「花柄のワンピース🌹」3つの鍵 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
花柄のワンピース🌹
モレッティ監督の映画はほんの数本しか見ていないのでこの監督らしいとか、らしくないとかはわからない。でも脚本と演出と俳優が素晴らしくこれからどうなるんだろうとドキドキして最後まで見尽くした。映画を見た幸福感に満たされた。
三家族とは別の群像で印象的だったのは、移民の人達のために服や靴などの日常品を中古で受け取る活動をするボランティアの人達。移民達と共に食事もする。一方で移民に対して「イタリアから出ていけ!」と抗議して暴力をふるう人々も居る。映画終盤では街の通りを賑やかにアルゼンチン・タンゴを踊るたくさんのカップル達。このシーンの前に車の中のラジオから、ひっそり内緒で踊ろうというアナウンスが流れたがそれがこのタンゴに繋がるのか!と感動した。「移民、ボランティア、みんなでタンゴ」はオープンでにこやかで、内側に籠もっている三家族と対比して置かれていて爽やかだった。
三つの家族の男性(夫であり父親でもある)はこだわりと思い込みの激しさ、自分を客観視しない・できない怠惰、自分中心主義が共通していてそれは多かれ少なかれ世界中の殆どの男性に当てはまる気がする。頭が堅いというか融通が効かないというか自分が一番だと思ってる。そういう男性性は女性も持っているが男性社会の中では女性は自分の「マッチョ」を出すことは普通はしないしできない。
ドーラは服選びの際も夫の意見通りにしていたんだろう。高いけれど一番気に入った花柄のワンピースを買って身に付けた彼女は「私達=夫と私」でなく「私=自分」の道を歩むことにした。その彼女の思いを息子のアンドレアはワンピースを見てすぐ分かった。母親は自分の側に居てくれる人だと知っていたから。親になるのは簡単でも親であるのは難しい。でも親も子どもだった頃があって親や叔父叔母や祖父母に愛されていた。母親みたいにはなりたくない、は娘がよく思う定番だ。女性は人間に目を向ける傾向が強いから過去のことをよく思い出して反芻する方だと思う。前にも進むが後ろもよく振り返る。臆病なのでなくて、どこから自分は来てどんな経験をして今に至り、自分が子どもだった時の目から見た親や祖父母の人生をちょっと参考にしながら自分のこれからの人生を思い描く能力があるんじゃないかと思う。
空港でにこやかに両親に手を振ってスペインへ向かうフランチェスカを見て、同じように空港のゲートのあちらへ夢と期待で胸膨らませて海外に向かった昔を思い出した。親はさびしそうな顔をしていたのかも知れないがまるで気にかけなかった。どれだけ親が自分を気にかけ心配してくれたかは、何通も来たエアメールやたまの国際電話で後に知ることになったけれど。家族は鬱陶しいけれど繋がっていて先に行く。子どもの成長は親を励まし親の命があと数年であったとしても生きる力を与えてくれる。胸がきりきりと痛くなる映画だった。見てよかった。
コメントありがとうございます。
他の方の評価があまり高くなく、難しすぎるのかなと思いました。
新潮社から原作が訳されているので、読んでみるのはありかなと思いましたが、読まねばならぬ本がいっぱいあって、今は無理です。
育児放棄をする二児の母に、芥川龍之介が被りました。彼も母と同じように精神病が発病することを恐れていた人です。黒いカラスが不気味でした。
レビューに書いたように、結末は不満です。原作通りならば仕方がありません。そんなにうまく人生が収まるだろうかと私は思ってしまうからです。
劇場間の移動ですでに靴がびしょびしょです。
やっぱり照明は劇場のトラブルですよね。
点灯した途端「明るくなった」ってセリフがあったりしたので、えっ!?となりましたw