劇場公開日 2023年2月10日

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コンパートメント No.6のレビュー・感想・評価

全80件中、1~20件目を表示

4.0狭い寝台列車の濃密なドラマ

2023年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

恋人にドタキャンをくらい、一人で極北にペトログリフ(岩面彫刻)を見に行くことになる主人公が、寝台列車で乗り合わせたのは粗野なロシア人青年。普段、彼女の周囲にいるインテリ知識層とは全く異なる労働者階級の彼とは当然折り合いが悪いのだけれど、なぜか惹かれていく。寝台列車の狭い部屋を共有する2人が親密になっていく過程を、その場に居合わせたかのような手持ちカメラがみずみずしく捉えている。
荒涼として、寒々しく雪に覆われた北の大地は世界の果てのように感じさせる。ここではだれでもいい、人のぬくもりが欲しくなる。2人の間に生まれたのは、恋だったのか。それとも一時のぬくもりを求めただけなのか。フィンランド映画には独特の乾いたユーモアと人間を見つめる目線がある。取るに足らない人間たちの滑稽さを愛らしさが詰まった秀作。

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杉本穂高

4.590年代後半のロシアに灯ったほのかな希望。

2023年2月28日
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村山章

4.5この愛おしさ、微笑ましさ。旅の歓びが詰まった秀作

2023年1月31日
PCから投稿

何気なく観たこの映画に思い切り心を奪われた。フィンランド人留学生の女性ラウラは列車に乗りロシアの最北端駅まで向かう。目的は現地にあるヒエログラフを見ること。ただしその列車の旅はひたすら長いもので、しかも彼女が寝泊りする6番個室は、気が滅入るほど無作法なロシア人リョーハと相部屋だ。彼はこれから炭鉱で働くために現地を目指すのだという。2人はまるで水と油であり、旅行好きな人にとってはこういう旅行者と隣り合わせることで全て台無しになるのも「あるある」と頷けることかも。でも本当に面白いことに、共に過ごす時間の長さ、超えていく距離が2人の不理解のギャップを埋め、本作は移りゆく感情をとても繊細かつ微笑ましく紡いでいく。完璧には通じない会話。80年代特有のカセット。ハンディカム。不便な車内、無愛想な車掌。その全てが愛おしく見えてくる不思議。観終えると誰もが同じ思いを抱くはず。「ああ、旅に出たくなった」と。

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牛津厚信

3.5Romance When You Least Expect It

2023年1月10日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

Intercontinental train travel is where one feels insignificance as the size of the world moves by. Laura is a Finn on a train on her way to study some old calligraphy in Northwest Russia. She ends up roomed with an obnoxiously drunk man, but with no other place to sleep, must bite the bullet. The film wants to have us defy expectations, in an era it sees bent on hard-coding our behavior.

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Dan Knighton

4.5今だからこそ観る価値がある作品

2024年12月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

単純

CSで録画視聴。
物凄く良かった。
ロードムービーだが、フィンランド〜ロシア
までの旅。一人の女性の列車旅。隣はロシアの男性。最初はぎくしゃくしていたが、最後はお互いが理解し合う。
ロードムービーの良さが物凄く出ていた。
この作品は2021年制作。丁度ウクライナ紛争前。だからこそこの作品を観る価値があった。

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ナベウーロンティー

4.0遺跡への旅路

2024年12月2日
PCから投稿

Kanozero Petroglyphsはロシアにある遺跡だそうだ。岩石に動物の絵や文字が刻まれているが、意味はまだ解明されていない。フィンランドの女学生が列車に乗ってその遺跡を見に行く。その道中劇。

カンヌのグランプリ(二席)になりアカデミーの国際長編映画賞にもノミネートされている。が、個人的には当初の印象はあまりよくなかった。

主人公は女性だが寝台列車で見ず知らずの青年と相部屋になる。青年は狭いコンパートメントでタバコをふかし酒を飲んで酔っぱらっている。ロシアだから野蛮なのだ──と察しはするが、わたしたち日本人には考えられない状況だ。

旅は道連れ世は情け──を言いたいのはわかるにしても国内の列車事情に慣れた日本人からみるとありえない。モスクワからムルマンスクまで、たんに遺跡を見に行くだけなのに冒険しなきゃならない未成熟なインフラ。それが気にかかって感情移入できなかった。

