3つの鍵のレビュー・感想・評価
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ありふれたトラブルでズタズタに傷つく3つの家族の10年を見つめるイタリア産『マグノリア』
原題はTre Piani。ローマのとあるアパートでそれぞれ1階、2階、3階に住む3つの家族が飲酒運転、認知症、孤独といった様々な要因に揺さぶられる物語。申し開きのしようもない過ちに打ちひしがれる登場人物たちの狼狽ぶりを真正面から容赦なく描写する辺りにラテンの赤裸々がギラついていて、トラブルへの対処の仕方を少し間違えただけで誰もがズタズタに傷ついていく様は本当に痛々しいですが、そこに微風のように訪れる救いが『マグノリア』のエンディングのように全てを静かに洗い流して胸がスッとしました。
思いがけない祝祭空間に癒された
何かあるとすぐ「5年後」のテロップが出て、
時空を越えてしまうのはご愛嬌として、
3家族がそれぞれの新しい門出を同じタイミングで迎える際に
思いがけず通り過ぎる祝祭空間に癒された。
数少ないイタリア映画の思い出から引っ張り出すなら、
ロッセリーニの「イタリア旅行」のクライマックスにも通じるし、
フェリーニを生んだ国なのだーと再認識されられた。
あーいうの好き。
あれがなかったら、☆2.5-3くらいかな〜。
万人受けする顔面があまりいなくて、顔見てるだけで疲れた。
今年鑑賞した映画で一番の作品かもしれない。
本命映画(靴ひものロンド)の上映時間と上手く合わず、仕方なく観た映画だった。が、これが大当たりした。正直、「トッブガン マーベリック」が一番だが、娯楽映画だ。真面目な映画では、今のところ一番感心した。
冒頭の交通事故から、一気に作品世界に連れて行く。主要人物達が一同に揃い、この先どうなるのだろうと期待を抱かせる。思わぬ展開もあり、気を反らせない。原作の小説があるみたいだ。もっと詳しく人物の過去をそこでは描かれていると推測するが、映画では長くなるだけだ。まぁ、そこがちょっと不満だけど。
テーマは親子関係だ。これは永遠のテーマである。そこに現代の問題(認知症、精神病、性的迫害)を絡ませる。感心した。但し、結末には不満だ。人生、そんなに上手くいくだろうか。地味な映画であるが、分かる人には受けると思う。
もめごと三昧
ローマのとあるアパートメントで暮らす4つの家族の3つの話を描いたオムニバス。
貴基本的にご近所さんということで顔見知りぐらいの関係性はあるけれど、別々の3つの事情で巻き起こるドラマを行ったり来たりしながらみせていく。
始まって約10分であらすじに記されている設定の概ねが出尽くす怒濤の序盤。
「一人の女性が亡くなる」は通りすがりの歩行者思いっきり跳ね飛ばしてるし、ひとつの事故を切っ掛けにと言っているけれど、事故が切っ掛けになっているのは1家族だけで突っ込まれた家すらそれとは関係ないドラマだし。
そんな中で巻き起こっていくイタリアでは認知症は認知されていないのか?なあたおた旦那と家族、人を殺してしまったことを反省しもしないし自活できてもいないのにな勘違いガキンチョと家族、夫が単身赴任の中で出産して育児を始めて不安で仕方ないロンリーママをみせていき、ちょっとやり過ぎ感はあるけれど見入ってしまう。
そして5年後、そしてそして10年後…。
日本人的感覚からしたら10年経ってやっと?だったり、そのタイミング?だったり、まだそんなこと?だったりなズレを感じまくるところはあったけれど、話自体は面白かった。
シーンやセリフに合わせたかの様に劇場の灯りが2回ほど点灯したんだけれど、演出ではないですよね?
3つの家族の親バカ日誌
イタリアって、飲酒運転の死亡事故が判決から出所迄5年で、レイプ裁判の一審判決まで5年かかるのでは犯罪は減りませんね!
