「旅に出たくなりました」コンパートメント No.6 humさんの映画レビュー(感想・評価)
旅に出たくなりました
狭いコンパートメント
初対面で2人きり
横柄で粗暴なふるまい
揃ってしまったアンラッキー
それはひくなぁ…
目的地に辿り着くまで我慢しなきゃいけないなんて
楽しみにしていた旅の始まりに
大はずれくじをひいたどんより感も当然だ
ただでさえ、恋人のドタキャンからの続き
萎える、萎える
さあどうなる
そんな旅の始まりにふさわしい極寒の地が車窓に映る。
仄暗い景色の厳しい冷たさは
長く住むほどに人の辛抱強さを養うのだろうか。
駅に居た数人の年配者の防寒具に北風が刺し
見え隠れする横顔の線が何かを物語る。
そんなところも
昔住んだところの空気感にそっくりで
カチカチ凍るまつ毛の変な重さと
感覚がなくなる手足の先の他人ぽさを
今この時のように蘇らせながら
私は小窓を一緒に覗く。
朴訥で無愛想な車掌には
我が国の接客とちがうそれが
悪気ないそこでのスタンダードだったりすること。
求めすぎるとかすり傷などいくらでもつくこと。
慣れてくればそれもありかもで
なぜなら
それはその人の全てじゃないこともわかるから。
むしろ今、要らないやりすぎにでくわすときの
不自然さがちらつきもした。
それもその人の全てじゃないんだけれど。
食卓を花で飾ることを大切にするすてきな文化
耐熱ガラスに透ける茶葉の安らぎ
カーテン生地にとりこまれていくタバコの煙
人柄がみえる親切さの加減
水まわりの事情の不確かさと同じくらいに起きる絵に描いたような裏切り
そんなときにこそだから静かに伝わるやさしさなど。
最初からどう転がるかわからない不安や疑惑で
ずっと落ちつかず
いや大丈夫かな?とほっとしたりの繰り返しを
彼女目線で味わう。
やがて、だんだんと変わる印象と
お互いに行き来しだした
信頼や友情やほのかな想いも。
鋭い上目づかいに隠れていた
彼の不器用な人懐っこさややさしさ
少年のような純朴さをみつけながら
解されていく彼女の細やかな目の演技が逸品だ。
そしてふたりだけにわかるメッセージ。
変わっていく心の在り方からじんわりとした温かさが
伝わってくる心地よさに浸ったあとは
目的までの過程にも味わいがつまるそんな1人旅が
できた彼女の経験をうらやましくも思う。
何気なく観たが
感じることで変わり得る人生に似ていた
小さなコンパートメント。
なんてさりげなく心をゆする作品なんだ。
humさんのように、色んな空気感や旅の喜びを感じとることができたならば、この作品の見え方もかなり違ってくるんだろうなぁと羨望しながらレビューを拝見致しました。こういった作品出会うと、どんな些細な経験でも尊いものだと、つくづく─
humさん
コメントありがとうございました!
これ、彼女の最終目的地は、一見すると拍子抜けするくらいに何も無いんですよね。見る人が、よくよく見ると価値が分かると。コレに物語りを象徴させてるって言うのもジワリました!
humさん、共感とコメントありがとうございます。
傷心を癒すために北へ旅立つ。
…というシチュエーションは好きなのですが ・∇・この作
品の行き先の映像が予想を遥かに超えて「極寒」で、見ている
だけで凍りつきそうになったのを思い出しました。・_・;
もう一度観れば、また違った感想になるのかも。
そんな風にも思います。