コンパートメント No.6のレビュー・感想・評価
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不凍港ムルマンスクは露軍最重要軍事拠点
フィンランド人監督ユホ・クオスマネンのインタビュー記事を読むと、本作は単純なレイルロード・ラブコメではなさそうなのである。おそらく、ロシアがウクライナに侵攻し、対露感情が一気に悪化する以前のフィンランドを寓話的に描いた作品なのだろう。第二次大戦時はナチスドイツに味方したフィンランドにとってロシアは因縁の相手国。「また奴らが攻めてくる」そんなフィンランドが過去の歴史において背負うことになったトラウマが、ここもと国内で勢いを増してきたことに対し、監督クオスマネンは大変な危惧を抱いているという。
ムルマンスク行きの列車に乗ったフィンランドからの留学生ラウラは、そこでロシア人肉体労働者リョーハと同室に。恋人のイリーナが2人で行くはずだった旅行をキャンセルしてしまったのだ。無礼千万なリョーハの振る舞が嫌で嫌でたまらなかったラウラだが、ふとしたきっかけでリョーハの優しさに触れ次第に考えを改めていくラウラだった.....「人間同士の触れ合いは、いつも部分的にすぎない」このマリリン・モンローの言葉は、イリーナとの肉体関係の暗喩とも、リョーハ=ロシアとラウラ=フィンランドの関係を暗示しているともいえなくない。
狭いコンパートメントを仕切るミニテーブルは、ロシアとフィンランドが過去何度も一戦を交えてきた国境のメタファーなのだろうか。知らない間にロシア人家族が客室に居座っているとラウラの機嫌が悪くなり、手癖の悪いフィンランド人ギタリストをラウラが客室に連れてくるとリョーハがへそを曲げてふて寝をする。2人の目的地が“ムルマンスク”という点がまた意味深なのである。えっ?ペトログリフを見たかっただけじゃないの?北部地方唯一の不凍港であるムルマンスクは、かつてはソ連軍とフィンランド軍の激戦地でもあり、現在はロシア軍の最重要軍事拠点でもあるのだ。かつて大韓航空機が撃墜された場所もここムルマンスクの地なのである。
イリーナが旅行をキャンセル、ホテルの従業員やタクシードライバーが案内を拒んだ真の理由は、軍事秘密漏洩を防ぐための当局の指示だったと思われる。ムルマンスクで起きた政治家暗殺事件などもリョーハが読み上げる新聞記事として、監督クオスマネンは映画に反映させたらしいのである。古代人が海岸の岩肌に描いたとされるペトログリフを見たがっている理由を聞かれたラウラがこう答えるのである。「過去を知れば現在を理解できるから」と。つまり、ソ連(ロシア)とフィンランドの過去の経緯を知らないと、本作に隠された政治意図も、フィンランドがNATOに加盟したがった理由も理解できませんよ、と言っているのだ。
しかし監督はこうも考えるのである。国籍やジェンダー、職業、体型?など社会的背景の全てが正反対のリョーハとラウラがまるで兄妹のようにお互いを思いやったように、敵対しているロシア人とフィンランド人であってもお互いを理解し合えるのではないか、と。「人はみんな孤独さ」とか「全てが遠く感じるわ」とか人は諦め顔で嘆くけれど、いつしかラウラの中で“ハイスタ・ヴィットゥ(くたばれ)”という言葉の意味が“I love you”に変容したように、両国関係が将来的に改善することを祈りながら。
ラストシーンの笑顔が良かった 70点
基準点 20点満点
1.派手な絵だったか? 18点
(俳優の顔、絵)
2.ドラマ性はあるか?12点
(主人公の成長、過去、悲しみなど)
3.アトラクションの連続だったか?6点
(見ててドキドキしたか?)
4.芸術性はあったか?14点
(ドラマとは違う)
5.その他 20点
(期待度は?)
