「パリの曇り空の下、男と女は歩いて行く」パリ13区 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
パリの曇り空の下、男と女は歩いて行く
久方ぶりのR18と知って、結構大きなモヤモヤを隠さないでシアターへ赴きました。
◉性の営みに堰はない
「つながるのは簡単なのに愛し合うのはむずかしい」のキャッチ通り、エミリーとカミーユはルームシェア相手と言うだけで、つながる。いくら何でも早すぎだろう。しかし営みの回数で喧嘩別れしたり、新しい職場ではカミーユがノラに下心を見透かされたり。
なるほど性的快楽も、大事に大事にして生きてゆくような人生観を味わう作品なんだなと納得しました。
しかし、出会い系で男を漁るエミリーが画面で躍動し始めてから、快楽が大事どころか、これは快楽のみの人生じゃないか。満ち足りたエミリーがワルツを踊るように、レストランに戻ってきて、これも悪いことではないなと思いつつも、呆れました。
◉風に吹かれて
ノラはカミーユに心を開きながらも、うまく営むことが出来ずにアンバー・スゥイートとの愛の方へ大きく傾いてしまう。アンバーが実は男と言うことがあっても、もの凄く素敵だったと思います。
ノラを失った心の空虚を埋めるために、エミリーとよりを戻そうとするカミーユ。出会い系のエミリーのド派手な乱行を知っても、彼女に近づいていく。ビルの屋上の風に吹かれながら、屈託なく話す二人を見ていると、そう言う生き方なんだと思えばよいのかと、もう一度納得。
祖母の葬儀に参列するために2階であたふた準備をしているエミリーに、電話が掛かって来る。下でカミーユが待っていてくれたのだ。その時のエミリーのほんの少し涙ぐむような微笑が、堪らなく可愛らしく見えてしまった。
であるならば、ここまでの筋書きが奔放どころか無法過ぎやしないかと、私は思ったのでした。