が、見てから時が経ち、不意にこの映画を思い出すことがあった。見てすぐの印象は良くなかったが、思い返すとあれはいい映画だった──と考えを改めた。
山田洋次の映画で家族(1970)というのがあって怒りの葡萄みたいな話だが長崎から北海道の中標津町まで約2,500キロの列車旅をする。
グーグルを見たらモスクワからムルマンスクまでの距離は約1,900キロ。メルカトルだと北極圏界隈が大きく見えるので掴めなかったが、だいたい長崎から函館へ行くようなもの──と考えると、映画の旅程が把捉できる。高速鉄道はなく寝台列車なので30時間以上かかる。

遠路に加え、主人公の女学生ローラ(Seidi Haarla)はハリウッドタイプの白人女性ではなく、北欧美女でもない。あかぎれのあるざんばら髪のごく普通の女性で、映画は終始、雪と寒さに覆われている。北極圏の冬は8ヶ月つづくそうだ。
がさつな相客と暗く冷たい鈍色の世界に閉口したこと、またハリウッドのもてなしのいい映画を見慣れているゆえの拒否反応があったことは認める。

ローラは道連れになったリョーハ(Yura Borisov)が船乗りに頼み込んでくれたおかげでペトログリフ(紋様が刻まれた石版)がある島へ辿り着くのだが、映画の描き方では、そこには何にもない。ただ雪と岩肌と荒れた海があるだけ。だが目的は果たした。猛吹雪のなかでローラとリョーハは子供のようにじゃれあって親睦するがやがて別れる。凡そ世の映画で男女におこることが、ふたりには一切おこらない。

しかし映画にはペーソスがあった。愛情ではなく友情でもなく同情というか思い遣る気持ちがふたりにはあった。うまく説明はできないが哀しくてやるせないペーソスがあった。それを、見てからしばらく経って思い出したのだった。

「何かを見つけに旅に出る」という命題があったとして映画「コンパートメント No.6」はそれを敷衍して説明している。ローラは自分が見たいものが遺跡にあるような気がしてKanozero Petroglyphsを見に行く。結果的にローラは旅でなしえた体験に対して最後に朗笑する。
トランヴェール(新幹線のメッシュポケットに備え付けのJRサービス誌)風に言うならそれが旅というもの、かもしれない。

フィンランドは約1,340キロにわたってロシアと国境を接している。
この映画の公開(2021)後、2022年2月24日ロシアがウクライナに侵攻したので今は事情が違うことになっているのではなかろうか。その意味でもすでに古き良きノスタルジックな映画だと思う。

imdb7.2、RottenTomatoes93%と83%。

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津次郎

4.5映画は新しい風景を見せる

2024年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

自宅で観た。現実が素材であるのに、この角度から、視線から、人生を生きた事はなかった。その体験を鋭く体験させる映画であり、初めてであるにも関わらずある種の懐かしさへと連れて行かれる。
人生の全ての瞬間が初めての体験であるのと同じく、良い映画は凝縮したそれを与える。

ある女性の変化を描く。この女性は当初二人で向かうはずだった旅行に、一人で行く事になる。二人で行く事になったなら、女性は幸せであった。パートナーである(はずの)相手は女性大学教授であり、彼女の研究のためかつて訪れた北極海に面した僻地にある古代文字の遺跡に、共に訪れる予定が、叶わなくなった。主人公の女性は、一人でも行くと答える。教授宅で開かれたあるパーティでその事が客人たちの前で紹介され、若き彼女の学究旅行への意志を皆が拍手で称える一コマもある。これを前段として、以降は「旅」の時間となる。
彼女がその華やかさも含めて憧れ慕う「恋人」の足跡を辿るような思いで、孤独な旅を始めた彼女だが、長旅の列車で相席となった相手の事も含めて「思うように行かない」。
その相席となった相手と、不思議な縁となるというのが物語の大筋なのであるが、本作のドラマ性は彼女の中で起きる大きな変化だ。それは不意に神が与えたかのような奇跡の形をしている。

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kawamo

4.0恋愛手前のむず痒くて楽しい時間

2024年9月25日
iPhoneアプリから投稿

旅行中に出会った第一印象が最悪のガサツな男と、目的地までのゆったりとした時間で恋愛の手前の距離感で寄り添う話。
話が進むにつれてくっつくのか〜?!という微妙な関係をむず痒く思ってしまう。だがそれが楽しくてにやにやする。曖昧な関係や相手への愛情が確立されるまでのモラトリアムにもどかしく思う、以外と純愛系のラブロマンス。

フィンランドやロシアといった場所の映画特有の何が起こるわけでもなく、くすんだ映像が続くけど暗くなくて暖かい、という雰囲気がかなり好み。もう一回くらい見たいな。

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ヤマキ

4.0電車旅がしたくなった

2024年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

予告編を見て気になっていた映画を見てまいりました。
予告での主人公2人の表情がなんとなく気になっていた
女性の嫌そうな顔と、男性の悪そうな無邪気な顔。
それと流れていた音楽が良い。
主人公の二人の事はもちろん知らず、制作国はロシアとヨーロッパの合作だったらしい。
これは見に行くしかないと思い、初日に見に行った。

