「映画は新しい風景を見せる」コンパートメント No.6 kawamoさんの映画レビュー(感想・評価)
映画は新しい風景を見せる
自宅で観た。現実が素材であるのに、この角度から、視線から、人生を生きた事はなかった。その体験を鋭く体験させる映画であり、初めてであるにも関わらずある種の懐かしさへと連れて行かれる。
人生の全ての瞬間が初めての体験であるのと同じく、良い映画は凝縮したそれを与える。
ある女性の変化を描く。この女性は当初二人で向かうはずだった旅行に、一人で行く事になる。二人で行く事になったなら、女性は幸せであった。パートナーである(はずの)相手は女性大学教授であり、彼女の研究のためかつて訪れた北極海に面した僻地にある古代文字の遺跡に、共に訪れる予定が、叶わなくなった。主人公の女性は、一人でも行くと答える。教授宅で開かれたあるパーティでその事が客人たちの前で紹介され、若き彼女の学究旅行への意志を皆が拍手で称える一コマもある。これを前段として、以降は「旅」の時間となる。
彼女がその華やかさも含めて憧れ慕う「恋人」の足跡を辿るような思いで、孤独な旅を始めた彼女だが、長旅の列車で相席となった相手の事も含めて「思うように行かない」。
その相席となった相手と、不思議な縁となるというのが物語の大筋なのであるが、本作のドラマ性は彼女の中で起きる大きな変化だ。それは不意に神が与えたかのような奇跡の形をしている。
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