「直接的な後継者ではなく、「ジグソウ」が作り出した概念と戦うことに?!」スパイラル ソウ オールリセット バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
直接的な後継者ではなく、「ジグソウ」が作り出した概念と戦うことに?!
「ソウ」シリーズがついにリブート?!っていうか『ジグソウ:ソウ・レガシー』があったじゃない!って思うかもしれないが、『ジグソウ:ソウ・レガシー』は直接的にジグソウが関わって繋がっていったものとすると、今回は思想・概念的なものとしての側面が強い。
世界観的には、別世界という設定ではなく、過去にジョン・クレイマーこと「ジグソウ」の事件があったことは、世間的に知られていることで、「ソウ」シリーズ、『ジグソウ:ソウ・レガシー 』に共通する部分として、法律では裁けない、法律があるからこそ裁けない者は、ゲームによって裁く、代償を払えば許しを得て、生き延びることもできる。という部分は大まかなルールとして定着している中で、後継者や模倣犯が存在している。
ジグソウの信者が出入りする闇サイトなどによって、拡散され続けた結果の、象徴のようなものと戦うことになるというわけだ。あえてジグソウのパペットに似せてないで、直接的にジグソウも語られないところもそういった意味だろう。
すでに汚職警官が周りを囲んでいる環境下にいる主人公は、モラルが迷子になっている状態で、どう判断するかが、今作の見所でもある。
エリック、ホフマン、ストラム、ハロランなど、警察関係者が関与や巻き込まれるケースも多く、今回も警察内部を描いている。警察という存在を中心に置くことで、市民の味方であるはずの警察が腐敗していて、それを裁いている者を警察が裁く資格があるのか…という、シリーズを通してのテーマが、より強い形で浮き彫りにされていたのではないだろうか。
バディを組んで捜査をしていることや、登場アイテムなどに、1作目のオマージュがあったりして、製作総指揮も務めたクリス・ロックのシリーズに対してのリスペクトも伝わってくる。
「ソウ」シリーズは、奇抜なゲーム性やゴア描写に目がいきがちなのだが、実は社会問題を扱っていることが多くて、今回と同様に、警察や権力の腐敗を描きながら、『ソウ6』では、アメリカの保険制度にもメスを入れてみせた。
「ジグソウ」によって作られ、共感者によって拡散された、概念が、新たな「裁き」のサイクルを生み出し続けているということで「スパイラル」という意味だと思われる。
スタイリッシュ・スリラーを期待していると、少し期待はずれな部分はあるかもしれないし、犯人もすぐわかってしまうことなど、そとつの作品として脇が甘い部分があるのだが、これが新シリーズ1作目とするのであれば、これはこれでアリな導入作品となっている。
だからこそ、作るなら作るで早くやってもらいたいところだし、次をどう展開させていくかにもよってくるが、「ソウ」には、ドラマシリーズ化の企画も進められていて、製作のライオンズゲートは『ジョン・ウィック』や『アメリカンサイコ』といった、映画作品のドラマ化を多く企画しているだけに、Disney+やHBO Maxのような、ドラマとのリンクによるユニバースの拡大も視野に入れている可能性も高く、今後の「ソウ」の行く末がどうなっていくかも興味が絶えないところだ。