寝台列車での話なので絵はずっと地味ですが、主人公と男性が絵を観に行くシーンはとても寒そうでガチでその現場に行っているので顔が真っ赤になっていて、俳優は体張るなぁと思った。
ドラマ性はあります。最初の冒頭で彼女と主人公は一緒に旅行するつもりが彼女が仕事の都合で行けず、そこから物語が進む。もう少し主人公の生い立ち、男性のあの態度、いろいろ深く知りたいなぁと思った。
場面はやっと後半になり列車から街中、絵を見に行くシーンになりますがずっとあの雰囲気。いやあれがまたいいのか。ドラマと違うのはちゃんとその場で行って撮影していること。これは1番デカい。編集やCGでもやれるがやはり現場に行くことがより面白い映画になるかもしれない。
期待は予想通り。ヒューマンドラマでした。この年代の背景を知ればより映画が楽しめると思う。1990年代の話で、当時はタイタニック🚢、売春、ビデオカメラが流行っていたそうです。なので主人公と男性の会話で出る理由です。
ラストシーンの男性から手紙を貰い、手紙をみた主人公の笑顔が忘れられない。とても良かった。
人生って上手くいかないし思い通りにならないけど、良い人間関係がいれば良いよねっていうメッセージなのかな?
国境線
ロシアとフィンランドは国境を隔てているという事実 これを知らないと今作は全く以て心に届かない、邦画によくあるソフトストーリー的プロットに落とし込む帰着に思考を選択してしまいがちになろう 偶々寝台列車の4人個室の相席になったフィンランド人とロシア人の孤独感と共感と、そして距離を縮める淡い思慕 勿論、それだけでも旅情の中での心の変遷を感じる列車ロードムービーとして成立するのだろうが、前述にある、政治的問題が今作のベース足らしめていることを忘れてはいけないと思う・・・ ということを観賞後に考察サイトを調べて自分も初めて知ったことを恥を承知で記載する
"ペトログラフ"云々は、単なる社会階級のメタファーに過ぎない 上流階級に憧れと、しがみつく疲労感 方や一発逆転を夢見ながら今日の生活も儘ならぬ身上 二人とも理想と現実のアンバランスに苛まれる現実なのであり、そんな二人を乗せた列車が国境と並行しながら極北へ進んでいく地理的描写が見事である 個々人は国が違えど同じ悩みや境遇の中で、シンパシーを感じ合える しかしこれが国家同士となると・・・・ 途端に敵同士に変換と相成る この不条理を作劇として落とし込んだ制作陣の意図をきちんとカンヌは評価した結果であろう、グランプリ受賞である 『ハイスタ・ヴィットゥ』のフリオチは、政治を薄めるための制作陣の中和剤といったところだろう 今作プロット、多分世界中の隣り合わせの国の映画制作として活用できる内容なのではないのだろうか、そしてそれが毎年可能な限り作り続けることが、世界の緊張を解きほぐすことが可能な装置の一つだと期待するのは、自分の単なる幻想なのだろうか・・・?
寝台列車
1990年代のモスクワが舞台。
意志薄弱なフィンランド人留学生ラウラと粗悪でぶっきらぼうなロシア人リョーハの同室になった寝台列車の珍道中。
本当に同室の方がだらしなく、アル中っぽかったら、そりゃ部屋も交換したくなるよね。
匂い、音、盗難など長い旅には切実な問題。
特殊な空間により、不器用な二人は人との付き合いを次第に学んでいく。
リョーハの強引な不思議な力により、古代のペテグリフに着いた二人は楽しそうだった。
正に恋人風。
最後に似顔絵つきクソッタレと書かれた手紙を読んだ時の表情は微笑ましかった。会った当初に愛してるは何て言うのと聞かれ、クソッタレと教えたのだ。
二人は短期間で人との付き合いを成し遂げた。そして、心と身体という自分をさらけ出した瞬間であった。+ラブストーリー。
ロシア🇷🇺に、向かう列車は、暗い
ハラハラも、ドキドキも、湧いてこない。
暗く、重い、映画です
何も、事件も、起きなければと、思いながら、
見続ける
コンパートメント(閉ざされた空間のようだ)
無条件で、押し込められた感が半端ない
列車は、真冬のロシア🇷🇺の最北の街を目指す
それだけで、つらくなる
ハートフルな、話なんだけど
やっぱし、ホッコリはしなかった。
懐かしい風景そして時代!
ロシアの長距離列車の旅、幾度もしました。ムルマンスクまでは行ったことはありませんが、雰囲気も匂いも、ロシアの普通の人たちの温かさもそのまま伝わる映画でした。
予告見なくても、90年代初頭だってわかる仕掛けがあちこちに。
多分、今も変わらず運行され、飾らない素朴な人たちが暮らしているはずです。またロシアに行きたくなりました。この路線もいつか乗ってみたいです。
だんだん楽しくなってくる
初対面が最悪のリョーハ。粗野で無教養で酔っぱらい。こんなのと狭い客室で顔付き合わせた旅なんて!
