コンパートメント No.6のレビュー・感想・評価
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この映画のどこを切り取るか。
電車の旅、旅の醍醐味、旅あるある、思い出、盗難、出会い、ロシアとフィンランド、男性視点、女性視点・・・。どこを切り取るかで、話が尽きない。
個人的には、旅の主役は女性だけど、物語の主人公は男性であるように感じたところにユニークさを感じた。その上で、ビデオカメラなんてなくても、それぞれの思い出が、それぞれ互いの心に刻まれるだろうことを、ラストのシーンに余韻として残す演出が憎らしく思った。
そして、アルルからカルカッソンヌまでの車中で、前に座ってた少女が(アジア人を初めて見たのか)座席の上から私を覗いてはニヤニヤしながら、また座席に隠れるのを何度も繰り返している最中に、ダメな日本の単語を伝えたら、少女が真似をしてくれたことを懐かしく思った。その少女は今はきっと30歳前後だと。
かわいいひと/タイタニックでた~
無味無臭
ちょい久々のレイトショーへ。意外と客入りがあるのは賞を多く受賞しているからですかね。
結構評判良いなと思っていましたが、全部観終わってもなんじゃこりゃ?っていう感想が最初から最後まで付き纏っていました。
列車の中で進むロードムービーっていうのは観たことないなと思いましたが、観たことないのも納得で面白くならないというのがありました。全体的に下車する以外は景色が変わらないのもあって、かったるいなと思ってしまいました。自分の思い描くロードムービーは徒歩や自転車や車で展開が目まぐるしく回る作品が多いので、そっちを想像したっていうのもありました。
同室の男・リョーハの第一印象が最悪だったのに、後半になるにつれて主人公ラウラが何故か惹かれていくのが謎でした。そりゃ一晩泊めてもらったり、盗まれてカメラのことを思ってくれたり、ペトログリフを観にいくのを手伝って貰ったりとそういうシーンはありますが、それを超える悪行(主にダルい絡みだったり、悪態をついたり、同室に見知らぬ男が入ってきたら彼氏かのように拗ねたり)があったので、こいつにそんな情熱的なキスなんてするか?と共感できなかったのもハマれなかった要因です。
他のキャラもそこまで良い奴が多いわけじゃないのも引っかかって、車掌はだいぶぶっきらぼうですし、ギター男はなんかひょうきんでカメラ盗んでいきますし、宿泊したホテルのスタッフも接客態度は最悪ですしで、周りの環境もアレなのが今作に小さな不快感を生んだんだと思います。リョーハがスタッフに対してちょい威圧的なのも苦手だなと思いました。お婆ちゃんは良い人でした。
雪で2人がじゃれあってる映像を見て、一体何を観せられているんだ?と思いました。雪国の美しさも岩面彫刻の美しさも何も感じませんでしたし、音楽に頼りきって後は放ってしまった終盤も個人的には受け入れられませんでした。
感じる人には感じるものがある作品だと思いますが、ジャンル映画を好む自分には相性が悪かったです。こういう作品も観ねば…!とは思いつつも、どうにも当たらないがために避けてしまっている現状です。去年やった「ロスバンド」は大好きなんですけどね…。
鑑賞日 2/20
鑑賞時間 20:55〜22:50
座席 G-4
凍てついた世界の美しいロードムービー
登場人物たちの心の旅を映し取った佳作。内面の旅を終えた後に芽生えた希望はとても美しく、鑑賞する私たちも心が洗われるような良い気分に浸れる。時間を止めたペテログリフという過去の遺物を求める儚い一生の人間の心の触れ合いの危うさと美しさ。人と人がつながるのはどれだけ素晴らしく、価値のあるものだろうか!「Fuck you」に「I love you」の意味を肯定的に持たせたら、人本来の言葉を越えた繋がり「愛」が出来上がる。「袖振り合う多生の縁」とは言い得て妙だ。
ちょっと変わったロードムービー
傲慢で無知なロシア人が実は良いところもあって、旅の途中で恋をすることで良い人になって行くという内容。時代設定がよく分からないが携帯電話が出てこないので1990年代初頭くらいか。貧しく旧弊なロシアの寝台車で延々と旅をするというロードムービーは珍しくはあるが、ストーリーに面白さはない。冬の北極圏の映像も魅力を感じない。映画の中で重要な役割を果たす岩絵もよく分からなかった。1万年前の岩絵が残っているとしたらあんな吹きさらしの海岸ではなく洞窟の中とかだと思うのだが。主人公の女性と、男性の知人の女性(おそらく母親)が赤毛という設定なのが面白く、映画に多少の陰影を加えている。ロードムービーに駄作なしというが、時には例外があることを学んだ。2021年の作品なので、今回のロシアによるウクライナへの侵略は踏まえていないが、ロシアとフィンランドの歴史的背景をロシア側から踏まえた映画だと思う。
ハイスタ・ヴィッ〇ウ‼
恋人とともにロシア北部にあるペトログリフ(岩面彫刻)を観に行く約束をしていたがドタキャンされ・・・寝台列車で同室となった粗野な男との道中を描いた作品。
まず、恋人にドタキャンされ一人旅になるのは分かるけど、何故見知らぬ他人と同室になるの・・・?ロシア寝台列車のシステムがよくわからなかったけど、部屋を予約という形ではなく、列車の等級(?)だけ事前に選んで、あとはその車内で空いている部屋に勝手に入る、という形式なのかな?
