「名誉と世間体の為に…」英雄の証明 RT65さんの映画レビュー(感想・評価)
名誉と世間体の為に…
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〝最善の策が有りそうなのに常に誤った選択をしてしまう映画〟の新たなマスターピース。
「原案」とかでクレジットしてちょっとお金も払っとけば、本人もファルハディ作品に名前が!と喜んだだろうしお互いに名誉も保たれただろうに、なんで変な念書なんか書かせるかね………あれ?
いやしかし実際の所、観ている間じゅうファルハディの例の盗作問題に対する対応のマズさばかり考えてしまって、現実が映画を侵食しているなぁと思わずには居られなかった。
なぜ作品で指摘している事を、自分も現実にやってしまうのだろうか?それも含めて非常に興味深い味わいに成っている。
全員の行動に一理有り(〝今まで悪い事ばかりやってた奴が一つだけ善行を行っただけで何故評価されるのか、それなら取り立てて善行はやらなくても悪い事を全くしない自分の方が偉い〟と言ってた元義理の父親の意見とか至極真っ当)、また同時に全員の行動に悪手も有って観ていて非常に混乱する。常に「この子の為に」とか「お前の為に」と言われ、実際利用されている吃音症の息子がただただ可哀想。
休暇で刑務所を出た主人公が、階段をズーーーーーーーーっと登って義理の兄に会いに行ったり、主人公の恋人が階段を降りて主人公に会いに来たりといった気の利いた演出や、最後の、釈放されて出て行きパートナーと一緒にバスに乗って去っていく男の姿を、建物の入り口で切り取ってずっと見せる所など良い画も多くて、ファルハディの作品の中では、個人的に今作が一番好きだし面白かったな。
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