アーミー・オブ・シーブズのレビュー・感想・評価
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僕の人生を変えたのはゾンビではなく、彼女
ザック・スナイダーの“リターン・オブ・ゾンビ”作『アーミー・オブ・ザ・デッド』の前日譚。
本作での主人公は、セバスティアン!
…って、誰だったっけ?
開幕シーン登場の青年を見て思い出した。
ああ、居た居た!
実戦経験に乏しく、超ビビりでへなちょこ。
でも金庫の前に立つと目をキラキラさせる、天才金庫破り。
ユニークで愛されキャラだったよね。
確かあちらでは“ディーター”と名乗っていた。
しかし幾らユニークな愛されキャラとは言え、彼主人公で作品一本成り立つのか…?
スナイダーはプロデュースに回り、演じたマティアス・シュヴァイクフファーが監督兼任。
聞く所によると、ゾンビも出ないらしい。(ちょこっとだけカメオ的出演)
明らかなスケールダウン…。
ところがどっこい! これが面白かった!
ドイツで銀行員として、退屈で同じ毎日を繰り返すディーター。本名は、セバスティアン・名字は発音出来ない。
どれくらい退屈かと言うと、TVのニュースでアメリカでゾンビ出現!…と報じているのに、大して関心ないくらい。(一応あの事件は起こり始めている)
ある日セバスティアンは、動画に昔々の鍵前職人ハンス・ワーグナーがリアルド・ワーグナーのオペラ『ニーベルングの指輪』に因んで作った“ラインゴルト”“ワルキューレ”“ジークフリート”“神々の黄昏”の伝説の4つの金庫の話をアップし、それがまだ世界の何処かにある事を付け加える。
言うまでもなく、ちとヲタクくん…。
暫くしたら何と! 一人が視聴。とある場所へ案内指示。
そこは大勢の観客盛り上がる中開催される金庫破りの“腕比べ”。
すでに他のチャレンジャーがスタンバイ。セバスティアンは訳も分からぬままスタート。
遅れは取ったが、金庫を開ける。腕比べは3つ。
面白いのは、最初はキョドってたセバスティアン。腕比べは難易度は増していくが、彼は寧ろ余裕。
勿論優勝。そんな彼に、一人の美女が近付く…。
彼女の名は、グウェン。
実は、セバスティアンの動画の視聴者一人も彼をあの腕比べに誘ったのも彼女。
彼女曰く、世界的強盗団のメンバーで、彼女はスリ。
セバスティアンの腕をスカウトし、驚くべき計画を打ち明けられる。何故なら、
ワーグナーの“ラインゴルト”“ワルキューレ”“ジークフリート”の在り処を見つけ、それを破ろうというのだ…!
とは言っても、犯罪一つやった事の無い小市民。しかもビビり。
出来る訳ない。
が、金庫破りの血が騒ぐ。
退屈な毎日を変えたい。
一念発起。
グウェンとの出会いは、そう、全てを変えた…。
隠れ家。
チーム紹介。
コリーナ。天才ハッカー。『パイレーツ・オブ・カリビアン2』を公開前に流出したのは彼女!
ロルフ。ドライバー。『60セカンズ』のニコラス・ケイジより10秒速い!
ブラッド・ケイジ。名前はアノとアノ人、風貌はアノ人みたいなリアル・アクション・ヒーローな自称リーダー。性格は悪し。
…これだけ。
一応個性的っちゃあ個性的だけど、オリジナルより小規模。
『オーシャンズ11』に比べ華にも欠ける。
こんなんで歴史的金庫破りに挑める…!?
ゾンビ・ホラー×金庫破りクライム・アクションだったオリジナルに対し、本作は金庫破りクライム・サスペンス一本に。
面白味が薄まれている所か、クライム・ムービーとしての醍醐味充分。
どうも結束力無さそうなチーム。が、いざ作戦始まると各々才覚発揮。
最初に挑む“ラインゴルト”は肩慣らし。犯罪初心者のセバスティアンにとっては汗だくだが、“説明”してる間に終了。
チームの仲も良好になるが、セバスティアンとグウェンの関係を疑うブラッドがセバスティアンへ憎悪する。
世界中で強盗をしていたグウェンとブラッド。その頃から2人を追っていたインターポールのドラクロワ。世界中がゾンビで大騒ぎの中、“ラインゴルト”が破られた事で再び2人に目を向ける。
次に挑む“ワルキューレ”。難易度も警備もアップ。
そう簡単に破れず。が、何とか破った! 地元警察やインターポールから追われ、バンに乗り込んだと思った時、セバスティアンの手を離したブラッド…!
元々セバスティアンは捨てゴマで、切り捨てる予定だったが、それは“ジークフリート”の後。
残ったチームも分裂。すでに大金手に入れているブラッド/ロルフと、最後の“ジークフリート”に挑みたいグウェン/コリーナ。
彼女らは何とか無事生還したセバスティアンに謝罪し、“ジークフリート”に挑む!
無論そこに居たのは彼らだけではない。
セバスティアンたちvs逮捕執念のドラクロワvsケリを付けようとするブラッドたち。
三つ巴の戦いの行方は…?
そして最難関の金庫“ジークフリート”は破れるのか…!?
スケールがデカく、ド派手なアクション大作だったオリジナルより確かに小規模だが、見せ場は充分にあり。
金庫破りのシーンはハラハラドキドキ。『何だコレ!?ミステリー』の開かずの金庫が好きなので、重ね合わせて見ちゃった。
裏切られての自転車チェイス、クライマックスのカーチェイス(その車内でジークフリート破り)。
コメディ要素はオリジナルよりたっぷり。
その引き受け役、相変わらずユニーク過ぎるセバスティアンのキャラ。
破る前の“道具温め”。
破りしながら『ニーベルングの指輪』のストーリー解説。
グウェン役のナタリー・エマニュエルの魅力。
作品、自身、キャスト諸々の美味しい所を引き出したシュヴァイクフファーの娯楽手腕も上々。
本作はクライム・ムービーであると同時に、セバスティアンとグウェンのラブコメでもある。
クールなグウェンとヘタレなセバスティアン。
セバスティアンは高嶺の花の彼女に仄かに想いを寄せるが、グウェンは全く関心ナシ。
しかし、作戦を続ける内に次第に…。
ドラクロワに追い詰められた2人。その時のグウェンの決断。
逃亡用のボートにあった2人の為のパスポート。
新たな名は、ディーター。
僕の人生を変えてくれた女性(ひと)。
最後は切なくもピュアなラブストーリーとして締め括る。
EDエピソード。
鍵前師となったセバスティアンの元に、ごっつい傭兵男とその娘がやって来る。
2人はある設計図を見せる。
それは、いつの日かグウェンと破る事を誓った伝説中の伝説、“神々の黄昏”。
破れるかって?
愛する人との約束に誓って、
さあ、超最難関の金庫破り(とゾンビ)に挑め!
(先に見ちゃったけどね)
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