これって結構危険な気がしますけどね…ワタクシだったら、例えメチャクチャ良い人だったとしても見知らぬ人と同室とか絶対ムリですわ…。
早速話が脱線しましたが、やっかいな男性と一緒になってしまい幸先の不安なラウラの旅が始まっていく。。。
本作は、フィンランド出身監督の長編2作目だそうですね。1作目のオリマキもそうでしたが、これといった急展開等々なくとも、不思議と画面に引き込むような描き方が素敵です。
リョーハは一体何者なのか…!?不器用で孤独な青年というのは間違いないんだろうけど。その発言からも、あまり他人を信用できず…だからこそ、孤独な老婆や事有り気なラウラには親近感を覚え、不器用な優しさを見せるのだろうか。
ラウラもラウラで、中盤以降はともかく序盤から割と風変わりなリョーハの相手はしてあげているし…やはり海外の人は比較的人見知りとかないのかな?それゆえに辛い問題も起こったりしましたが。。
登場人物達、特にリョーハの背景を詳しく知りたかったし、何事ももっと直接的に投げかけて欲しいと思う場面は数あれど、それぞれの心情を推し量りながら観るのが正解の作品でしょうか。岩面彫刻とかも結局どうだったんだろう。。
それでも、ラストの展開は超秀逸。こう持って行きますかぁ~。ここだけでも☆+0.5ですね。
両者とも燻る暮らしの中で、不器用なりに人を想う優しさに溢れた良作だった。
寝台列車って良いですよねぇ~。子供の頃一度北斗星に乗ったのが最初で最後ですが、良き思い出です。北斗星なき今、寝台列車って出雲サンライズくらいだとか(?)いつか是非乗りたいですね。
そしてどうでも良いが、劇中、フィンランド語で「バイバイ」は「ヘイヘイ」と言うと字幕には書いてましたが…どう聞いても「バ○」にしか聞こえなかったのですが…。
一癖二癖ある、恋愛映画
ペトログリフ
【車窓を眺めながら走る寝台列車にスマホは似合わない!】
長いトンネルを抜けると....
