「ほのぼのとしたコメディ」ローラとふたりの兄 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
ほのぼのとしたコメディ
ほのぼのとしたコメディである。主役の三兄妹は別々に住んでいて、会うのはたいてい両親の墓の前である。そこで互いに近況を伝え合う。それぞれの人間関係を築いたり壊したりするが、一方で兄妹の繋がりはとても大切にしている。といってもそこはフランス映画だ。家族主義的な価値観を礼賛する作品ではない。
3人とも一生懸命に生きているのだが、上手くいかないことだらけである。それに自分の都合を優先して兄妹の気持ちを疎かにするところが多々ある。長男の嫁を含めた女性たちは言葉尻に敏感すぎて、それが原因で屡々揉めることになるのだが、裏を返せば男たちが言葉遣いに鈍感すぎるということでもある。
大した事件も起きず、時間の経過も早かったり遅かったりして、なんとも自分勝手な映画ではあるが、総じて、フランス人の人生に対する余裕のようなものがそこはかとなく感じられる。次男のピエールには出来すぎの息子ロミュアルドがいて、人生の幅を広げてくれているのだが、ピエール自身はそれに気づいていない。ロミュが母親ではなく父親といることを選んだ理由が何となく見えてくるのも面白い。
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