イタリアでは家族心理を見事に描いた作品で評価されたのでしょうが、ド日本人の私には退屈な内容の映画でした。
群像劇
なかなか眠くなる映画です。
基本的に音楽かからない静かな映画で、セリフ以外で音が鳴ってる時間が少ないです。
飲み物を飲んだり、ちょっとした音を立てるのに、すごい気を遣って疲れました。
何が言いたいんだろう?と退屈に感じ、睡魔に襲われながら観賞、
最後まで観ると、そう終わるか!と、話の着地点が良かったです。
でも、邦題が合ってない(苦笑)
風が吹いている。
2021年。ナンニ・モレッティ監督。ローマのそこそこいいマンションに住む3組の中流家庭の家族。それぞれの家族に起こるそれぞれの事件が家族の形を変えていく、という話。
親の過剰な期待から壊れていく息子(交通事故)、小さな娘と老いていく隣人を信じられない父(公園での迷子)、孤独のなかの出産におびえる妻(妄想)。3組の家庭が抱える切実な問題とそれぞれが抱える秘密が、長い年月の間に変形しながら、解決したり、こじれたりする。
いくつもの死といくつもの出産があり、そこに変化が生まれる。特に長年連れ添った裁判官の夫が死んだあと、哀しみつつも解放感を感じずにはいられない妻の姿が美しい。それまで風通しの悪かったマンションの部屋には強い風が吹いている。
花柄のワンピース🌹
モレッティ監督の映画はほんの数本しか見ていないのでこの監督らしいとか、らしくないとかはわからない。でも脚本と演出と俳優が素晴らしくこれからどうなるんだろうとドキドキして最後まで見尽くした。映画を見た幸福感に満たされた。
三家族とは別の群像で印象的だったのは、移民の人達のために服や靴などの日常品を中古で受け取る活動をするボランティアの人達。移民達と共に食事もする。一方で移民に対して「イタリアから出ていけ!」と抗議して暴力をふるう人々も居る。映画終盤では街の通りを賑やかにアルゼンチン・タンゴを踊るたくさんのカップル達。このシーンの前に車の中のラジオから、ひっそり内緒で踊ろうというアナウンスが流れたがそれがこのタンゴに繋がるのか!と感動した。「移民、ボランティア、みんなでタンゴ」はオープンでにこやかで、内側に籠もっている三家族と対比して置かれていて爽やかだった。
三つの家族の男性(夫であり父親でもある)はこだわりと思い込みの激しさ、自分を客観視しない・できない怠惰、自分中心主義が共通していてそれは多かれ少なかれ世界中の殆どの男性に当てはまる気がする。頭が堅いというか融通が効かないというか自分が一番だと思ってる。そういう男性性は女性も持っているが男性社会の中では女性は自分の「マッチョ」を出すことは普通はしないしできない。
ドーラは服選びの際も夫の意見通りにしていたんだろう。高いけれど一番気に入った花柄のワンピースを買って身に付けた彼女は「私達=夫と私」でなく「私=自分」の道を歩むことにした。その彼女の思いを息子のアンドレアはワンピースを見てすぐ分かった。母親は自分の側に居てくれる人だと知っていたから。親になるのは簡単でも親であるのは難しい。でも親も子どもだった頃があって親や叔父叔母や祖父母に愛されていた。母親みたいにはなりたくない、は娘がよく思う定番だ。女性は人間に目を向ける傾向が強いから過去のことをよく思い出して反芻する方だと思う。前にも進むが後ろもよく振り返る。臆病なのでなくて、どこから自分は来てどんな経験をして今に至り、自分が子どもだった時の目から見た親や祖父母の人生をちょっと参考にしながら自分のこれからの人生を思い描く能力があるんじゃないかと思う。
空港でにこやかに両親に手を振ってスペインへ向かうフランチェスカを見て、同じように空港のゲートのあちらへ夢と期待で胸膨らませて海外に向かった昔を思い出した。親はさびしそうな顔をしていたのかも知れないがまるで気にかけなかった。どれだけ親が自分を気にかけ心配してくれたかは、何通も来たエアメールやたまの国際電話で後に知ることになったけれど。家族は鬱陶しいけれど繋がっていて先に行く。子どもの成長は親を励まし親の命があと数年であったとしても生きる力を与えてくれる。胸がきりきりと痛くなる映画だった。見てよかった。
4家族
2022年8月29日
映画 #3つの鍵 (2021年)鑑賞
1つのアパートに住む3組の家族が抱えるそれぞれの闇
妄執、誘惑、孤独、妄想と不穏な流れが同時並行に起こっていますが、それを上手く一つの作品に仕上げています
そして、ラストの希望が救われます
@FansVoiceJP さん試写会ありがとうございます
ナンニ・モレッティ監督による群像劇
オンライン試写会にて鑑賞。
冒頭、暴走する自動車が蛇行運転をして女性を凄いスピードで轢いた挙句、家に突っ込むという驚きの事件から始まる。なんと衝撃的なオープニング!
そして、自動車が突っ込んだ家がアパートであり、そこに住む3組の家族の愛情・苦痛・断絶などを描きながら、それぞれの「家族」の閉塞感だけでなく、「家族どうしが繋がるか?」と思えば「コミュニティの機能不全」も描いた見事な映画であった。
ただ、そうした3つのドラマを描きながらも、息子のことを思い続ける母親の愛情あふれる姿、「幼かった娘に悪いことは起こらなかったのか?」と心配し続ける父親、出稼ぎ夫が不在の中で産んだ娘を育てようとする精神不安定な母親など、いろんな人物が描かれる群像劇となっており、「よく、これだけの出演者を丁寧に描きながら、5年、10年に亘る大河ドラマ的な映画を構築したものだ…」と思わされる。
そして、誰もが「必死」に生きているからこそ、その必死さを追い詰めた結果「極端な行動」を取る人もいて、起伏に富んだドラマであった。
エピソードが盛りだくさんなので、それらを記すのは困難だが、自ら出演もしているナンニ・モレッティ監督、この映画を観終わった時には「希望」を与えてくれるような気持ちだったというのが伝わって来た。
ただ、登場人物がやたらと多く、時間の飛躍もあったりして、全体的に散漫な印象を受ける映画に見えてしまったのは惜しい気がした。
群像劇なので已む無しなのかも知れないが、何らかの感動させてくれるところも欲しかったと思う。
<映倫No.49225>
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