見ての感想は、主人公の男はめっちゃいい奴だった。
女性はおばちゃんかと思ったら女学生だった。
描かれていた時代も今ではなく、ハンディカムとウォークマンを使っていた時代(1990~2000年代?)。
映画の中の音楽も良かったし、めっちゃ異国感を感じた。
良い雰囲気の映画でした。

最初の印象が最悪な男女が最後は結びつくという話に『バルカン超特急』を思い出した
私が学生の時に大好きだった映画『めぐり逢えたら』の中で出てきた映画だ。
かなり古い映画(ヒッチコック)なので見た事はないが、出会いが最悪な男女が最後に結ばれるというストーリーというと『バルカン超特急』を思い出してしまう。

それと、私の過去の列車移動での出来事を思い出した。
15年以上前に、八戸から札幌へ電車で移動する事があった。(当時の私は仙台市に住んでいた)
八戸で仕事があり、次の日なぜか札幌の北海道支店で会議があって、三沢空港から千歳に飛ぶかと思ったらよい時間がなく電車を選択したのだ。
当時は新幹線が通ってないので特急。(確かスーパー白鳥、北斗)
青森駅の付く直前で斜め前の座席に財布があるのに気付いた。
さっきまでサラリーマンのオッサンが乗っていた。
少し離れた席の高校生らしき3人組がいて、チラチラ座席を見ている。
すると車掌が歩いてきたので呼び止め財布がある旨を伝えた。
車掌と二人で中を見てみると10万くらいは現金が入っていたと思う。
学生たちに財布を取られる事もなく、良い事をしたという思いで少し心地よい気分になっていた。

その後も電車に乗り続け青函トンネルを抜け、五稜郭駅で少しの停車時間があった。
当時の私は喫煙者だったので、すかさず降りた駅の喫煙所に向かった。
すると私と同じような喫煙者達が数名同じようにタバコを吸いに来ていた。
何とはなしに、喫煙者には車内で吸えない時間が長いのは辛いですねーという話になり少しの雑談が始まった。
聞くと行先はみんな札幌、若い男性は札幌在住。おばちゃんは青森の人だった。
五稜郭駅前には何かあるのかを聞くと何もないとの事。
2~3本吸って座席に戻った。
見知らぬ人との会話が楽しかった。

ノートPCを出して車内で仕事をしようと思ったが、電車が妙に揺れる。
後で調べたところ、この辺の電車はディーゼル車(パンタグラフは無い)なので揺れるらしい。。
酔ってしまうので仕事は止めた。
その後にトイレに行くと五稜郭駅で一緒にタバコを吸った若者と会った。
彼の会社は出張時に指定席には乗れないので自由席に乗っているとの事で(指定席料金が自腹になる)、私が指定席だと知るとやたら羨ましがられた。

話はだいぶそれたが、電車旅がしたくなった。
なかなか昔の思い出話のような出来事が起こる事はないだろう。。
仕事でならいろいろと電車には乗った事はあるが、プライベートでの電車の思い出はほとんど無い。
そんな事を考えさせる映画だった。
最近見る映画は邦画が多かったので、良い洋画が見れて満足。

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はりー・ばーんず

3.0世界最北の温み

2024年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

 1990年代。フィンランドからモスクワの大学に留学しているラウラ。交際しているイリーナと、ムルマンスクの岩面彫刻を見に行く予定だったが、イリーナが行けずにラウラは一人寝台列車に。しかしリョーハというロシアの青年と、6号客室で相部屋に。粗野な彼にうんざりするも、客室の変更はできなかった。
 うわっ、こんな奴と何日も一緒なんて。男の自分でもやだな、まして女だったら。とみんな思いますが、粗野だけど少年のようなリョーハに、だんだん親しみを覚えるのが良いです。さらに面倒見がとてもいいときています。ラウラは、いかにもフィンランドのじぇごくさい(田舎くさい)顔つきでも、徐々にかわいく見えてきます。見かけで人を判断してはいけないな。
 ムルマンスクの駅は、世界最北だそうです。
 ウクライナ侵攻前の作品。再びこんな作品がつくられるのを願います。

