界にまで挑戦し、新時代到来を予感させる作品
見終わった後の感想を一言でいうと、「アニメーション映画の新時代」を感じられた作品。
14歳の男女、そして謎の少女がカギとなって、突然変異で起きている世界の謎が少しずつ解けていく。
そして、あることをきっかけに物語が大きく動いていくのだが、その3人のパワーバランスが変わり化学反応がどんどん起こり物語の面白さが増していく。
物語の空気感は、どことなく名作「空の青さを知る人よ」を感じる。
主題歌は、脚本と監督を務めた岡田麿里が自らオファーし、中島みゆきが脚本を読んだ上で快諾し作った楽曲「心音」。
「未来へ」と繰り返す際の、あの説得力は中島みゆきにしか出来ないインパクトがあり、これが本作をより印象深いものにしている。
「画」はいつ何時も美しい。通常はキャラクターに目が行きがちだが、カギとなる工場などの背景画も印象的で、妥協を感じさせない映画だった。
例えるなら「千と千尋の神隠し」のリアル版。一家だけでなく町ごと神隠しに遭ったらどうなるのかを描く名作。
「千と千尋の神隠し」では❝一家❞が神隠しに遭いますが、「アリスとテレスのまぼろし工場」では、町を支えている製鉄所の爆発事故によって❝町全体❞が神隠しに遭うことに。
「千と千尋の神隠し」は子供でも楽しめるファンタジー映画でしたが、本作ではリアリティーを追求した大人向けの作品になっている面があります。
ただ、「神隠し」という現象の表現は精緻に構築しないと世界観の崩壊を招いてしまうリスクがあるのですが、本作では世界観の監修をしてもらうことでリアリティーを持って表現することに成功しています。
ある日、突然、社会全体のルールが変わる――そんな前提はこれまでは非現実的に思えましたが、2020年の新型コロナの流行によりリアリティーを感じられるようになった点では、今だからこその作品になっています。
「神隠し」の世界は「前例がない」ので、元に戻った際に問題が生じなくするため「変化をしないよう努めるように!」と方針が出されます。
❝町全体❞が神隠しに遭っているので、それまでとさほど変わらない日常が続くことになります。その一方で、現実社会とは切り離され「取り残された状態」になっているため❝どう生きるか❞を各自が突き付けられるのが、本作ならではの独自性を発揮している点です。
脚本は、そんな主人公らの心理状態などが丁寧に描かれています。さらに作画も精緻によく描かれていて、作品全体のクオリティーは非常に高いです!
その一方で、宣伝する際の2つの点では要検討な感もあります。
まずはタイトル。
本作を見終わっても「アリスとテレス」の意味が判明するわけでもなく、この「ぼんやりと長いタイトル」は、本当にベストだったのか。
次にポスターなどのメイン画像。
パッと見て何が描かれているのかがわかりにくい「ぼんやりとしたポスター画像」は、作品を広く認知させるのを遠ざける面があります。
要はタイトルとメイン画像という❝人をひきつける❞一番大事な初期設定で「人を遠ざける」結果になってしまっているのでは、と思われます。
つまり、見てもらうためのハードルを意図せずに上げてしまっていて、大規模公開にも関わらず公開間近でも映画業界内でさえ作品が認知されていない現実もありました。
埋もれてしまうにはあまりに惜しい意欲作です!
神隠し側の社会
ファンタジーとしての構造の面白さと、それに紐づけられたテーマとが、意外に合致してて面白い
話の構造としては、言ってしまえば神隠し先の世界。
見ている最初は、ほーん、ループものに似たような感じかあ、と。成長や時間が止まっているような。事故でみんな死んでしまって、そこで時間が止まっているような感じか?と。パッセンジャーズの映画に似ている感じかなと想像する。
よく分からない少女や宗教じみた男が登場。
なるほど現実の世界はそれはそれで存在しているのかと分かる。
虚構の世界に少女が迷い込み、それを虚構の世界側から描く。元の世界に戻してあげて終わる。
普通に話として面白い。
そしてそこに紐づけられたテーマ。
完全に今の日本社会(特に地方都市)の衰退の一途と、そこで暮らす若者の閉塞感や絶望を描いている。
変化することを大人に禁じられている子供。
社会の生贄のように閉じ込められている子供。
真に絶望してしまえば消滅してしまう。
希望のない社会でも今を生きていこうと。
アリストテレスがエネルゲイアだと言ってるらしい。
衰退する社会でも打ち上げ花火はあるよと。
セカイ系ゆえに、天気の子と似たような感じ。
置いてけぼり。
最初から最後まで何をやってるのか全く意味がわからなかった。
何を必死にやってんの?