それが、根は正直で悪気がないと分かってくる。と、顔がちゃんと映るんです。えっ、意外にハンサム?
あー、これ、カラシニコフの主役だった俳優さん。あちらはナイーブで真面目な役だったのに。
彼の背景は匂わせるだけで語られない。立ち寄るお婆さんはどういう関係なのか?彼が「友達ごっこ」とキレるのはなぜなのか。
でも、そんなことはどうでもいい。生まれた友情に、初めはずっとしかめ面だったラウラがいい笑顔でラスト。
それにしても、カセットのウォークマン、やや大きいビデオカメラ、携帯のない時代、ボロい建物、ガタガタしたドア等、いつの時代?80年代かな?と思ってたら、ラスト近くで「タイタニック見た?」って、90年代後半なの?と驚いた。
愛の告白がクソッタレ
モスクワから、北へ向かって一直線。世界最北の不凍港ムルマンスクまでの2,000kmの列車移動でございます。多分、今、賑わってると思うんですよね、ここ。ロシアへの制裁破りの諸物資輸送をするとしたら、ここが拠点だろうと。
男女の出逢いの物語です。Boy Meets Girlです。ちょっと歳は行ってます。いい大人の出会い系。ドキドキ要素ゼロ。萌え要素ゼロ。と言うか、北極圏の気温のごとく、むしろ (-)です。氷点下です。でも、なんかジワるロードムービー。
無骨なリョーハ。単純です。分かりやすい性格してます。ストレートです。女慣れしてません。口下手です。ついでに字も下手です。
第一印象はクソッタレ。徐々に惹かれていく女ごころが、やっぱり良く分からないんですが、ワタクシ的には。リョーハ画伯の、気持ちのこもった似顔絵に書き添えられた、愛の告白の言葉に。
そうだよ、最初、私は彼をクソッタレだと思ったんだよね。
なんで今は、チョメチョメなんだろ。可笑しい。笑っちゃうよ。
って言うオチにジワるという、四か国合作映画。いやー、なんか、このジワジワ来る感じが良いです。
好き。
結構。
結局、寝てしまった
頑張って最後の近くまで起きてたつもりだけど、二人が海岸に行ったあたりで寝てしまったのか、いつのまにか、リョーハがいなくなってた。
あんなに簡単にくっつくかな〜ってのが率直な感想。
この映画がそんなに評価される理由がよくわかりません。
あと、主人公の年齢も。
吹雪のち晴れ。
若い頃にバックパッカーだった私としては懐かしい感じ。真冬のロシアは経験ないですが、旧東ヨーロッパを旅したことを思い出しました。映画と同じように、狭いコンパートメントで色々な人たちと出会い、別れる。言葉も通じないのに食べ物やお酒をくれたり、住所を交換したり。今はすっかり便利な世の中になってしまいましたが、あんな不便な旅をまたしてみたいなぁ。そしてロシアにも。早く戦争が終わりますように!
期待していたほどの内容ではなかった・・
主人公の女子学生が寝台列車の同室となったロシア人青年への印象が徐々に変わっていく。粗野で最悪な態度の青年と、過ごす時間が長くなる中でだんだん距離が近くなる。
最後は女性の旅の目的がぼやけて青年との交流が旅の成果となる。
自分としては、男性の行動と女性の心の移り変わりはそれほどわかりやすくはなかった。
期待値が高かったためか全体的に冗長と感じた。女性が旅の目的としていたペトログリフも、見落としかもしれないが画面に映っていたのかどうかわからなかった。
異国の寝台車の車内や風景は見応えがあった。
携帯電話はなく、テープによるビデオカメラ、ウォークマンなどが利用さ...
