「イランの法制度はどうなってるの?」英雄の証明 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
イランの法制度はどうなってるの?
これまでのファルハディ作品と同様に、小市民が主役の心理サスペンス。説明調のシーンやセリフがないので、最初は人間関係の把握にとまどうが、段々とそれぞれの関係性やキャラクターがわかってきて、ドラマに引き込まれていく。
それにしても、イランの法制度はどうなっているのだろうか。借金を返済して示談が成立したら刑務所から出られるって、民事と刑事が一緒なの?受刑中でも休暇があって、外泊できるって?ただ、そのようなイラン社会の仕組みだからこそあり得る虚実のドラマを作り上げているので、ある意味エキゾチック感覚で楽しむことはできた。拾った金貨を警察に届けない、囚人の減刑のためにチャリティするといったことも。
ファルハディ作品では、物語の鍵となる肝心な部分がわざと描かれず、その周りを登場人物たちが右往左往するさまが描かれる。だから、スッキリしないし、カタルシスもない。しかし、的確なカット割りと滑らかなカメラワークで、ついつい時間を忘れて見入ってしまう。あと、子供が印象的。今作では特にそこがクローズアップされていた。
すべて見終わると、主人公の彼女が拾ったという金貨そのものが幻だったような気がする。
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