と言う感じで完全に置いてけぼりを喰らった。
時が経たずに日々を過ごし閉じ込められた世界と言うのが何かの揶揄だろうなと思いながら観てたのだけど、
もう自分の頭がアホ過ぎて途中から分かろうとする事も
やめました。
自分のクソガキだった青春から見ても
キャラクターみんながキザで感情移入も出来なかった。
哲学的で好きな作品
作品全体からのメッセージが素晴らしい。
斬新な世界設定とその描写が、新しい概念へと導いてくれた。
パラドクス系青春恋愛ファンタジー。
主人公たちの熱い思いが心を揺さぶる。
BGMが、盛り上がるクライマックスをより一層壮大なシーンにしてくれた。
「好きは、いたい」が印象に残った。
涙は流したけど、不思議な作品
中島みゆきが主題歌を歌っているのが気になって視聴。
何も情報を入れずに見て、クライマックスで涙が出ました。
でも。。。。。視聴後、ここのレビューを見たり、よくよく考えてみると、世界設定が許容範囲を超えて都合が良すぎていると感じました。
・ヒロインの睦美はキツイ性格。。。。友達の園部は可愛そうだし、睦美との関係がよくわからない。。。
・佐上の悪役としてのパワーが弱くて、生理的に気持ちが悪い。。。。
・正宗と睦美のキスシーンに、五美が泣きわなくシーン。。。。。両親のセッ○スを見てしまった子供を連想する生々しさを感じました。。。。
・閉じ込められた世界と現実の世界が交差するので、特に現実世界で娘が神隠しにあい、落ち込んでいる主役二人のほうに共感する部分が多く、そうなると閉じ込められた世界の二人・・・・睦美が同一人物のようでそうではなくて、感情移入が出来ない・・・・
でも、何故涙が出たのか?
映像と音楽の圧倒的な美しさ、声優陣の演技の勢いがそうさせたのだと思います。
2度目を見るとアラが気になるので、1度だけの視聴で。
中島みゆきの「心音」は素晴しかったです。
『現実を生きるのはだれ?』 『IT IS ME♥』なんちゃって
正宗がむつみと縁側で話す現実が、突然夢の中の正宗とむつみの前に現れる。その時開いた夕刊に『憲法改正に向け調査進む』とある。
・憲法改正って現実に於ける挫折?
・仏教が神に変わるって明治維新の廃仏毀釈?
『アリス』は『不思議の国のアリス』
『テレス』は『錆びない ステンレス?』
舞台が『製鉄所』だけに錆びない炭素鋼を象徴して『ステンレス鋼』と言語音の類似性から取ったか?つまり、『錆びない』って『時間が経過しない。』
合わせてアリストテレスは、現実主義を唱えた古代ギリシアの哲学者。
いくつか、いらないキャラクターもあるが、それさえなければ、実に良くできたストーリーだと思う。
やはり、女性が考えたオリジナルのファンタジーだ。きちんと女性の目線で性を描いていて、男性が考えた単純な性と違い大変に奥深く感じる。
テーマとしては『千と千尋の神隠し』のリバースだが、ファンタジーから現実へと誘っている。そして、凄いと感心したのは、むつみの台詞に『貴女は挫折することもあるかも知れないが、それを乗り越え生きなさい』と言葉を結ぶ。だから、不思議な国から脱出するのだ。
傑作だと思う。
残念ながら、
男の性的オルガズムには理解できないだろうな。
『現実を生きるのはだれ?』
『IT IS ME♥』なんてね。
ふと?思い出した。僕は陸奥A子先生の大ファンであった。関係ないか。
この世界観は感情移入が難しい
災厄にみまわれ超存在によりそのまま保存され停滞する世界と、現実との接点になる少女
主題を表現するために無理やり構築された世界が舞台となっているため、感情移入が難しい、もっと現実の世界を主軸において語ったほうが理解、感情移入しやすいのかな?と、思う反面
それじゃ、君の名は?だよな?とも、思ってしまう
無理やりな世界設定を自然に受け入れさせる工夫が必要だと思いました
希望とは、生きている者が見る現実だ
2020年、レバノンの首都ベイルートで大規模な爆発が発生。
原因は、港の倉庫に保管されていた硝酸アンモニウムの杜撰な管理による引火。
死者218人、負傷者7000人以上、被害者30万人以上。ベイルートの町を半壊。
爆発の規模は1キロトン。遠く離れたアメリカの地震計にも観測され、爆風は宇宙空間にまで達したという。
