劇場公開日 2022年3月25日

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「日本酒が飲みたくなることだけは間違いない」吟ずる者たち 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5日本酒が飲みたくなることだけは間違いない

2022年4月1日
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鑑賞方法:映画館

 比嘉愛未はスレンダーな長身美人で、腕も脚も長くてスタイルはとてもいい。喜怒哀楽の表情もそれなりに上手だ。しかし何故か、存在感がない。本作品の演技もとてもよかったのだが、周囲を圧倒するような存在感に欠けている。三浦仙三郎を演じた中村俊介の存在感と比べると、かなり見劣りする。それがこの美人女優の主演作品が少ない理由かもしれない。演技は既に十分上手い。しかしこじんまりと纏まりすぎている感がある。もっと振り切った演技が出来ればと思う。

 広島は不思議な土地柄だ。有名人を多く排出する一方で、河合克行、案里夫妻みたいなクズの政治家を当選させる。反核、反戦の歴史がありながら、選挙で勝つのはいつも自民党である。総理大臣の岸田文雄も広島選挙区から選出された。去年の総選挙でも広島県で当選した9人の内、6人は自民党である。残りは公明、維新、立憲がそれぞれひとりずつだ。広島県民は何考えとるん。

 本作品にはいい人しか登場しない。ほのぼのとした作品だ。日本酒造りの歴史と苦労を描くが、必ず報われる苦労である。似たようなドラマに、和久井映見が主演した「夏子の酒」がある。尾瀬あきらの漫画が原作である。幻の酒米である龍錦を使って、幻の美酒「龍錦」を造り上げる感動のドラマだった。このドラマでの共演をきっかけに和久井映見と萩原聖人が結婚したという記憶がある。ポジティブなドラマは演者も盛り上がるのかもしれない。その後離婚したけれども。

 米と水と麹と酵母、それに製造環境の無限の組み合わせから、様々な日本酒が製造される。バリエーションとしては、葡萄の品種が1000種を超えるワインには敵わないが、日本酒はその年に作られた酒がすぐに味わえる。それに当たり年というものがないから、毎年が当たり年である。酒造りは麹と酵母の働きがすべてであり、人間はお膳立てをするだけだ。どんな酒ができるかは神のみぞ知るだ。これはいまでも変わらない。酒造りの面白さであり苦労である。

 映画としては平凡だが、家族の愛に溢れたいい作品である。出来上がった追花心(おいはなこころ)が美味しいかどうかはわからないが、鑑賞後に日本酒が飲みたくなることだけは間違いない。

耶馬英彦