パリ13区のレビュー・感想・評価
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【巴里13区に住む30歳前後の複数の男女の孤独、不安により性、愛を求めながら毀誉褒貶する姿を描いた群像劇。無機質な複数の愛が、有機的な姿に変容していく様が、丁寧に描かれた作品である。】
ー 今作のメイン舞台、巴里13区は劇中にも映し出されているように、再開発による高層マンションが並び、アジア系、アフリカ系移民が多く暮らす、現代の巴里を象徴する地区である。
今作は、そこに住むもしくは地方から上京して来た30歳前後の男女を描いた群像劇である。そして、ノエミ・メルランの美しき肢体故にR-18作品です・・。-
◆感想
・コールセンターで働く台湾系フランス人女性エミリー(ルーシー・チャン)。彼女の部屋は元々は祖母の部屋だったが、広いのでルーム・シェアで家賃を賄っている。
そんな彼女の元にルームシェアを希望するアフリカ系フランス人の男性高校教師カミーユ(マキタ・サンバ)がやって来る。
ー え、知らない男とルームシェアするの!で、あっと言う間に情交する二人。まるで挨拶代わりのように・・。ウーム、フランス人だなあ・・。ジュ・テーム・・。けれど、二人は恋人になる訳でなくって・・。ー
・エミリーが顧客勧誘の際に、不適切な言葉を使ったという理由で、アッサリ馘首されるシーン。
ー 確かにあの言葉は不適切だが、30日前通告とか労働者を守る法律はないのかな・・。-
・地方から10数年ぶりに復学したノラ(ノエミ・メルラン:鑑賞中、”どこかで観た女優さんだなあ・・と悶々としていたが、カミーユとの激しい情交シーンを見て、”「燃ゆる女の肖像」の油絵の画家を演じた人だ!”と気付く。我ながら、思い出すタイミングがウーム・・なのだがお許し願いたい・・。)が、大学のパーティに金髪のウイッグを被って出かけたら、アダルトサイトで稼ぐアンバー・スウィート(ジョニー・ベス)に間違われて・・。
ー ”あんまり、似てないよね・・、皆酔っているから?”と思っていたら、学友たちの嫌がらせだった・・。
けれども、久しぶりに町中で会った同級生の女性にノラが見舞ったグーパンチは見事。やられっぱなしじゃ駄目だよね!ー
・ノラはそんな大学の同級生に見切りをつけて、高校教師を一時期止めて高資格(多分、アグレガシオンだと思う。)を取得するために不動産業をしているカミーユの求人募集に来る。
ー で、再び”あっと言う間”に二人は身体を重ねる・・。それにしても、皆、職をドンドン変えるんだね。-
・素敵だなあ、と思ったのは、ノラがアンバー・スウィートのサイトにアクセスして、彼女のヌードを見る訳ではなくイロイロと話しをするうちに(ドンドン課金されるので)、アンバー・スウィートが”スカイプで話しましょ。”と提案し、二人が素の姿で、幼き頃からの写真を見せ合ったり、寝顔を見るシーンである。
ー 二人が初めて”実像”に会った公園で、ノラが”素の黒髪の”アンバー・スウィートと出会った途端気を失って、アンバー・スウィートが抱きかかえるシーン。あのキスシーンは美しかった・・。-
・エミリーに久しぶりに電話して来たカミーユ。エミリーは相変わらず憎まれ口を叩くが・・。
エミリーは一度だけお婆さんを見舞うが痴呆になっていたお婆さんは彼女が分からない。髪を切ってあげるエミリー。だが、その後は新しくルームシェアの募集に来た女性に言う。
”家賃を安くするから、近くの養護施設にいる私のお婆さんに、時々会いに行って・・。”
ー お婆さんは気になるが、自分を分かって貰えない辛さからかなあ・・。-
・そして、エミリーのお婆さんが亡くなって、カミーユが彼女に掛けた言葉”僕も参列しようか・・”
一度は断るエミリーだが・・。
