「特に良いとも悪いとも」TANG タング 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
特に良いとも悪いとも
最初の上空から街を俯瞰して、運搬用ドローンが飛んでいるような場面は当然CGだと思います。
でも、その後人間が出てくるようになってもオモチャみたいな外観の家を出入りしていました。
あるいは、停留所にバスが発着する場面で、「このバスはさすがにホンモノだよなぁ?」と思っても、「でもなんか塗装面のザラつきみたいなものもなくやけにきれいで、ホンモノじゃないのかなぁ?」とか、ロボットの登場しない場面でも「これはCG合成なのか、それとも実写なのか」と感じたし、終盤の宮古島の馬場教授を訪ねていく場面で、健とタングが歩く道の両脇では植物(サトウキビ?)が風で激しく揺れているのに、健の着ている赤い上着や髪は少ししか風を受けていなくて「これ、スタジオで撮って後で背景合成したのかな?」みたいな、作品全体を通して最初から最後まで「このお話、どこまでCGでどこから実写なんだ?」という、現実味を感じさせない映像になっていました。
そのおかげでおとぎ話的な印象を受けました。
ジェームスが恐怖を感じたというAIロボットを使った軍事利用の実験を回想する場面はアニメ調の映像に切り替えて生々しさを感じさせないようになっていました。
だから、ちっとも現実味がなく、研修医をしていた頃に瀕死の父を目の前に怖くなって何もできなかった健が、失敗した過去の記憶に苦しみながらもタングの修理をするような、きっと感動するべきであろう場面でもなんだか作り話めいてあまり感動しませんでした。
現実的な部分を排除しておとぎ話のように仕上げてあるのだろうと思いますが、せっかくなら泣かせてほしかったです。
特別良くも悪くもないし、お金払って観に行って損をしたとも思わないけれど、一方で「たいした内容でもなかったな」とも思います。