「いかに生きるべきか、そして死ぬべきか... 最期まで自分らしくありたい頑固者の父を死出の旅へ送り出す娘たちの苦悩と惜別の映画」すべてうまくいきますように O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
いかに生きるべきか、そして死ぬべきか... 最期まで自分らしくありたい頑固者の父を死出の旅へ送り出す娘たちの苦悩と惜別の映画
脳卒中で病院に緊急搬送された高齢男性が自分の身体の状態に鑑みて"自分らしさを保っている内に人生を終えたい"と安楽死を望み、その頑固な父の最期の切なる願いを託された中年姉妹とその家族が彼と向き合う様を描いたヒューマンドラマ。
殊更に家族の思い出を反芻したり、父を翻意させようと尽力するようなセンチメンタルな描写は抑えられており、あくまで身体が不自由となった父が死出の旅に出るまでの本人とその周辺の生活を時にユーモアを交えつつ淡々と描いているのが印象的です。
"安楽死"というとどうしても悲痛で重厚なテーマとして扱われる傾向が強く、"自死"を描くからには哀しみや諦めの悲愴感がドラマとして漂うものですが、一風変わったアプローチの作品ゆえに取っつきやすく、何より誰しもがいずれ彼我の立場となることを避けられない問題であるため、なおのこと高齢による問題の別種の捉え方として意義深い作品だと思います。
"安楽死"というかなりセンシティブな内容を扱った作品ではありますが、それを額面そのままにセンシティブなものとして観客に突きつけるのではなく、人としてのユーモアを保ったまま生を全うする一つの選択として描いているのが造り手側の何よりのメッセージでしょう。
ガチガチに法制化して制度として整えてしまうと有象無象の圧力として作用してしまうのでそれは決して望ましくありませんが、選択肢として存在することで却って一日一日を大事に自分らしく生きられる、という側面はあるのかもしれません。
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