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sironabe

4.5純粋な

2024年6月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

人間の本質の良いところで引かれ合う姿に感動しました。

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YOTSUBA

4.0まさかの

2024年5月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

見逃してたが評判は聞いていたので再映にて。
冒頭からのあまりの不愉快さに、ここから良い話になんてなり得るんだろうか…とは思ったものの、お婆ちゃんちのエピソードでほだされる。しかしその時点では「粗野に見えた奴は実は良い奴で…」話のバリエーションかと思った。
その後多少のツイストはあるものの観客が「このまま終わるのかな」と思ったところで大展開。そして納得の絶妙妙な着地。まさかの甘酸っぱく切ない結末に驚いた。
主演二人の、感情が伝わってくる繊細な演技にも脱帽…

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ぱんちょ

4.0どんでん返し

2024年5月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

楽しい

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映画イノッチ

5.0旅は道連れ世は情け

2024年5月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ヘイ。ヘイヘイ。
Haista vittu ハイスタ・ヴィットゥ!

=いつも むっつり顔だ
=すぐシワだらけになるぞ
=ありがとう余計なお世話よ

旅は道連れ世は情けだ。
僕も旅先で、思いもかけずに出会った人たちのことを思い出す。
汽車で、飛行機で、そして時には船で。たまたま言葉を交わしたあの人の事や、この人の事・・
珠玉の出会いがそこにあり、一生忘れられないあの人たちの言葉が、旅の最大の土産になる。

映画は、フィンランドからの留学生ラウラが、モスクワからの夜行列車の乗客となり、辺鄙な町、最北の地ムルマンスクまで「岩絵」=ペトログリフを見にいく話だ。

旅の恥は掻き捨てとか、
袖振り合うも多生の縁とか、
人生を旅に喩えることわざはたくさんある。

鉱山で働くロシア人リョーハ。
ぶきっちょで純朴で優しいのだ。
見ているこちらを度々クスクス笑わせてくれる彼。
やっとこさ打ち解けたと思った矢先、コンパートメントの6号室が、せっかくの二人状態から(お邪魔虫の登場で) 三人になってしまったあのシチュエーションの、あの可笑しみと言ったらない。

同郷同士の「フィンランド語」と「英語」で仲良く話し始めるラウラとギター弾きのお邪魔虫野郎。これは辛いものなのだ。リョーハは英語はおろか、字を書くことさえこんなに苦手だから。
僕は太平洋航路で、僕を挟んだ両隣の席の男性二人に、僕の頭上を越えてのこのお喋りをやられてしまって、もう居たたまれずに とうとう席を移動した事があったし、
ヨーロッパの夜行列車では、往路は「それ」で往生したので、帰り便は話しかけられないようにshutoutオーラを出していた。
何時間も向かい合わせで、あるいは一晩かけて、小さな車内で、笑ったり感心したり、相手の生活や自分の故郷のエピソードを喋り続けるなんて
このリスニング持続の緊張と、英会話の気詰まり感ったらひとたまりもない。
それがコンパートメントなのだ。
そもそも かつての「馬車」の構造が列車の客室の造作にそのままひきづがれている、― それが「旅ガチャ」のコンパートメントなのだ。

うざい酔っぱらいの男リョーハと、構って欲しくないラウラ。可笑しくて可哀想で、共感しきりだ。

しかし、そんな僕にも「コンパートメントで良かった」と思えた旅があった ―
学生寮時代、真夜中に散歩に出て、何だかもう限界を感じて、世界の果まで逃げたくなって、下駄履きのままで、ふと乗ってしまった長崎までのブルートレイン。
こんなにも寂しい人や傷だらけのお客を一室に乗せて、二等寝台は西国までひた走るものだ。
長崎まで逃げる人あり、逃げてきたその長崎に辛酸の過去をおして戻る人あり。
みかんを食べながらみんなで励まし合った。
手を振って別れた。

・ ・

夜汽車は旅情だ。
いつの間にか停まっている駅で、ふと目が覚めて寝台から身を乗りだし、カーテンを少し開けて外を見てみる。
鉄軌は静まり、青白い蛍光灯のホームが見える。
何処を走ってきたのか、何処に停まっているのか。わからないけれど「人はみんな孤独だ」と、旅の途中、無人駅は教えてくれるだろう。

孤独を確かめるために、そして物思いにふけるために、人は夜汽車に乗るのかもしれない。

モスクワで聞いた本の言葉。
マリリン・モンローの言葉。
おばあさんの言葉。
ラウラに必要だった言葉が、彼女の乗り換え駅ごとの“時刻表"になる。
そして、この旅の物語の“羅針盤"になっている。

その後二人はどうなったかって?
それは観てのお楽しみ。
一昔前のラブ・ストーリーが、まるで凍土の中から現れたような、胸が痛くなる恋物語だった。

鉄道映画の逸品。

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きりん

3.5脚本:20/25 極限までシンプル。それがいい 映像:21/25 ...