携帯電話はなく、テープによるビデオカメラ、ウォークマンなどが利用されるところから1990年代と思しき冬のロシア・モスクワ。
フィンランドから考古学を勉強するためにやって来た留学生ラウラ(セイディ・ハーラ)は、大学の文学専攻の女性教授のもとに身を寄せている。
周囲からは「下宿人」と揶揄される、いわゆる同性の恋人的存在だ。
そんなラウラは恋人の教授と一緒にロシア最北端・世界最北端のムルマンスクにあるペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く予定だったが、恋人の教授が急に多忙を言い出し、ひとりで行くこととなった。
盛大な送別会のあとにラウラが乗り込んだ寝台車のコンパートメント6号の相席となったのは粗野なロシア人の青年鉱夫リョーハ(ユーリ・ボルソフ)。
リョーハの粗野で粗暴で失礼な態度に腹を立てうんざりするラウラは、途中駅で恋人の教授に電話をするが素っ気ない。
途中乗り合わせたフィンランド人男性は、人当たりは良かったが、思い出を記録したビデオカメラを盗まれてしまう。
挙句、ムルマンスクに到着したが、冬はペトログリフへの道路は封鎖されているという・・・
といった物語で、気の合わない男女が乗り合わせて・・・というのは『或る夜の出来事』から『恋人までの距離(ディスタンス)』までおなじみの趣向で、あらすじに書いたムルマンスクに到着するまでの寝台車でのエピソードや描写にはそれほど面白いところがありません。
(といって、まるっきりツマラナイわけではないですが)
俄然面白くなるのは、ムルマンスクに着いてから。
ペトログリフを観に行けなくなったラウラは、ホテルから紹介された別の観光ルートに出たりするのだが、思い断ち難く、結果、ムルマンスクの鉱山で働く喧嘩相手のリョーハを頼ることに。
そこからペトログリフを目指す行程が難儀で困難。
結果ふたりは、いわゆる「ハラハラドキドキを共にした男女は恋人になる」(by『スピード』)の格言どおり、豪雪の中のペトログリフ行の中で急接近することになります。
いやぁ、この終盤がいいんですよ。
なにがいいって、ペトログリフをカメラで写さない。
ペトログリフはあくまでマクガフィン。
こいつが素晴らしかろうが、素晴らしくなかろうが、そんなことはどうでもよいのよ。
重要なのは、雪投げ、浜に打ち上げられた廃船、そういう小道具。
生死は賭けないけれど、妙にハラハラしたりドキドキする、そういう類のもの。
最後の最後は、前半、ラウラがリョーハに教えた「くそったれ」というフィンランド語が「月がきれいですね(by夏目漱石)」となって現れるあたり、とっても微笑ましい。
なお、ラウラは30代後半の留学生という設定らしい。
どうりで、ちょっと薹が立っていると思いました。
北へと向かう列車に乗り海岸の岩に掘られた昔の絵を見に行く女性。乗り合わせた男との道行を描いたロードムービーです。
列車の旅・北国・出会い。…うん。
何かが起こりそうな予感。そんな雰囲気を
感じたような気がしたので鑑賞することに。
ですが…
正直なところ、
良く分からない内に終わってしまった感じです(…泣)。
最後まで理解できなかったのが
「行動の動機付け」 …う~ん
一緒に旅するハズだった恋人(?)に振られた女性。
自分一人でも行く と乗った寝台列車の部屋には
危なそうな雰囲気の漂う若い男。
タバコぷかぷか。酒をぐびぐび。
つまみが口からポロポロと落ちようがお構いなし。
(これと同室?)
速攻で車掌室に向かう主人公。「他の個室にして!」
しかし、他は全て埋まっていると言われ
仕方なく部屋に戻る。
男はロシア人らしい。エストニア人を嘲り
ロシアに無いものはない …と豪語するこの男
この列車の行き先の港で働いているようだ。
女性がフィンランド人と知り、話しかけてくる。
挨拶の言葉を聞かれたり、
「これを何という?」と尋ねてきたり。
何をしに行くのかを問われ、女性が答える。
「ペトログリフを見に行く」 と。
列車の行き先は「ムルマンスク」。
そこの海岸の岩に先史時代の「絵」が掘られていることで
有名らしい。ペトログリフとは、その画のことだ。
ただ、そこはロシアの中でも北に位置する極寒の地。
思い立ったら見に行ける そんな場所ではなさそうだ。
列車内や停車する駅の構内での場面が続く。
切符の無い旅の男を個室に入れてあげたところ
途中の駅でその男は立ち去っていくのだが
その男にビデオカメラを盗まれてしまっていた(らしい)
モスクワでの想い出が記録された大事なカメラを
盗まれて落ち込んでしまう彼女なのだが
ロシア人はそんな彼女を殊更に慰めるでもない…(んー)
いよいよムルマンスクに到着。
さあペトログリフへ …の流れかと思えば
「この季節(冬?)は通行止めだ」 …えっ?