人類が引き起こした爆発としては、核爆発を除いて史上最大。
別に本作はこの事件を題材にした訳ではないが、ふとこの事件を思い出した。
本作の物語もある爆発事件がきっかけ。
それによって変わってしまったもの、変わらないもの…。
時代設定はいつか分からなかったが、現代でないのは確か。昭和の名残りを感じる。Wikipediaによると、1991年頃だという。
巨大な製鉄工場がある町、見伏(みふせ)。
ある冬の日、工場で突如爆発。
その爆発によって、町の全ての出入口が塞がれ、町から出る事が出来なくなった。トンネルも海からもダメ。なら、空は?…と早々に思ったが、後々衝撃の理由が分かる。
時折空を青白い閃光のビビが入り、狼のような姿をした煙がそのビビを埋める。奇妙な現象。
奇妙なのは町や住人たちも。毎日毎日が同じ。例えではなく、文字通り。
町にも住人たちにも一切変化ナシ。あの爆発から幾年か経っている。
まるで時が止まったかのよう。
そうなのだ。あの爆発で町から出られなくなってしまったどころか、時すら止まってしまったのだ…。
岡田麿里の監督前作『さよならの朝に約束の花をかざろう』のような異世界舞台のファンタジーかと思ったが、異世界ではない。異空間ではあるが。
最初は設定を把握するのに一苦労。
キャラは皆日本人。“アリス”と“テレス”は誰…?
これはある意味、言葉遊び。“アリス”と“テレス”ではなく、“アリストテレス”。古代ギリシャの哲学者で、劇中で言葉が引用されている。
「希望とは、目覚めている者が見る夢だ」
脚本作『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』『心が叫びたがってるんだ。』のような少年少女たちのリアルな感情が迸る。
14歳、中学3年生の菊入正宗。
14歳の多感な時期に、この時が止まった町での暮らしは心中察しが付く。
日々をエンジョイしているバカ友やクラスメイトもいるが、正宗は複雑で悩み多き。
画が上手く、密かにイラストレーターを夢見ているが、そもそも町を出られない。大人にもなれない。
この町では変わる事は許されない。絶対的なルール。
もしまた時が動いた時の為に、自分を見失わないようにする為学校で書かされる“自分確認票”。
矛盾すら感じる。そんなものを書いて何になるのか。
何も変わらないのに。町から出られないのに。大人にもなれないのに。
悶々とし、窮屈で、この叫び出したいほどの心や感情を、何処に何に向けたらいいのか…?
正宗には嫌いな人物がいる。クラスメイトの睦実。謎めいていて、学校でも一人でいる事が多い。
「退屈、根こそぎ吹っ飛んじゃうようなの、見せてあげようか」
そう睦実に誘われ、製鉄所へ。そこで出会ったのは…
睦実に似ている一人の少女。姉妹…? 親戚…? いずれでもないようだ。
見た目より幼く、あどけない言動。小さな子供のように無邪気。自由奔放。正宗は少女を“狼”と形容する。“五実”と呼ぶように。
少年少女が出会った時、必ず何かが動く。変わらぬ彼らと時の中で、何かが変わっていく衝動が…。
最初は設定を把握するのにちと難だったが、見ていく内に。
正宗と睦実のボーイ・ミーツ・ガールな青春ラブストーリー。
止まった時の中で、唯一成長する五実。彼女は何者なのか…?
正宗たちが暮らすこの町の真実。
それらが交錯し、謎が明かされていく展開は徐々に引き込まれていく。
まず発端は、ある失恋。クラスメイトの女子が正宗に告白するも、正宗と睦実が付き合ってると思う。心が傷付いた時、少女は光を発して消えた。空にはビビが入り、また煙の狼がそれを修復する。
何が起きても不思議じゃないこの町。おそらく少女が傷付いた事で異常が。それを正す。
平常な時を続けるかのように。信心深い製鉄所職員はそれを“神機狼”と呼び崇める。
動物のように無邪気な五実。顔を舐めてきたり。
ある時正宗は五実を製鉄所の外へ。
久し振りの外なのか、五実ははしゃぐ。空へ手を伸ばし、「もっともっと!」。
すると空間にビビが入り、そこから見えたのは…。
製鉄所。が、場所は同じでも違う。廃工場となり、季節は陽光眩しい夏。
一体、この光景は…?
