「ワンアイデア※ネタバレ有」オールド よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
ワンアイデア※ネタバレ有
素晴らしかった。
ここまで怖いとは思っていなかった。
といっても化け物が出てきたりするわけではない。
この映画をホラーたらしめているのはただ一つのアイデアだけ。
「30分で1年分老化するビーチに複数の人間を置き去りにしたらどうなるか」
この老化が早まるというだけで実に様々な恐怖を味合わせてくれる。
一例をあげよう。
物語の終盤愛娘が殺されたと勘違いした母親は子供達(とはいえこの時点で30代ぐらいにはなっているのだが)を追いかける。
その時に転んだりして骨を折る。
このビーチでは細胞が活性化されてるので傷をつけられてもすぐ治る。
すなわち骨を折ってもすぐつながるのだが、変な方向に向いたままくっついてしまうのだ。
これによって異形の化け物が誕生する。
もちろん化け物的なスリラーシーンはここだけなのだが、老化が早まるというアイデアから化け物スリラー方面にも展開できる事を示していて色々可能性を感じさせる。
こんなネタが随所に仕込まれているのだが、中でも僕が恐怖だったのは“妊娠”だ。
物語の中盤。
異変に皆が気付き始めた頃、成長した子供たちが性行為をしてしまう描写がある。(もちろん別家庭間の子供同士でやった事だし直接的描写はないのだが。)
このシーンを見た時僕は「なるほどな。時間が早まるとすぐに思春期が来てこんなムズムズする展開になるのか」と半ばニヤニヤしながら見ていた。
しかし、これが次のシーンで恐怖に変わる。
大人たちが子供にいなくなったことに気づき探し回る。
無事子供達は見つかったのだが、女の子のお腹は膨らんでいた。
そう、妊娠していたのだ。
一年が30分の島だから出産まではあっという間。
ここから修羅場を迎える。
何が起きたかを瞬時に理解した大人達
何が起きたかを理解していない子供達
すぐに出産の準備に入る女性たち
男の子を落ち着かせようとする男の子の父親
現実逃避を始める心の病を抱えた女の子の父親
これから何が起こるのかを理解し怯える女の子
これから何が起こるのかを理解し混乱する男の子
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
前のシーンでの甘酸っぱいフリがきいていたからこそこの地獄絵図がとても恐ろしかった。
普段の世界でもあり得ることがこのビーチでは恐怖でしかない。
本当に脱帽である。
最後になって最初の方での伏線が一気に回収されていく感じもたまらない。
是非見てほしい一作