「【”見知らぬ若き男女が、極北に向かう寝台列車の個室で出逢い・・。”粗野だが実直なロシア男性とフィンランド女性が、最悪の出会いから徐々に惹かれ会う過程を抑制したトーンで描いた作品。】」コンパートメント No.6 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”見知らぬ若き男女が、極北に向かう寝台列車の個室で出逢い・・。”粗野だが実直なロシア男性とフィンランド女性が、最悪の出会いから徐々に惹かれ会う過程を抑制したトーンで描いた作品。】
- モスクワで学ぶフィンランド人留学生ラウラは同性の恋人に旅行をドタキャンされる。だが、彼女は一人、極北の地へ向かう。
寝台列車で同室になったのは、粗野だが実直な男でロシア人のリョーハだった。-
◆感想
・今作品は抑制したトーンで描いた一時の異人種の男女の恋愛映画であり、人間の人種を越えた善性を描いた作品でもある。
・リョーハが最初は酔っ払いのどうしようもない男として描かれるが、徐々に彼が粗にして野だが、漢気の有る実直な男で有る事が、物語が進むに連れ、明らかになる描き方も良いのである。
・ラウラが同性の恋人に電話をしても、ツレナイ返事。カメラも一見人が良さそうに見えた親切にしてあげた男に盗まれ、更に、目的のヒエログリフを見に行こうとしても、ホテルの受付嬢から”今は、雪の為、道が通れません・・。”と言われてしまい・・。
ラウラが頼ったのは、列車で知り合った、リョーハ。
彼は仕事の後にも関わらず、夜中彼女のホテルを訪ね、友人の車で、ロングドライブして、彼女に海岸沿いの吹雪の中、ヒエログリフを見させてあげるのである。
そして、帰りも友人がラウラをホテルまで送ってくれる。
普通は、寝台列車で知り合い、恋に近い思いを抱いたとしても、あそこまではやらないのではないか。だが、リョーハはラウラのために、漁船を操業する人たちに、根強く交渉をするのである。
ー 私事で恐縮であるが、寝台列車は学生時代に海外旅行の際にお金がある時に時折乗った。
一番長かったのは、中国だった。昆明から桂林、重慶まで寝台列車に乗った。
今作で描かれているように、各駅での停車時間が長く、故に3日程は中国人と顔を合わせているのである。
最初は、中国の人も”リーベンレン・・。”等と様子を伺っているが、3日も乗っていると話が弾む。生ぬるい中国製ビールなどを御馳走すると、酔った年配のお爺さんたちは”マオ・ツートン、プーハオ!”等と大声で言い、こちらがハラハラしたものである。
何が言いたいかというと、寝台列車で数日一緒に過ごすと、本作のラウラとリョーハ程ではないが、人種は違えど、仲良くなれるという事が言いたいのである。-
・ラウラが自分の為に尽力してくれる”わざわざ。来たんだぞ!”と言って漁師たちを説得するリョーハの姿を見て、自分を見つめ直す姿も良い。
ー ラウラがリョーハを見る眼差しは、最初の最悪の出会いの時とは大違いだ。
列車の食堂車(食堂車って、もうないねえ、日本では。)で、二人で乾杯した時に、ラウラがリョーハの寝顔を書いた絵を渡し、”ソックリだ!”と言いながら、自分は上手く書けなかったリョーハが、別れの際に、友人に渡したラウラの全然似ていない似顔絵と、裏に書いてあったフィンランド語のシーンは良かったなあ。-
<今作品は孤独な心を持つ見知らぬ異人種の男女が、一時の恋に落ちる姿、人間の善性を抑制したトーンで描いた、ロシアの風景は大変寒そうであるが、心温まる作品である。
尚、今作はロシアがウクライナに進攻する前に制作された作品だそうである。
きっと、ロシアの人達だって、一人一人は良い人なんだと信じたいモノである。>
世界共通語の英語が通じないときはNOBUさんは中国ではどうなさっていたんですか?いくらか中国語会話は勉強なさって行かれたんですか?
中国語は確か六音節。Ri の発音にも六種類。抑揚でぜんぜん意味が変わってしまいますからね!
僕は香港から来た広東語しか出来ないお爺さんと飛行機で隣合わせとなってしまい、漢字の筆談でお爺さんの入国査証を代筆してあげたことはあります。(無理矢理やらされた)。
でも漢字最強です。なんせ世界の五人に一人は漢字圏の人間ですからね。
NOBUさん、コメント有り難うございます。
良さそうと思って鑑賞した作品が楽しめなかった場合ほど
「何か見落としがあったかも」という目で他の方のレビューを
拝見するようにしています。
それで気付くこともあれば、無いこともありますが… ・_・。
人によって色々な見方があるのが面白い所です。
それはそうと「食堂車」。
無いですねぇ。開業当時の東北新幹線には「ビュッフェ」が
ありましたけどこれも今は昔のお話。懐かしいです。
こんばんは。最近本作のように観てる最中はともすれば退屈と思えながらも後からじわじわくる作品にはまってます。
やはり良い作品は初見でぱっと見わからないんですよね。いいものほど何度も咀嚼しないと味がわからないのでしょう。「ケイコ目を澄ませて」や「小さな麦の花」みたいに。