全編通して画面は暗い。車窓から見える景色も灰色、寒々しい光景が広がるだけで旅の高揚感は皆無。
考古学専攻の学生ラウラはパートナーと行くはずだった旅行をキャンセルされ、一人で旅をすることとなる。しかし、相部屋となったのは粗野なロシア人の酔っぱらい男だった。図々しく無神経なロシア人リョーハはインテリのラウラには耐えがたく、車掌に訴えるが聞き入れてもらえない。
結局観念してやむを得ず部屋に戻るが、粗野で最悪だと思っていたリョーハはラウラがいない間、部屋を子連れの女性に使わせたりと意外に素朴で優しい一面を垣間見せる。彼を避けていたラウラも次第に打ち解けてゆく。
しかし、彼女が打ち解けて住所を教えてというとそんな交流は無意味だと突っぱねる。避けていれば強引に誘ってきながらこっちが距離を詰めようとすると逃げようとする。とても難しい相手だ。
リョーハを優しく抱きしめるラウラだったが、それを境に彼は彼女の前から姿を消してしまう。目的地に着いたラウラはペトログラムには冬場はいけないと聞かされる。リョーハが働くと言っていた採石場に伝言を残すとホテルにやってきた彼は彼女をペトログラムへと連れていってくれた。
目的を達成した二人は吹雪の中子供のように雪遊びをして無邪気にたわむれる。別れ際、リョーハが渡したラウラの似顔絵の裏には愛してるを意味するフィンランド語のくたばれの文字が。
ロシアとフィンランドは国境が長距離にわたって接する隣国同士。かつてロシアから独立しながらもソ連時代に何度も侵略を受けたフィンランド。
国の位置は変えることができない。難しい隣国とうまくやってゆくためにフィンランドはロシアを刺激しないよう中立的立場をとってきた。
しかし、今回のウクライナ侵攻でいままで避けてきたNATO入りを果たし、ウクライナへの軍事支援も行った。もはや中立的立場を維持できないほどまでにロシアの暴走は目に余るものがある。
現実世界での両国は長いトンネルを抜けるのはまだまだ先のようだ。
本作の作り手は相部屋となってしまったロシア人とフィンランド人の二人が最初は互いを忌み嫌いながらも最後には互いを受け入れてゆく様を描き、未来に希望を見いだそうとしている。
今まで暗かった画面が、似顔絵を受け取ったラウラが笑顔となる瞬間、初めて暖かい陽射しがさし、明るい画面となる。まるで長いトンネルを抜けたかのように。
とにかく寒すぎて…
80年代から90年代の『地球の歩き方』ロシア編があれば見てみたい。
ムルマンスクとペトログリフ(顔面彫刻😆とわざと間違えて自分ツッコミしたくなりますが、正しくは岩面彫刻です)、載ってるかな?
行った❗️見た❗️投稿した❗️
という方、いらっしゃいませんか?
あの頃、写真家藤原新也さんの『インド放浪』という本が一部の若者を突き動かして、文字通りインド放浪旅を敢行した友達がいました。インダス川に浮かぶ死体を日常の風景として普通に見てきた、とか言ってたような…⁈
現地情報について何も知らないので、この頃と比べてロシアの寝台列車の衛生環境がどれだけ向上したのかもまったく無知ですが、今の日本の暮らしに慣れてしまった私などには絶対無理です、こんな旅は❗️
使い捨てカイロだって、あのような環境の場所で捨てるのは憚られるし、雪はいくらでもあるけれど、飲み水や温水シャワーも期待できないし…すっかり軟弱に堕してます😫
ラストでホッコリしても、こんなひとり旅をしてみたい、なんて思う人は果たしているのだろうか。
この映画は、良い作品であるとか心に響く、などと感じる前に、あまりに寒そうで凍えてしまう体感的な印象のほうが強烈なので、〝寒さに震えた〟という感想しか残ってないというのが正直なところです🥶
凍てつく世界を舞台に、よくある話の体裁を借りながら、分断を融和に変えたいと願う北の国の映画人の想いを感じる。それと、映画は世界共通の言葉で有ることをそれとなく挿入していることも…
①粗筋は古典的とも云える一つ部屋に乗り合わせた二人が初めは反目しながら最後は心が通い会う(好きになる)というお話ながら、その二人が片方がフィンランド人、片方がロシア人というのがミソ。
②映画のなかで少なくとも二回、「歴史(過去)を知ることは現在を理解することになる」という台詞が繰り返される。
隣国であるこの両国の長い歴史を知らなくては本当にこの映画を理解出来ないのかも知れない。
しかし、現在のヨーロッパに限らず世界を覆っている分断の動きをを融和の流れに、新たな冷戦の雪融けを願う映画人の想いが込められたこの映画が、(決して抜きん出た傑作とは思わない)カンヌ国際映画祭のグランプリに選ばれた一つの理由ではないかと思う。