ー 葬儀に二人で出かける際、カミーユがエミリーにコールで、2回言った愛の言葉。
嬉しそうなエミリーの顔・・。-
<今作は、巴里13区に住む30歳前後の男女の、孤独、不安により性、愛を求め毀誉褒貶する姿を描いた群像劇である。
無機質な複数の愛が、有機的な姿に変容していく様が、丁寧に描かれた作品でもある。>
表裏一体のタペストリー
ミニシアター系が好きな面倒くさい映画ファンが好きそうなヤツでしょ?なんて思ってましたすんません。完敗です。20年位前に観ていたらもっとグラグラしてたかもなぁ。50歳にもなるとそこそこ俯瞰して観られたので、侵食はそこまでじゃなかったかな(苦笑)。
予告編の音楽が好きで鑑賞に至りましたが、上手いですね。そして絶妙な嫌悪感。これが終始続くので当初は「しまった…」と思いましたが、絶妙な牽引力で最後まで引っ張られて、エンドロールには撃沈しておりました。カミーユの事は最後まであんまり好きになれませんでしたけどね。
引っ掛かるポイントのアリナシで受け取り方は大分違いそうですが、体験する価値はあるんじゃないかなー?って思いました。デートではやめたほうが良いけども(笑)。
追記:勢いで書いた気持ち悪い感想の補足をば…。女性陣の演技が素敵過ぎました。微細な感情の起伏がそこにあって、美しい肢体と共に釘付けさせて頂けました。
よーわからん
きっと頭の良い人には理解できるのでしょうけど、頭の悪い自分にはサッパリな映画でした。
倒れてキスしてって、何なん?
中国人の過剰性欲者で性格もスタイルも悪い女、何なん?
その最悪女が好きな男も、何なん?
だから、何なん?
おフランス映画はやっぱ性に合わないわ。
本当の愛とは何か…。
コールセンターで働く台湾系の女の子、高校教師を辞め不動産屋になった黒人男、アダルト系サイトの有名人に間違われ、それが原因で大学を辞めたアラサー女、パリに生きる3人の人生が交錯し、愛を求め合い、本当の愛とは何かに気付く…、という感じのドラマではあるが、実際には、雰囲気で観る映画と言えるだろう。
特にモノクロではなく、カラーであっても問題ないが、アーティスティックな雰囲気を出したいんだとは思う。
パリの13区が、どのような雰囲気かはわからないし、パリに住む若者が、この映画に出てきたような考え方なのかもわからない。
性的な描写が多めの、R18+映画を観たい方は、劇場でご覧ください。
セリーヌ・シアマが脚本なので見てみた
人種が異なるパリ13区に暮らすミレニアル世代の人たちの恋愛事情
セックスのシーンが多そうだなと思ったしその通りだったけど、シアマが脚本のせいか女性から見ても嫌な感じはなく、スッと入り込め安心して観られた。
あの決めつけや思い込みで嘘がSNSでどんどん拡散していく様子が恐ろしかった。
僅かな時間でも好きな人と触れ合い、身も心も踊り出したくなるエミリーのあの気持ちや、
本当の自分に向き合い、緊張と安堵と喜びといろんな感情が一度に押し寄せてきた時のノラのあの感じは、
誰もがとても心にしみる素晴らしいシーンだと思う。
グローバル都市に佇む個人
高層住宅が立ち並び、大学も近く、中華街もあるパリの13区で、中国系、アフリカ系を含む、いずれも都会でフランス的知性を身につけながら、仕事には恵まれず、それぞれに私生活に悩みを抱えた若い男女が出会い、身体でも繋がりながら、微妙な心のすれ違いから別れたり思い出したりするストーリー。都会の教養ある人たちはなんと面倒くさい人間関係なのだろうとやきもきもするが、刹那的なようでたまらなく愛おしい感情の往き来に感じ入り、フランス映画って、やっぱりこうだよな、と思わせてくれる。藤原帰一先生もツイートで書いておられたが、「ベルファスト」といい、この映画といい、ここに来て敢えて白黒で撮った秀作が続けて見られるのはなぜだろう。白黒のほうが感情が豊かに出るのか、それだけでなく、裸体もカラー以上に美しく見える気さえする。
