「どう考えても」スイング・ステート tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
どう考えても
手抜きとしか言いようがないですね。
キャストに有名どころを揃えてますし、
言わんとするメッセージ性も嫌いじゃないです。
ただ、語り口が雑ですべからく登場人物に感情移入できなかったです。
「政治的スタンスにフラットでありたい」かつ「村人の真意を隠したい」という難易度の高いオーダーに作り手のスキルが追いついてないような…。
結果、誰にも肩入れできないような、変な距離感のキャラ作りとなってしまったのかな、と。
大オチ、ラストに向けた伏線も大して効いてない中では、唐突などんでん返しで「痛快」とはならなかったですね。
町人たちがゲイリーを裏でハメていた…って言葉と回想で示されて、一瞬納得できそうな気がしましたが、すぐさま、そもそも運任せの無謀な賭けにしかなっていないことに気づくわけです。
パワー不足の本作では、力技で観客を誤魔化すことはできないでしょう。
兎にも角にも全編に渡って、クリスクーパーさんが演じるキャラの行動が不可解です。初っ端の演説から始まり、立候補を決意する動機など。「どんでん返し」のための意図的なものだったと、後から振り返れば分かるわけですが、このようにクエスチョンをちりばめることを伏線とは呼べませんよね。
笑わせどころも政治そのもので面白がらせるわけじゃないですよね。
下ネタとしょうもないネタで笑わせてくれるわけです。
ちなみにダイヤルアップ接続のシーン等くだらなすぎて大笑いしました。
でも極論としてギャグシーンを9割カットしても
話の本筋には影響しないでしょう。
このように、どこで間違えてしまったのかは分かりませんが、全体として粗が多すぎるように感じます。
全米でのリリース日から察するに突貫工事を強いられたためにストーリーが練り込み不足となってしまったのでしょうか。
でも、「共和党or民主党に肩入れしたくない」「選挙を茶化して笑い物にしたい」「結局、誰が民の暮らしを考えているの?少なくとも政治屋ではないよね」
みたいなメッセージは伝わりましたし、個人的には同調したいです。
ただし、そういうメッセージをセリフで言わせるあたり、品がないというか、真っ直ぐにセリフで言わせるなら映画という媒体を使う必要ないですよね。
(まあ、本国アメリカのように配信スルーで、スマホイジりながらで鑑賞するなら文句言いませんが)
良いことをセリフで言う=良い映画ではないのですよ。
テーマに同調したいと申しましたが、「民主党•共和党支持者だーれも傷つかず、村人にとってはハッピーエンド、四方丸く収まった、めでたしめでたし」なんて、現実を見れば、やはり欺瞞的と言わざるを得ないです。
作品としての出来があんまりなので、政治を馬鹿にすることにすら成功していないですよね。
生ぬるいと言うか。
もっと政治家をコテンパンにやっつけてもいいのでは?
何よりも、本作を観て「さすが、アメリカは進んでる」って思う日本の人達が多いことに恐ろしさを感じますよ。
商業的に成功した映画(例えばアメコミ映画とか)でも、もっとエッジの効いた作品はあるわけで…
やっぱり、昨年の夏に消費されるためだけの映画を、この時期にわざわざ…というのは否めないです。
しかもアメリカで評価を得たわけでもない謎作品を…
ただ、この失敗に懲りずに、こういう変な映画でも良いのでジャンジャン持ってきて、映画館で流して欲しいです。