「【”脳内爆発音症候群。そして妄想の終焉。”今作は、一人の女性教授が夜に聞いた”ドン!”と響く音の謎を追う中で辿り着いた、自らのルーツを知る過程を幻想的に描いた静謐な作品である。】」MEMORIA メモリア NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”脳内爆発音症候群。そして妄想の終焉。”今作は、一人の女性教授が夜に聞いた”ドン!”と響く音の謎を追う中で辿り着いた、自らのルーツを知る過程を幻想的に描いた静謐な作品である。】
ー 私には気にはなっているのだが、観賞を見送っている作品が幾つかある。
今作もそうであった。理由は明白で、数年前に今作の監督であるアビチャッポン・ウィーラセクタンの前作でパルムドール受賞作でもある「ブンミおじさんさんの森」が公共放送のBSで放映された際に、ナント寝てしまったからである。
マア、ソファに寝っ転がっていたのもイケないのだが、映画館では寝た事もWCで中座した事も無い(本当です。)私にとっては、驚きの出来事だったからである。
だが、配信終了日が近づいてきて、漸くフライヤーを手元に置き観賞した訳である。ー
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・結論から書くと、非常に面白かった作品である。
冒頭、ジェシカ(ティルダ・スィントン)が夜、ベッドで横になっていると、”ドン!”と言う音がし、彼女は起き上がるのである。
・彼女はその後、大学のミキサー室で”エルナン”という青年に、その音を創り出して貰うのである。その後彼女が青年に”どんなバンドなの?”と聞くと彼は”妄想の終焉”です、と答えるのである。
だが、翌日に訪れると、誰も”エルナン”の事を知らないというのである。
・その後、彼女は病院に入院していた妹を見舞った時に知り合った考古学の教授のアグネスに、トンネルの中で発見された3000年前の女性の骨を見せられて、惹かれる様にその人骨の発掘現場を訪れるのである。
・彼女はそこの近くの川が流れる脇で、魚の鱗を取っている”エルナン”という男に会うのである。彼女は少し驚くが、その男と、夢や記憶に付いて語り合うのである。
そして、”エルナン”は草地に横たわるのである。目は開けたまま。まるで死んでいるようだが、少し経つと彼は目覚めるのである。
・ジェシカは更に”エルナン”の部屋に行くと、そこにいた事がある感覚に襲われるのである。それを告げると、”エルナン”はジェシカの手を自分の手首に乗せて”私はハードディスクで、貴女はアンテナだ。”と答えると、ジェシカには且つて聞いた事がある人声や物音が聴こえてくるのである。
■そして、屋外では鯨の様な形態をした宇宙船が”ドン!”と言う音と共に、飛び立っていくのである。
ここからは、私の推論であるがジェシカは3000年前に地球に来た一族の末裔であり、彼女が辿った旅路は、彼女自身のルーツを探るモノであったのではないかと思った訳である。
因みにフライヤーによると、”脳内爆発音症候群”とは、アビチャッポン・ウィーラセクタン監督が、且つて患ったモノだそうである。
<今作は、一人の女性教授が夜に聞いた”ドン!”と響く音の謎を追う中で辿り着いた、自らのルーツを知る過程を幻想的に描いた静謐な作品なのである。>