明かされる事実。知った衝撃。
ビビの向こうに見えた光景は、“本物”の見伏町。“現実”と言った方がいいか。
あの爆発で、現実とは別に出来た見伏町が正宗たちが住んでいる見伏町。
非現実の見伏町なのか、まぼろしの見伏町なのか。それとも、あの爆発で住人たちは死に、ここは生と死の狭間の空間なのか…?
そしてどうやら、この見伏町に終わりが近付いているらしい。
住人たちはパニックに…ならない。至って平静。
そもそも自分たちは現実世界の者たちではない。非現実の自分たちが消えた所で。
これまでと何も変わらぬまま、受け入れる大人たち。
正宗たちは…。
自分たちに何が出来ようか。
大人になれない。何も変わらない。このままいつか消えていくだけ。
ある事を知るまで、大人たちと同じく空虚に受け入れようとしていた。
ある夜、正宗は再びビビの向こうの“現実”を見る。そこには、自分に似た男性と睦実に似た女性が。大人の姿で、どうやら夫婦のようだ。
現実の世界では二人は結ばれている。が、何か悲しげ…。
二人の仲が急接近。口付けを交わす。
それを目撃した五実は「仲間外れ」と泣き叫ぶ。
空間のビビが大きく、至るところに。
そこからまた現実の見伏町の別の光景が。
夏祭り。大人の正宗と睦実と、幼い少女。駄々をこねる少女を二人はわざと置いていこうとすると、少女の姿は忽然と…。
こちらの世界で五実が見つけられた時、“きくいりさき”の名札が。
五実の本名は“菊入沙希”。現実世界からこちらの世界に迷い込んでしまった正宗と睦実の娘であった。
それを知っていた大人たちもいた。製鉄所の数名。その中に、死んだ正宗の父親も。父親の遺した日記に全てが。
現実世界から来たから五実だけ成長する。
この世界では異端の者。彼女の心の動きがこの世界に影響を及ぼす。
信心深い製鉄所職員は五実を“神の女”とし、全てをひた隠した。
正宗は五実を元の世界に戻そうとする。
五実を元の世界に戻した所で何が変わる…?
現実世界の自分たちの為…? この世界の為…? この世界の自分たちの為…?
分からない。何も変わらないかもしれない。
それでも少年少女たちは一つの衝動に突き動かされる時がある。
今が、それだ。
それは大人たちも。大人たちだってただ指を咥えて何もしないなんていられないかった。
消えゆくなら、消えゆくまで生きていく。
正宗の叔父を中心に、ビビの修復を試みる。
各々の目的の為に奮闘する正宗たち、大人たち。
何も変わらないでいたこの世界で、今確かに動き、変わろうとしている…。
岡田麿里の繊細にして大胆な世界観。
寒々とした非現実の見伏町、空を裂く青白い光のビビ、現実の見伏町はまるで別世界のよう。圧巻の映像美。
うっすら新海イズムを感じるが、あちらはもっと万人受けの作風(ユーモアや音楽)に対し、こちらはもっとナイーブ。
少年少女たちの悩み、苦しみ、怒り、悲しみ、そして喜びと温もり。
それら複雑な感情を経て、知るのだ。
あちらの世界でも。こちらの世界でも。
今は変わらなくても。いつか終わりが来ようとも。
今を一瞬一瞬。生きていこうと。
ワケワカメ
この映画では何を伝えたいのか全く理解できなかった
ここのキャラクターの考え方があまりにも希薄過ぎて、義務教育を受けてこなかった人たちが作る街はこんな感じなのかと実感した。
一つ一つの言葉に対ししっかりとした説明もないし、小学生が作った内容でした。
難しい
主人公達がいる世界は、そもそもが幻の世界である。
その世界に偶然に訪れた少女によって、世界の秩序が崩れる始める。
現実とまぼろしと中である世界観がどう捉えればいいのか?が少し難しいと感じた。
少女が主人公たちと関わる中で、嬉しい、悲しい、楽しいという気持ちを手に入れ、そして傷つくいた事を覚える。
この作品の良さを理解するのにもう少し見直す必要があるのかもしれない。
瑞々しいととるか、生々しいととるか
試写会にて鑑賞しました。
閉鎖された町での鬱屈とした感情など色々あったとは思いますが、思春期の性への興味とそれに合わさる感情ばかりが印象に残ってしまいました。
中身は年齢を重ねているにせよ、感情は成長はしていないようなので性に興味を持ち始めた子どもの恋愛を見せられているようで鑑賞中はムズムズしました。可愛らしさはなく、中途半端に大人で子どもで痛い。そういう描写をされたかったのであれば手中に落とされたということですが…