ただsexするだけの映画
試写会で観ましたががっかりでした。オシャレなパリのオシャレな恋愛ストーリーだと思っていたのでがっかりでした。「ふーん、それで?」…とうい印象で。何も残らなかった。あまりのつまらなさに途中退出されている人もいました。時間の無駄でした。
大人ならではのつながり
若い時の恋愛ではない、大人ならではの、さまざまな、事情が、絡み合うそんな恋愛模様。
お洒落なパリのなかでも、寂しさを感じながら生活し、常に誰かを求めている。
求めるものを不器用に探していく、そんな物語。
いまいちヒロインに共感できないが、共感できる日が来るのだろうか。
音楽すごく好き。
パリ13区がどのようなところか、全く予備知識なく。モノクロの工場夜景のような風景は、パリのイメージとは少しちがう。
登場人物はみんな魅力的。エミリーは、姉から、パーソナリティ障害じゃない?って思われてるくらい、自己中だし、面倒くさい性格だけど、なんか、愛おしい。エミリーが職場で軽やかにステップ踏むように踊るところは、とっても良かった!
ポルノ女優とノラのやりとりも、なんか、安らいだ。
最後のジュテーム、ほんまに?って、ちょっと上手くいきすぎな気がしたので、評価は⭐️3つに留めました。
苦手な要素がたくさんでも悪くない感想なのは群像劇だから?
フランス映画でモノクロ。自分の苦手な要素が多いのだが、なぜか予告編が気になってしまい鑑賞することに。観てみると群像劇であることがわかった。これならいける。
ルームメイトとして知り合いセックスするようになる男女と、30歳を過ぎてから大学に復学した女性の物語。
2人の女性が黒人のカミーユと繰り広げる恋物語って感じなのだが、この女性2人がどうにも厄介だった。とりあえずセックスって考え方なのにカミーユにハマっていくエミリーと、カミーユから相当好かれているのにごちゃごちゃと考え受け入れることをためらうノラ。どちらも結構厄介な女性(ノラは自分でも厄介な女って自戒していたし)だが、カミーユはいい距離感で接していく。なんかモテる男の見本だな。
セックスのシーンは多いのだが、そんなにやらしくない。モノクロだからというのもあるが、セックスにいたるプロセスが軽いからというのも理由かもしれない。
ものすごい山場が待っているわけではないし、衝撃的な結末でもない。少し意外だったけど。でも、群像劇としてはこんな感じでも平気。悪くなかった。モノクロのフランス映画でも群像劇なら大丈夫ってことがわかった(ジャック・オディアールが俺の映画だからだよ!って叱ってきそうだけど)。
体でつながるのは簡単でも心でつながるのは難しい
夢物語じゃない人間らしさが詰まっていた気がする、それはときに厄介でときに愛しい。
セックスでしか関係を築けない女性と、ある体験からセックスに対して恐怖心が芽生え誰かと関係を築くことに消極的になっている女性。対照的な2人の女性と、そばにある愛に(気づけないというよりは)蓋をして遠ざけていた男性。白黒の世界がグラフィックノベルの世界をしっかりと、色がないからこそ、鮮明に生き生きと描いていた。エイドリアン・トミネの原作をジャック・オディアールが映画化するという最高すぎる組み合わせで楽しみにしていた本作!しっかりと原作の空気やエイドリアン・トミネらしさが出ていたと思う。主人公女性の絵が頭に浮かんできそうなほど。
あなたの性生活は?一時的なつながり。現代らしい活発な13区の多様性の中に、リアルな感情の揺れ動きや人間観察・描写があった。だからこその最後のあの美しく晴れやかな、少し報われたような気持ち。みんな素直になれたらどれだけいいだろうか…。お互いを本当に理解するのには時間がかかるけど、その回り道も決して意味がないわけじゃない。一歩一歩と歩み寄ってはまた少し離れてくっつく。
