「かつて日本にもあった家庭の風景を見ているよう」グレート・インディアン・キッチン あささんの映画レビュー(感想・評価)
かつて日本にもあった家庭の風景を見ているよう
タイトルとポスターから幸せな夫婦の生活を描いていると思って鑑賞すると面食います。
女性に対しての差別が凄まじいインドの姿を目にする作品でしょう。
高位カーストの男女がお見合い結婚をし、一息つくまもなく翌日から“家事労働”が始まるところなど「この世界の片隅に」とよく似ています。夫婦の関係性の行く末は全く異なりますが。
※↓以下ネタバレです。未見の人ご注意を!
包丁がリズム良くまな板を叩く音
フライパンにジュワーっと勢いよく跳ねる油
クツクツと鍋が煮る音
彩り良い野菜に、手際良く作られていく美味しそうな料理
見ているだけでスクリーン越しにスパイスの良い香りが漂ってきそうな料理のシーンが沢山映し出されます。
こんなに手の込んだ料理を毎日妻や義母が作り、キッチンを使い終わった後も隅々まで綺麗に片付けて掃除を。広い家の床を拭き掃除して、生ゴミや汚水の処理をして何度も何度も手を洗います。
その間義父や夫はスマホやテレビを見たり、ヨガをしたりと優雅な時間を過ごしています。一番驚いたのは義父です。「ご飯は釜で炊け」「洗濯機を使うと衣類が痛むので手洗いしろ」と。さらに驚くことに、歯ブラシさえも嫁や妻に持って来させます(私なら歯ブラシ投げつけるわ)。ふざけるな!と。極め付けには、食べかすをテーブルに散らかすなど(家のルールらしい。しかも外食時はしっかりマナー守っとるやないかい!)これには呆れ果てて空いた口が塞がりません。
重労働と呼ばれるような家事が終わり、疲れ果ててすぐにでも寝たいのに、寝室に行けば、愛もない前戯もない夫の下手くそなセックスが待っています。もう、人権なんてあったもんじゃないです。こんなの奴隷じゃないか!
結婚=奴隷契約、台所に女性を閉じ込めて自由を奪う。鎖に縛り付けて家から出さない。
でも、これってちょっと昔の日本の風景とも似てとれる。私が子供の頃に見た祖父母もこんな感じで、親戚が集まったら祖母は主人公の女性と同じようだったような。
決定的に違う点は生理中など関係なく生活できていたところだけど。
インドの宗教的背景や家長制度、ミソジミーを思い知った作品だった。
インドってこんな感じなの?と思っていたら、主人公の女性の友達夫婦は夫が週4料理してくれお茶も淹れて持ってきてくれていた。結局のところ家庭によるのかしら?
お茶ぐらい自分で入れなさい。飲んだコップは洗いなさい。たまーに料理を作ったくらいで料理した気にならないで。
もう突っ込みどころが多すぎる本作に登場する男たちに終始イライラしっぱなしでした。
一つ言えることは、日本に生まれただけでも幸せだと。そして、私は息子には料理も掃除も洗濯も一通りできるように家事の教育を頑張らねばと痛感しました。
最後のダンスシーンからは女性の解放と自由を表している。ダンスの先生になれてよかったね!
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