③見たかった岩絵の場所にたどり着いた後、ラウラが連れていってくれたリョーハと荒涼とした銀世界の中でふざけあううちに、打ち捨てられた船の甲板に座った時に、突然リョーハがラウラに「タイタニック観た?」と訊ね、「観たわ。私たちも死ぬのかしら?」「ローズは生き残ったよ」「ローズも晩年には亡くなったわ」という会話を交わしたのを観て、
「そこ」から追放された人間のしあわせとは。
2021年。ユホ・クオスマネン監督。フィンランドからモスクワに留学している女子学生は大学教授の同性パートナーと暮らしている。一緒に最北端の考古学的な岩絵を見に行くはずだったが、教授の都合が悪くなり、一人で行くことに。ところが、寝台列車の同室になったのは粗野でマナーのかけらもないロシア人の若い男。酒を飲んで絡んでくることに辟易していたが、どうやら自身は教授に体よく追い払われたことに気づき始めると、男の優しさと向き合うようになって、、、という話。
同性志向から異性志向へと性志向を変えていく家父長的な物語と受け取られかねない危険を冒してまで描いているのは、教授とその仲間たちがつくっている高尚で鼻につく知的共同体への憧れ。冒頭の主人公と教授のベッドでの振る舞いを見れば、そもそも主人公が同性志向だったのかどうかさえ怪しいが、知的共同体への憧れは見まがいようがない。「そこ」から見放されたと気づいたときにはじめて、主人公はロシア人の男と本当に向き合うからだ。途中で同行することになるフィンランドの旅人が英語をしゃべってギターを奏でる文化的な男であり、その男に騙されることもまた、男二人と女一人の三角関係的図式(これまた家父長的な女の交換図式)を描きつつ、その本質は文化的なものからの追放だ。「そこ」から追放された若い主人公の絶望と希望の話。
旅行前の室内からカットすると列車の客室内シーンとなり、すでにロシア人の男は座っていて出会いのシーンがないとか、列車が一晩止まる時に男が知り合いの家に誘ってそこで一晩過ごすのだが、結局その高齢女性の素性は明かされなかったりとか、手順を追って丁寧に話を作り上げていくわけではない。そもそも男の素性が謎だったり、いつ主人公に思いを寄せ始めたのか、それはなぜなのかもわからない。(中盤まではてっきり自殺願望がある男だと思っていたのだが)。なんとも不親切だというほかないが、それでも伝わるものがある。それがすごい。
寝台列車の旅 in ロシア
愛よりも確かなもの
誰かに憧れてその人の一部になりたくて
自分が好きではないものも好きになろうとし
いつしか自分を見失って満たされない気持ちだけが残る
寝台車に偶然乗り合わせた粗野な男リョーハは不機嫌そうな彼女が見たいという何だか知らないし何故それを見たいんだかもサッパリ分からないけどナンタラカンタラ(最後までペトログリフを覚えられないリョーハ)ってものを見たいという
彼女にはそれを見ることがとても大切なことだということは分かる
だから手伝ってあげたい
頑なだった彼女の心が少しずつリョーハに打ち解けていく
自分を見つめることが出来た彼女にはもうペトログリフなんて必要ない
内なる自分に乾杯
不思議で不自然なものを楽しめるか否か
列車で長旅ができる幸せ
大きな大きなリュックを担いでヨーロッパをぐるぐると長旅する若い人達を昔よく見た。でかいリュックー!と感動した私はおじさんが持つような手持ちの旅行鞄(父親に貰った)でぐるぐる旅をしていた。今でも大きなリュックで旅する若い人はまだたくさん居るんだろうか?
列車のコンパートメントでは色んな人と知り合える。おしゃべりが弾むこともあれば何も話さないこともある。この映画のようにむかついて嫌で面白くて笑っちゃうような出会いはなかったけれど、昔の貧乏旅行を思い出した。
食堂車に二人揃って行くとき、二人ともちゃんとした服を着て彼女はメイクしていた。そういうところに素敵さを感じる。何を頼んでも「ありません」や車掌の愛想の無さにすごく笑えた。でも本当は一人一人心暖かく親切。東ドイツ(DDR)もそうだった。
音楽の使い方がとても良かった。お涙頂戴でも子どもっぽくもなく、自分探しだとかもなかった。フィンランドは人口が550万人位なのになんでこんなに素敵な映画を作ることができるんだろう?デンマークもスウェーデンも英国もフランスもイタリアもドイツもスペインもギリシャも韓国も日本より人口少ない。若い人を育て支援して才能を潰さす伸ばすことができる所なんだろう、日本と異なって。
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