「インドの勉強になる」グレート・インディアン・キッチン TK_Filmさんの映画レビュー(感想・評価)
インドの勉強になる
インドのことをよく知らないので見てみようと思った。インドについて知っていることと言えば、2012年ごろにひどい女性暴行殺害事件があったことだ。それからしばらくインドでは女性のためにマシな社会にしようという人たちが頑張って活動していたような話を聞いてはいたが、結局何が問題なのか、どんな人たちが何をどうやって改善しようとしているのか、などは全然知らない。それで今回、この映画がインドの女性の境遇を描いたものだと知り、見てみようと思った。
映画自体は、インドの新妻=専業主婦の話なので単調なペースで進む。キッチンと題名に入っているくらいだから、キッチンでの作業が中心に描かれる。家の男たちのために毎食、毎日、女たちが繰り返すキッチンでの労働。他の家事や夜の勤めも単調に描かれる。あまりにも静かな繰り返しなので、美味しそうな食事が映っているのに不穏な気分になってくる。こういった繰り返しの中で、日常のふとした出来事から新妻の主人公の気持ちが徐々に変わっていき、女として、自分として正しいことを決断、実行する瞬間が訪れる。
この映画はフィクションだけども、主人公の経験する抑圧や感情は実際に存在するものだろうと思う。というか昭和初期生まれの自分の祖母がこんな感じだったかもしれない、と思ってしまう。「結婚こそが女の幸せ」と言って旦那や長男の尻ぬぐいをし、夜の勤めを誰にも楽しく語ることもなく粛々と遂行し、体を壊しても自分が悪いと思い込み、旦那や息子に先立たれ、今や神か仏かに祈ってばかりの祖母。映画で描かれるほどの抑圧は無かったかもしれないが、女には男ほどの価値が無いという差別の犠牲者なのは同じだと思う。
インドは広いからこの映画を見ただけですべてを学んだとは全く思わないが、勉強になったことは確かだ。個人的なことは政治的なこと。インドであれ日本であれ、一人一人の女の話を丁寧に聞いて、考えていくのが大事だと思う。