「この映像、彼女の決断に、ずっと心を委ねていたくなる」わたしは最悪。 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
この映像、彼女の決断に、ずっと心を委ねていたくなる
幕開けから新鮮な勢いを感じる。綴られるのは主人公ユリヤがいかに心変わりの速い人物かってこと。「他にもっとふさわしいものがあるのでは?」と考えだすともう止まらない。自分の気持ちに素直であるがゆえに、その行動はとても迅速。まさに突風が吹くかのように過去を捨て、新たなものを掴もうとする。トリアー監督の視座はそんなユリヤのことを一切批判もしないし、むしろ研ぎ澄まされた映像で彼女のあらゆる心の機微を祝福しているかのよう。性に関するオープンな会話にしても、吐き出した煙の交換にしても、悪趣味や下品に傾くことのないトリアー的視点が機能。決して蔑んだり、道徳的になったり、「ほれ見たことか」と上から目線で抑えつけようともしないし、静止したオスロの街を駆け抜ける際の高揚感、疾走感なんて観る者をナチュラルに惹きつける至高の場面だ。ユリヤの人生、決断、それを映し撮るトリアーの映像にずっと心を委ねていたい一作である。
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