ダイバーシティ映画という分類があるのなら…
正直に白状します。
お前❗️モテ過ぎだろっ‼️
とやっかんでしまいました。
アジア系、アフリカ系、ヨーロッパ系(という言い方があるのかないのか分かりませんが、アジア、アフリカときたらこう並べるのかなという感じです、急にユダヤ系とかアングロサクソン系とかいうのも並列的ではないし、ノラの民族的出自は映画ではよく分からないので)完全制覇です。それだけやっておいて、今さら〝本当の愛〟ですか?と言いたくなります。
こんなこと言ってる自分は、やはり〝小さい男〟なんだなぁとちょっとガッカリ…😂
一方で、理性的であろうと努力しているもうひとりの自分は、それほどスッキリとは回収されないこの奇妙な群像劇がとても新鮮で気持ちよく楽しむことができました。
仕事、家族、友人関係などに求めてしまう、自分勝手な居心地の良さへの渇望と葛藤など、現代社会の発展途上の人間(若者だけとは限らない)が抱えるモヤモヤが自然体(に見えるように)で描かれています。普通に働いて、普通にもがいて、普通に悩んでる人なら誰もが共感を覚えてしまう、そんな映画だと思います。
なんとなく
フランス映画を観る度に、彼らの価値観や倫理観が理解できず、彼らの感情が飲み込めないでいたが、この映画を観てなんとなく理解できた気がする。
彼らもまた僕等と同じように迷い、悩み、ピッタリする相手を探し続けているのだと。
ラストシーンで映される壁掛け電話の本体と受話器のように、ピッタリした相手を得られたあの笑顔が、あの電話機がすべてを現しているのだろう…
わがままで曖昧な我々の存在を思う傑作
戦火のスリランカ🇱🇰から逃れてフランス🇫🇷に渡った疑似家族をシリアスに描いた2015年の傑作「ディーパンの闘い」でカンヌを制したジャック・オーディアール。
前作「ゴールデン・リバー」は何とゴールドラッシュ時代のザ・アメリカン🇺🇸な西部劇。アウェイだったろうに、ジョン・C・ライリーの代表作となる素晴らしい作品だった。
そして現代のパリ🇫🇷を舞台にした今作は、若者の孤独、不安、恋、セックス、心の振れなどを捉えた普遍的な傑作。何より愛おしい作品だった。
イエローの女子。
台湾系のエリートな家族の次女。
認知症で施設に入った祖母のマンションをルームシェア。
アフリカ系ブラックの男性。
2Wのセックス。
二人の女性と比べ健康が際立つが、それさえ絶対的なものではない。
ボルドーから来たホワイトの女性。
義理の叔父との10年間の関係。
三十過ぎて復学した大学での誹謗中傷。
3人の人生の交錯。
緊張した。
105分の中で考えられる最高のハッピーエンド。
しかしそれとて束の間。
わがままで曖昧な我々の存在をも考えることになる秀逸な構造。
今年のベストの一本だろう。
性愛トライアングル+1
アフリカ系イケメン青年、華僑のドラ娘、メンヘラ系女性の3人が織りなす人間模様。モノクローム映像のバックでは、シンセを使ったスタイリッシュな音楽が流れる。睡眠導入系アート作品の匂いがプンプンするが、なかなかどうして、ずっと興味が持続するし、先が読めない。
ジュテームの国だけあって、セックスと愛情の使い分けが皆さんハッキリしてらっしゃる。日本人の僕には到底吐けない言葉も堂々と言ってのけるあたりは感心してしまう。
第二幕の冒頭でオンラインセクシータレントが強烈に登場する。この強烈さがフリになって真のジュテームとは何なのかを考えさせてくれる。そして、なぜか心が癒されてしまった。
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