私にはそれが生々しく、言葉悪く言うと気持ち悪いと感じてしまいました。
壮大で美し過ぎる絵空事の街
初秋に観た不思議なアニメのレビューを、結局、物語世界と同じ冬の季節に投稿することになってしまった。映画と同じく、冬でも凍てつく感じではない。
◉風景のこと
まず、校舎を照らす夕陽の影や川沿いの道、廃工場の赤錆びた鉄骨や線路脇の微かな草地のことを書かねばならないと思う。ノスタルジックな景観が、本のページを風がめくるように次々、現れてはひと時わだかまって、また消えた。霞んでいく様も滲んでいく様も、とてつもない美しさと、途方もない儚さ。
逃げ水のような実在感の希薄な景観。それはそうか。まぼろし工場の生産するものと言えばある意味「絵空事」だ。
◉街の人のこと
人々の姿や表情も、何故かノスタルジーたっぷりに見えて仕方なかったのですが、彼らが未来をなくした時空の漂流者なのか、死を忘れた死者なのか、終盤まではっきり分からずに観ていました。五実が祭で迷子になって街に紛れ込むシーンに至って、死に気づかない死者たちの物語だったのだと、一瞬、判った気がした。「天間荘の三姉妹」に登場する三ツ瀬のような。
ところが正宗が列車から飛び降りて街へ戻るのを見て、あぁこの人々は死者ではなくて生者ではあるが、時を失ってすくんだまま霞んでいく存在なのだと気がついた。
正宗と睦実と五実が存在する時制と、三人の関わりが最後まで判りにくかったのは、私にはやはり辛かったのですが。
それにしても、亀裂の向こう側に見えているのが現実であると知ってからの気持ち悪さ。不快感ではなく、不安感。崩壊しているのに、季節は冬のままの一見、穏やかにも見える魔法の街。ハッピーエンドとかバッドエンドとかとは、全然違う収束になるなと思った。全てがなくなる、あるいは初めから何もない。見続けてはならない、目を伏せて生きるのだ。だから見伏?
◉激情のこと
自らの命と引き換えるように、生きる歓喜と苦悩を、激しい叫びと泣き声で表す五実。壊れてしまうまで止まらない、獣みたいな激しく自由な生のままに育っていった。彼女が突き破ろうとする壁が、やたらに眩しかった。
正宗と睦実の執拗なまで、いや執拗を越えた抱擁と口づけを見ているうちに、人を思う熱い気持ちと、人から思われる温かい気持ちは、それっきりに縋りつく哀しい感触はあろうとも、取りあえず生きる糧にはなる、魔法は一瞬のために存在すれば、それで良いのだと感じました。
ただ、他のどんな場所とも隔絶されていたら、経済や社会は成立しないのに、人々は自給自足ではなく生きていた。ここで、街の生活はこうした手段で成り立っていると言う、何でよいから説明が欲しかったかなと、思いました。魔法にも更なる現実感があったら。
濃密な世界観、空気が濃すぎて息ができなくなる、そんな作品。
濃密な世界観で、久々に匂いまで感じられそうな作品でした。
映像の情報量も多い、さすがMAPPA。
変わってはいけない世界。閉じ込められた世界。
でもそこに灯ってしまった微かな熱が、運命を動かしていく。
空気が濃すぎて、息ができなくなるようなそんな作品でした。
これって、リアル中学生が観たらどういう感想を抱くのでしょうか。
大人になってしまった元子供とは、きっと感想が変わってくるんだろうな、と、映画館の3分の1は占めていた10代の子たちを見て思いました。
それにしても、中島みゆきの主題歌が耳から離れなくなる…
宣伝不足が惜しい
工場事故をきっかけに、町ごと外界と隔絶されてしまった世界で生きる少年少女の物語。朝、夜など時間の概念はあるものの、季節はずっと冬のまま、住民は歳をとることも無い世界で自分を見失わないよう生き続ける。
ストーリー自体は、主人公たちの恋愛を主軸にしたジュブナイルでテーマ性よりもキャラクターの感情などに重点がおかれた良作です。
ちなみに作中登場する体操服。女子がブルマなのは作り手の趣味、ではなく時代考証です。彼らは我々が想像したよりはるかに永い時間、閉じ込められていたのです(歳をとらないのは羨ましい、なんていってられません。作中、妊婦さんも登場しますが、彼女はこの世界にいる限り永遠に赤ちゃんと会うことはできないのです)。
映像、音楽、ストーリー、キャラクターすべてが高い水準の作品なのに、宣伝不足のためあまり話題にならなかったのがもったいないです。
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