「無邪気に楽しめるぶっ飛んだ痛快作」土竜の唄 FINAL みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
無邪気に楽しめるぶっ飛んだ痛快作
観終わってスッキリした気分になった。久し振りに無邪気に楽しめる、ぶっ飛んだ痛快エンタメ作品だった。予告編ではそれ程多大な期待はしていなかったが、やはり映画は観てみないと分からない。百聞は一見に如かずである。それなりの料金を払って劇場鑑賞するのだから楽しんで観たい。そういう観客の欲求を十分に満たしてくれる作品である。緻密な作品ではないので、詳細に拘らず野暮は言わずに観て欲しい作品である。
本作の主人公は、潜入捜査官(通称モグラ)・菊川玲二(生田斗真)。彼は、最終任務として、潜入中の反社会的極悪組織・数寄矢会が画策している巨額の麻薬取引を阻止し、ボスの轟秀宝(岩城滉一)を逮捕せよと指令を受ける。彼は、がむしゃらに任務を遂行しようとするが、秀宝の長男であり後継者である・烈雄(鈴木亮平)が大きく立ち憚ってくる・・・。
主役の生田斗真が、従来のイメージを払拭して、不器用で女性に弱いが、がむしゃらに任務を遂行していく主人公をオーバーアクションと勢いのある台詞で熱演している。人間臭く憎めない主人公像を作っている。
この手の作品は、悪党がキーポイントである。本作に登場する悪党のなかでは、やはり、轟秀宝役の岩城滉一、烈雄役の鈴木亮平、秀宝と対峙する日浦匡也役の堤真一が流石の演技で個性的な悪党振りをみせている。秀宝の圧倒的存在感、野心に燃えた烈雄の猛々しさ、昔ながらの義理と人情の世界を守ろうとする日浦の凄味のある台詞と眼光の鋭さが光る。
主人公の恋人役の仲里依紗も効いている。主人公とのやり取りでの硬軟を使い分けた芝居で、演技巧者ぶりを発揮している。
本作には蒼々たる俳優陣が出演しており、各々の個性的な熟練の演技を作品として上手に組み合わせて仕上げているので、分かり易く、誰もが気楽に楽しめる作品になっている。コロナ禍の閉塞感を一掃してくれる。
本作は、厳しい現実を忘れさせてくれる映画の力を実感できる作品である。