「全体的にリアリティに欠ける」スパイラル ソウ オールリセット 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
全体的にリアリティに欠ける
菅田将暉主演の「キャラクター」で殺人者が告白していたが、人を殺すのは物凄く体力のいることで、ましてや設定通りの殺し方をするとなると、終わったら倒れ込むほど疲れるとのことである。
本作品は「キャラクター」の殺人者よりももっと猟奇的で複雑な仕掛けで、凡そ重機がなければ不可能だろうと思えるような奇抜で無茶な配置を作り上げている。人間がやるとしたらドウェイン・ジョンソンみたいなごつい男が数人がかりでなければ無理だろう。
非現実的な殺し方に最初から鼻白んでしまったが、グロい描写には興味がある。欲を言えばグロいシーンがかなり暗かったので、監察医の明るい手術台に持っていって細部までちゃんと見せてほしかった。監察医がテキパキと手際よく捌いていくほどグロさが増すに違いない。それとも特殊メイクの費用を節約したのだろうか。
ミステリーとしての面白さはないことはない。しかし警察署に送られてきたモノを簡単に素手で扱ったり、指紋も取らなかったりと、21世紀の警察にしては対応が雑だ。Fuck you!の言い合いみたいなどうでもいい場面を長くするくらいなら、テンポを遅くしてもう少しリアルな警察のシーンを映してほしかった。
全体的にリアリティに欠けるから、犯人が割れても驚けなかった。グロいシーンもリアリティがあってこそ気持ち悪かったり怖かったりする訳で、非現実的な方法で殺されても、いや、それは無理でしょうと白けるだけだ。
モブキャラが無駄に多いのもマイナス。誰が誰かわからないシーンがあった。勝新太郎の「座頭市」みたいに必要最低限の登場人物にすることでキャラクターを浮き立たせれば、いくつかのシーンはもっと光ったと思う。