劇場公開日 2022年1月21日

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グレート・インディアン・キッチンのレビュー・感想・評価

全25件中、21~25件目を表示

5.0こういう映画こそちゃんと評価されるべき。

2022年1月22日
PCから投稿

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(1/23 誤字脱字を修正)
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今年21本目(合計294本目/今月21本目)。

最初こそインドのおいしい食事がたくさん出るなぁ…という感じですが、流れがどんどん変わっていきます。(納得して)結婚したというのに、なぜか女性に対して冷たくとるところか、まぁ…言葉を選ぶの難しいですね…「性の対象にしか見ていない」夫婦像(この場合、「観ていない」のは当然論として夫になる)という、いわゆる「ミソジニー/合理的理由がない女性嫌悪」という論点があることに気が付きます。

一方でそういう文化がインドをはじめとしたいくつかの国に「今でも」残っているのは、国の古い制度(インドだと、カースト制度が相当)だったり、宗教だったり(ISISなどは「女性に権利はやらない」と公言していた)するわけです。とはいえ、「全体を見れば」インドは確かに発展途上国とはいえ、それでも「男女同権思想に関して極端に変な状況ではなかろう」と思ってみるとこの現実が待っているわけです。インドの場合、カースト制であったり、宗教(土着宗教の中には、「女性が触ることで儀式が無駄になる」という考えがあるところもある模様。これ前提のセリフも登場する)であったりします。

逆に、「こんな家庭やってられないしさっさと離婚する」か「離婚はしないがさっさと出ていく」だけなら、日本ではDV保護センター等もありだいぶ進んでいますが、国が違います。出ること自体は自由でも、そのあとどうするのか(行政に駆け込んで何とかなるのか)などは国によっても異なります。日本はそういう制度が分厚いという点に過ぎません。いくら「さっさと出て行っても」行政が何ら「メニュー」(=換言すれば、虐げられた女性を保護する工程ないし案など)を持っていなければどうしようもないわけです。

 ※ もっとも、北朝鮮やISIS(便宜上、どちらも国扱い)は「男女同権を望むべくもない」状況ですが、そこそこのIT新興国とされるインドの実態がこうだったというのは(ある程度着色はされているのでしょうが)驚きです。比較的「人権に関する考え方も、先進国ほどではないとしても、極端に支離滅裂とも想定できない」インドがそうであるなら、他の国のそれ(女性嫌悪問題)はどうなってるのか…というのも気になるところです。

結局、この「つまらない」料理(しかも、ハーブティがいいとかブラックコーヒーがいいとか、そこにミルクを入れたら喧嘩を始めるという、実に「沸点が低い」夫が相手)を作るのにウンザリして、彼女は別の道を選び、ある施設に行くのですが…。おっと、そこまで書き始めるとアウトですね(ネタバレ回避)。

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そうして、「名前ですら呼ばれない」彼女らが、手に職をつけ働いて自立することになるのです。「名前ですら呼ばれない」彼女らが主人公として今後は主役として働いて行ける社会、です。
こう考えると、「キッチン・家庭=(古い思想に囚われている人たちしかいない)牢獄」というとらえ方も可能かな、とは思います(おそらくそれが正解)。
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それは男性の私でも支持する考えです。憲法や民法は国によって違いますが、「女性は男性の付属物」などという、時代錯誤はなはだしい考えに付き合うことはできないし、それにつきあうだけ「時間を無駄にするから」です。換言すれば「女性が進出することで自分が食事ができなくなって困る」のなら、「(汚い表現で申し訳ないですが)「お前らで作って食べてろ」「コンビニ弁当をどうぞ」ということにしかなりません。

 なお、いわゆる「インド映画」のお約束という「ダンスシーン」がこの映画にあるかどうかと言われれば、「あるかないか」だと「あります」(ラストの3分ほど)。ただ、このインド映画の部分は「女性の男性からの解放を示唆する表現」とも取ることが可能で、「純粋な意味での、インド映画にお約束のダンスシーンはあるか?」だと、YesともNoとも言いにくいかなというところです。

 日本では憲法上、どのような思想をもとうと自由です(思想良心の自由)。しかしその思想が発露され、他と衝突した場合は公共の福祉が考慮されます。特に14条で定める男女平等等の考え方は戦後何十年もたった現在、「そんなの知らない」というのはおよそ通じない言い訳であり、本映画を通じて、「フェミニスト思想とは何か」「ミソジニーとは何か」「男女が真の意味で快適に暮らせるにはどのようなことに注意すべきか」といった議論になれば、と思っています。

