「米国の薬物中毒の現状を知らないと、クライシス(危機)は伝わってこない。」クライシス eimeiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5米国の薬物中毒の現状を知らないと、クライシス(危機)は伝わってこない。

2021年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

映画の題名は「クライシス」だが、内容は「オピオイド・クライシス」。
合成鎮痛剤オピオイドのフェンタニルを中心に、薬物密輸の捜査官・息子が薬物中毒死した母親・製薬会社からオピオイド新薬の安全性を依頼された大学教授の3人で物語が進んでいくが、3人の接点はほとんどないままに物語は終わる。
この映画は、米国の薬物中毒の現状を知らないと、クライシス(危機)は伝わってこない。
フェンタニルはモルヒネやヘロインの50倍以上の強さといわれている。
米国の薬物といえば、日本人は、ヘロインやコカイン(大麻は米国では薬物でない)などを思い浮かべる。ヘロインやコカイン中毒者は100万人程度だが、オピオイド関係の中毒者は1100万人程度いるといわれている。オピオイド中毒者は米国の東海岸に多いので、映画の舞台もカナダのモントリオールに近い東海岸のある町になっている。
米国の2020年の薬物中毒死者数は前年より30%増の93,000人以上になった。そのうち約75%がオピオイド関連の死者といわれている。交通事故死者数はもとより、最近ではコロナ死者数より多い。
オピオイド系の鎮痛剤で、古くはマイケルジャクソン、最近ではプリンスが死亡している。
また、米国の大都市の一部を記録した「Streets of Philadelphia, Kensington Ave Story, What happened Today」(ユーチューブ)を見てください。
このような最低限の知識がないと、この映画は全く面白くないでしょう。
また、日本でも、若者の「オーバードーズ(鎮痛剤の大量摂取)」が問題になっている。

eimei