2024年2月11日
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鑑賞方法:映画館

脚本:20/25 極限までシンプル。それがいい
映像:21/25 美しい
音響:20/25 よく合っている
俳優:10/25 普通

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RATM

3.5切なく優しい旅映画。人々の表情を楽しむ。

2024年2月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

寝られる

吹雪いているモスクワ、寒々しい景色が続くがそこに映る人々はどこか暖かくて表情が豊か。
派手さはないが光と影のコントラストは美しい。
どうしようもない現状を憂いながら旅を始め、良いこと、悪いことに感情を揺れ動かしながらも続ける旅を見守っているのが次第に心地良くなってくる。

"この映画をみて何を得られるか"と言われると分からないが、自分を憂いたり何かに縋ったりするそれこそが人生で旅なんだよとほんの少し肯定してくれている気がした。
あまりしつこい映画が苦手な人向きかもしれない。

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ezio

2.0二人の気持ちが読み取れず

2024年1月28日
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鑑賞方法:DVD/BD

高評価から前知識ゼロで鑑賞。出会いからの心境の移り変わりが理解できず、ラストまで置いてきぼり感。電子機器類に懐かしいくらい。

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げっちゃん

4.0旅に出たくなりました

2024年1月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

狭いコンパートメント
初対面で2人きり
横柄で粗暴なふるまい

揃ってしまったアンラッキー
それはひくなぁ…
目的地に辿り着くまで我慢しなきゃいけないなんて
楽しみにしていた旅の始まりに
大はずれくじをひいたどんより感も当然だ
ただでさえ、恋人のドタキャンからの続き
萎える、萎える
さあどうなる

そんな旅の始まりにふさわしい極寒の地が車窓に映る。
仄暗い景色の厳しい冷たさは
長く住むほどに人の辛抱強さを養うのだろうか。
駅に居た数人の年配者の防寒具に北風が刺し
見え隠れする横顔の線が何かを物語る。
そんなところも
昔住んだところの空気感にそっくりで
カチカチ凍るまつ毛の変な重さと
感覚がなくなる手足の先の他人ぽさを
今この時のように蘇らせながら
私は小窓を一緒に覗く。

朴訥で無愛想な車掌には
我が国の接客とちがうそれが
悪気ないそこでのスタンダードだったりすること。
求めすぎるとかすり傷などいくらでもつくこと。
慣れてくればそれもありかもで
なぜなら
それはその人の全てじゃないこともわかるから。
むしろ今、要らないやりすぎにでくわすときの
不自然さがちらつきもした。
それもその人の全てじゃないんだけれど。

食卓を花で飾ることを大切にするすてきな文化
耐熱ガラスに透ける茶葉の安らぎ
カーテン生地にとりこまれていくタバコの煙
人柄がみえる親切さの加減
水まわりの事情の不確かさと同じくらいに起きる絵に描いたような裏切り
そんなときにこそだから静かに伝わるやさしさなど。

最初からどう転がるかわからない不安や疑惑で
ずっと落ちつかず
いや大丈夫かな?とほっとしたりの繰り返しを
彼女目線で味わう。

やがて、だんだんと変わる印象と
お互いに行き来しだした
信頼や友情やほのかな想いも。

鋭い上目づかいに隠れていた
彼の不器用な人懐っこさややさしさ
少年のような純朴さをみつけながら
解されていく彼女の細やかな目の演技が逸品だ。

そしてふたりだけにわかるメッセージ。

変わっていく心の在り方からじんわりとした温かさが
伝わってくる心地よさに浸ったあとは
目的までの過程にも味わいがつまるそんな1人旅が
できた彼女の経験をうらやましくも思う。

何気なく観たが
感じることで変わり得る人生に似ていた
小さなコンパートメント。

なんてさりげなく心をゆする作品なんだ。

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hum

5.0タイトルなし

2024年1月21日
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鑑賞方法:VOD

大した事件は起こらないのに、アングル(列車の窓越し)、映像から見える息遣い、微妙な関係性の流れ等、魅せられる。
アイスランドでめちゃ寒かったこと、空気感を思い出す。
何と言っても彼女がいい。

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えみり

4.0最悪だと思っていた相手が天使だった

2023年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

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幸せ

最悪だと思っていた相手が天使だった話。
結局、ラウラが困った時にはリョーハが必ず助けてくれる。
吹雪の中じゃれ合う2人のショットに晴れやかな気持ちになるが、現代だとこういう出会いはもう生まれないのではと思ってしまう。

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ハモニカ犬