 採点にあたっては下記が気になったものの、大きな傷なしとして5.0にしました。

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(減点0.1) この映画はその性質上、「食べ物を粗末にする表現」が結構多いです。そしてこの映画はインド映画。インド映画といえばあの左下のバンバン出てくる謎の警告表示もあります。
しかし、「食べ物を粗末にする表現」では一切でないし「妊娠」や「性的対象」といった発言、さらに「飲酒」という発言/表現でも出ない(アルコールを飲んでいると思われるシーンはあります)のですが、なぜか開始、30分ごろ、家にバイクで乗り付けて自宅に来た人が出てくるシーンで、はいそこで左下を見ると…。

 趣旨的に「バイクは安全に乗りましょう(=無免許運転はやめましょう)」という趣旨ではないかと思うのですが、そんなに高速度で出していませんし…。この「バイクの話」はもう1回出てくるのですが、そこでは警告なし。何が基準なのか謎です(最初のバイクのシーンって、片手運転とか怪しいことしてましたっけ?)。

 というように、「やや」混乱してしまう警告挿入(映画の趣旨的に、「食べ物を粗末にするのはやめましょう」で出るなら理解できるが、まさかそこ??と思ってしまう)は混乱させるかなぁ…(ただ、この映画をどう解しても、「バイクの適正な乗り方」というように見ろというのは無理なので、「大人の事情」と解するしかないと思います)。
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yukispica

3.5【インドに蔓延る(我が国はどうか!)、男尊女卑思想をリアルに描いた映画。まるで、ドキュメンタリー作品のようである。インドの男性諸君(及び日本人男性諸君)、もっと女性を敬えよ!女性は菩薩なんだぞ!!】

2022年1月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

幸せ

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NOBU

4.0かつて日本にもあった家庭の風景を見ているよう

2022年1月21日
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あさ

4.5語られずにいる物語はまだどこにでもある

2022年1月21日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

トマト、紫キャベツ、バナナ、オクラ、ミルクなど色とりどりの食材はとても美しい。毎日毎日三食作ってさらに夫の為のお弁当。美味しい食事につきものなのは残飯の片付けと皿と鍋の洗い物とガスコンロ周りの掃除。その洗い物作業のポイントのシンクの排水管から汚水が漏れている。何度も夫に修理の手配を依頼してもやってくれない。夫は家でヨガしかやってない。濡れた残飯と汚水は匂う、臭い!何度も何度も彼女は手を洗う。でも匂いは消えない。洗濯機も炊飯器もあるけど使われることを嫌がる舅は日がな食べてるか新聞読んでる。広い邸宅、豊かな家なのにメイド居ない。二階から一階の各部屋、階段、トイレの掃除、壁に掛かっている写真の額一つ一つを拭く。夜は夜で夫中心。月に7日間だけは個室に閉じ込められて家事はしなくて済むけれど、夫や舅の目に触れてはならない。そこではゆっくりスマホでSNSを見ることができる!自分は一体なんなんだ?と考えることができる。

最後のダンスシーンは晴れ晴れと力強く希望で胸がいっぱいになった。そこで歌われていた躍動することばの数々:勇気、自由、太陽、星々、火、大地、奔流、世界、知恵、力強き女、前に進め。

そして「語られずにいる物語」はインド中の女性の心を掴んだ。以下はパンフレット(6~7ページ)からです:
Amazon Prime もNetflixも配信を拒否し本作を受け入れたのは弱小の配信会社「ニーストリーム」(顧客ターゲットは本作の舞台でもあるケーララ州民と世界に散らばったケーララ系移民)、2021年1月15日。英語字幕付きで宣伝はほぼゼロ。にも関わらず怒涛の反響。本作に衝撃を受けた主に女性の観客が自主的にプロモーションを始めた。本作を勧めるために生まれて初めて映画レビューを執筆した女性も多かったという。あまりのアクセス集中にニーストリームのサーバは数日間ダウン、その後復旧。ここにきてAmazon Primeは考えを改め2ヵ月遅れで配信開始。母語以外の映画を英語字幕で見ることの抵抗も以前ほどなくなったことも影響し、視聴者はマラヤーラム語を母語とするケーララ人以外にも広がった。そうして本作は汎インド映画となった。
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ケーララ州に始まりインド全土に広がりそして世界中の女性の心に届いて欲しい。

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talisman

3.5インドの勉強になる

2021年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

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TK_Film