行く手段が無いと言う …えっ?
となっているところに再びロシア男登場。
「車を手配した。一緒に行くぞ」 …えっ?
「連中は仕事をしない奴らだ」 …(そういう問題なのか?)
というわけで、 行けることになり …えぇぇ
目指すはブリザード吹き荒ぶ凍てつく海岸。
さあ、そこで見たものは…
とまあ、こんな感じなのですが、
何といいますか。達成感とか満足感とか。
そういったものが余り感じられない作品
との印象のまま終わりました。 ふぇぇ
ドラマと捉えるのではなく、
列車を舞台にしたロードムービーだった
…そう考えればいいのでしょうか。 はて
ロシア北端の海は寒そうでした。
◇あれこれ
作品の背景等も良く分からないまま鑑賞し
すっきりしないまま終わってしまったのが悔しくて
この作品のコトを少しだけ調べてみました。
■ペテログリフとは?
岩石や洞窟内部に掘られた文字や絵の彫刻こと。
ロシアに限らず、アメリカのユタ州やハワイなど
世界の各地にあるみたいです。海岸限定ではなさそう。
日本にもあるらしいです。
■ムルマンスクって?
フィンランドの北部と国境を接するロシアの州。
アイスランドよりも高い緯度にあります。寒いハズ。
港町です。接する海は北極海…ではなかった。
北極海はさらに一段北です。 凍えます。ぶるぶる。
■モスクワからムルマンスク
鉄道で1日半がかり。1,488㎞あるとのこと。
日本国内の場合、青森市から山口市まで
車での走行距離(日本海ルート)が 1,476㎞。
本州の端から端までの距離。
うーん。遠いです…。
座りっぱなしだと尻が痛くなりそう…。
◇最後に(…というか 願い)
2021年の制作で2023年の公開の作品。
制作が4か国の合作。
フィンランド・ロシア・エストニア・ドイツ。
…うーん。
政治と芸術は分けて考えれば良いのでしょうけど…。
「T34」を心から楽しめる時代に戻りますように。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
恋人のドタキャンのせい一人でペトログリフ(岩面彫刻)を見に旅に出るロードムービーだが、汚れと暖房で曇った車窓から見える低層の灯りのように、作品全体がほんのりと懐かしい。
主人公ラウラの不機嫌な顔が、旅をすすめるにつれ和らいでいき、同室の粗暴な男との関係も変化してゆく。途中の珍入者や車掌なども含め、人は見かけではわからないという示唆も興味深い。
ロシアの古びた列車、サービスの行き届かないお国柄、極寒の地とは反対の意外と人懐こく優しい民族性など、さりげない表現で伝わる演出の上手さ。吹雪の中での雪合戦は撮影も困難を極めただろうが、クライマックスに相応しい熱を感じる。
オープニングでのパーティーシーンではラウラと恋人の関係性を映し出すが、この列車の旅は、高等教育を受けた知的階級への憧れを「愛」と錯覚していたラウラがそれに気づく旅でもあったのだ。
ウォッカ、ビデオカメラ、似顔絵、行き先、「愛してる」、など、たくさんのヒントをちりばめながら自然にそれらがつながってゆくストーリーに唸った。
この監督の前作「オリ・マキの人生で最も幸せな日」もそうだつたが、フィンランドの音楽事情はこういう感じなのか?それともカウリスマキを意識しているのか。これもまた楽しい。
いちばん映画らしい映画ですかね
まったく同じようなコンパートメントの列車に乗ってロシア語に囲まれてウズベキスタンを旅したことがあるので没入感が半端なかった。時代はひと昔前の話ですね。
最近では見知らぬ男女がいっしょのコンパートメントに、なんてあるのかな。ともかく旧時代は映画的出会いに溢れてる。それだけでなく、タバコ、ビデオカメラ、カセットテープ、公衆電話、人をくっつけて離すガジェットが激減した現代のつまらなさ、、というか過去への郷愁に溢れている。
映画館が同時進行の旅行体験みたくなるのもやっぱりいい。遠のく町の灯りの侘しさみたいなものがぐっとくる。ただ出会って別れる、だいたい2時間の映画でいちばんいい設定ですね。
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